
物語を紡ぐという作業を続けていると、時折、ひどく不思議な瞬間に立ち会うことがあります。
それは、自分がペンで生み出したはずのキャラクターたちが、ふわりと私の手元を離れ、自らの意志で呼吸をし、勝手に歩き始める瞬間です。
今回の『なぎのえき』では、その「キャラクターが勝手に動いていく感覚」が、かつてないほど鮮烈でした。
彼女たちが自らの足で歩き出すからこそ、そこには当然、本編のフレームには収まりきらない「空白の時間」が生まれます。
あの時、彼女は何を思い、どんな景色を見つめていたのか。
本編では描かれることのなかった別の視点、あるいは交差することのなかった物語が間違いなくそこにある。
そう確信したことが、今回のスピンオフ連載へと行き着いた理由です。
そして正直に打ち明けてしまうと、
本編そのものもまた、当初の予定を大きく超えるほどの熱量を帯びていきました。彼女たちの感情の奔流に導かれるように物語の密度は増し、
私自身でさえ予想していなかった「驚きの展開」へと辿り着くことになったのです。
今、原稿を前にして、静かで心地よい感慨に包まれています。
なぎとの再会を果たし、栞の不器用で純粋な想いにふれる日々。
彼女たちの人生を私が書き記しているはずだったのに、気がつけば、私自身が彼女たちの熱量に引き上げられ、この物語に「生かされている」。
そんな感覚が、心の奥底で力強く脈打っているのです。
彼女たちが自ら選び取った、愛おしくも激しい軌跡。
そして、その先にある誰も知らない終着駅の風景を。
どうか、皆様にも最後まで一緒に見届けていただけますように。



