前回のつづき 文化財保護委員会はさっそく栢野の大杉がある菅原神社に向かいました。 委員会が大杉を見たところ、そのままにしておくとそのうち大枝が落ちてきて、 観光にきたひとにあたってしまうおそれがあり、大変危険ということで造園業者に 処理を依頼しました。 処分してほしいと頼まれたものも、栢野の大杉はご神木ということで 造園業者が枝の処理に困ってしまいました。 そこで、辻さんが所属しているろくろ技術保存会に相談しました。 ろくろ技術保存会のメンバーが話し合った結果、大枝を預かり木地挽きで 作成できるものをそれぞれがつくることになりました。 辻さんが作成した栢野の大杉の大きな枝からつくった盃 木の一部として生きることを終えた大きな枝は辻さんの木地挽きによって、 新たに命を宿し姿を盃に変え、工藝の館に今もたたずんでいます。
「木地師として、どういったこだわりをもって仕事をされているのですか?」 ありきたりな私からの問いに辻さんはこう答えました。 「木を切り出したということはその木は死んでしまったということ 死んでからもその木を活かさなきゃならんと思ってやっておる」 工藝の館があるのは菅谷(すがたに)という小さな町です。 その近くにある菅原神社の境内に栢野(かやの)の大杉というご神木があります。 栢野の大杉は樹齢2300年とも言われおり、国の天然記念物にも指定されています。 りっぱな幹です。 神々しいです。 写真に収まりきりません。 少し昔の話になりますが、その栢野の大杉の大きな枝が折れているという連絡が 天然記念物等の保護などを行う文化財保護委員会に入りました。 〜つづく〜
辻さんは昭和歌謡曲が好きです。 木地挽きしているときも聴いています。 そのなかでも春日八郎と三橋美智也がお気に入りのようです。 今日も車を運転しながら、歌謡曲を口ずさんでいます。
石川県の地元紙である北陸中日新聞にこのプロジェクトについての記事を 載せていただきました。 けっこう大きく載っています。 記者の石井さんありがとうございました!
石川県加賀市には名湯山中温泉があります。 その温泉街を抜けた静かな山里、菅谷(すがたに)町に工藝の館はあります。 もともと木地師の多い地域であった菅谷町では、町おこしの一環として 地域住民が地場産業である山中漆器を紹介するための施設として 2009年の7月に工藝の館をオープンしました。 こちらは辻新太郎さんが生まれ育った家屋を改装した建物で、 なんと築140年ほどにもなります。 工藝の館にはろくろが2台あり、一般のひとが自由に木地師の ろくろ挽き作業風景を見学できるようになっています。 見学するだけでも面白いですが、工藝の館の一番の特色は、 なんといってもろくろ木地挽き体験をできるところです。 体験では、若手木地師がつきっきりになって、おわんの外側を 削る工程を手を取って指導してくれます。 内側や細かい部分はプロの木地師が行いますので、安心です。 木地挽きが完成したおわんは漆を塗った後、後日自宅まで送ってくれます。 汁椀、サラダボール、丼などさまざまな大きさのものを作成可能で、 3,000〜5,000円でできます。 この写真は私が木地挽き体験をしたときのものです。 実際にはしっかりと職人さんが補助してくれますし、 体験で木地挽きするのは外側のみになります。 左が木地挽き前のもの、右が木地挽きできたおわんです。 山中温泉に旅行に来たときはぜひ、ろくろ木地挽き体験をしてみてください! 工藝の館でのろくろ木地挽き体験の詳細はこちらから http://tabimati.net/midokoro/detail_kanko.php?p=1882