2020年に向け、世界196ヵ国の着物を制作!日本の伝統美で世界をひとつに!

2020年までに、平和を願う心、洗練された伝統技術を込めて「一つの国」を「一枚の着物」に鮮やかに映します。そして、196カ国の着物を着た人々が手をつないで「世界はひとつ」を表現する。 そんな、日本ならではの最高の「おもてなし」で日本中の皆さんと共に、世界中の人々をお迎えすることを目指します!

現在の支援総額

4,054,000

3%

目標金額は120,000,000円

支援者数

329

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2017/04/27に募集を開始し、 329人の支援により 4,054,000円の資金を集め、 2017/07/15に募集を終了しました

2020年に向け、世界196ヵ国の着物を制作!日本の伝統美で世界をひとつに!

現在の支援総額

4,054,000

3%達成

終了

目標金額120,000,000

支援者数329

このプロジェクトは、2017/04/27に募集を開始し、 329人の支援により 4,054,000円の資金を集め、 2017/07/15に募集を終了しました

2020年までに、平和を願う心、洗練された伝統技術を込めて「一つの国」を「一枚の着物」に鮮やかに映します。そして、196カ国の着物を着た人々が手をつないで「世界はひとつ」を表現する。 そんな、日本ならではの最高の「おもてなし」で日本中の皆さんと共に、世界中の人々をお迎えすることを目指します!

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  ■一校一国運動 インドのKIMONOの製作は、東京都中央区立泰明小学校の4年生の児童と、 江戸時代から続く東京友禅の老舗「大羊居」の皆さんとが協働で行いました。 東京都が推奨する「一校一国運動」の参加校である泰明小学校。 学校側が目指す「インドを学ぶ機会」と私たちが目指す「日本の伝統文化を体感する」 という二つの目的が合致して、一年間のプログラムとして公式に行えることは、 イマジン・ワンワールドの活動に新しい価値ある分野を拓くことになりました。   ■子供たちの夢を乗せてまず、最初の授業では、子どもたちに実際に出来上がった6ヶ国のKIMONOを見てもらいました。 どのようにデザインし、どのように創り上げたのか、そして、世界が一つになるとは具体的にどんなことなのか。 授業の最後に、児童全員で手を繋ぎ、世界の平和は隣の人と仲良くなることから始まる、ということを感じてもらいました。 そして、これから始まるインドのKIMONOの製作について大きな期待をもってもらえました。 次の授業からは、それぞれの子どもたちが調べてきたインドのモチーフを班ごとに出し合い、 KIMONOに取り上げたいテーマを探しました。そして、KIMONOの形をした紙にそれぞれのデザインを描いてもらいました。 その素晴らしい才能と熱心な取り組みに、作者はとても胸が熱くなり、 それに応えるべくデザインの原案作りに励みました。 そして、下絵の案を二つ提示して子どもたちとの議論の末に、原案が完成しました。   ■子供たち全員の「更紗」を描く 作者である「大羊居」の若い三人の「先生」は、子どもたち全員の意匠をKIMONOに取り入れることを図り、 「更紗」の文様を子供たちに描いてもらいました。 出来上がりを考えると無謀ともいえる挑戦でしたが、授業を通じて感じた子どもたちへの愛情、 そして未来を担う子どもたちと一緒に製作できる喜びに、常識を越えデザインが進んでいきました。 下絵の上に子どもたちの絵を置きながらレイアウトと格闘することになりましたが、「ありのままの絵」を見事に配置して、 本下絵が完成し披露されました。それを見た子どもたちは、「ここに私の絵がある!」と歓声をあげて喜んでくれました。   ■ それぞれのスペシャリストに伝わった「気持ち」 製作は、下絵、糸目糊置き、手描き友禅、 伏せ、地染め、金彩、刺繍とそれぞれの最高の職人さんたちによって行われましたが、 全ての工程において「子どもたちの為に」という気持ちが仕事にパワーを与え、 想像を越える見事な作品へと仕上がりました。   ■ 作品のデザインと技法 デザインは、インドのモチーフである、インド象、クジャク、タージマハル、蓮などを窓取りのデザインを主軸に構成し、燦燦と輝く太陽を肩に大きく取りました。 そして子どもたちの更紗が適所に配置されて、夢のある面白いデザインが構成されています。 また、色彩も大羊居ならではのメリハリのある彩色で描かれ、金箔や刺繍もふんだんに使用された豪華な作品になっています。 言うまでもなく大羊居の歴史に残る傑作となりました。   ■帯 製作者 西陣 宮岸織物 製作監修 帛撰 技法 西陣本袋織   ■西陣の鬼才 西陣織の中でも独特の意匠で名高い宮岸織物。 他とは違う美意識と視点で主題をとらえ、 天才的な配色で織物に新鮮な息吹を吹き込む織元です。 今回の製作にあたってもその才能を如何なく発揮し、 これまでに数多く取り上げられてきた 「インドの文様」をこれまでにない角度からとらえています。   ■高度な本袋の織技術 インドの帯に使われた技法は「本袋織」。 表地と裏地を同時に織り上げるこの技法は、 織り上るまで織の出来具合を確かめることができないために、 西陣で数件しかない高度なものです。 経糸が二重に張られた機を使い、 緯糸と箔を使って複雑な柄を織り上げることによって薄手で軽くしなやかな質感の織り上がりになっています。   ■豊穣の楽園 今回の帯のテーマは「豊穣の楽園」。 様々なスパイスの原料になる植物をはじめ、多くの穀物が取れるインドは、まさに豊穣の国。 そして、様々な花が咲き、鳥が飛び交う豊かな自然は命の楽園と言えます。 この二つのイメージを鮮やかな黄色の地色をベースにしてエキゾチックで明るい配色で織り上げています。 これまでにない組み合わせで文様を構成し、 南国の花や美しい鳥を大きなデザインでまとめ上げ、振袖に負けない力強さを醸し出しています。 


■テーマはカタールの「昼と夜」 カタール国、通称カタールは、中東・西アジアの国家です。 首都はドーハ、アラビア半島東部のカタール半島のほぼ全域を領土とする半島の国です。カタールが現在の国家として独立したのは1971年と比較的最近ではありますが、この土地にはカタール建国前からの長い歴史があります。 古くから、いろいろな部族が次々とカタールに移住し漁業、真珠採り、貿易を盛んに行ってきました。 今回デザインされた着物の正面にみえるのは、古くからこの地にある砂漠と、近代化と共に立てられた高層ビル群で表現されるカタールの昼の顔です。そして、 後姿に描かれているのはカタールの夜。星空と美しいアラビア海、そして、赤く染められているのが、この国の発展に寄与した石油資源です。 この作品の中で、カタールの「昼と夜」を一つのKIMONOで表現しています。   ■虹染とローケチ染 虹染めという染色方法で大変有名な本郷葵虹先生は、父にあたる初代本郷太田子(たいでんし)に師事し染色一切の技を習得後独立されました。 着物に普通に染料を乗せていくと染料は滲んでいきます。 どこで滲みを止めていくのか。その滲みを使って計算を重ね表現するものが虹染です。 理論上、4色の色でできる虹染めには4×3×2×1=24色、5色の虹染めでは5×4×3×2×1=120色の色彩が浮かび上がることになります。 この作品は本郷先生も 「これまでの俺の全てを費やした」と仰いました。 虹染めと同時にローケチという技法をたくさん使い、 輪郭と輪郭の色が混じって不思議と際が少し見えてくる。 それがローケチ染の持つ面白さです。 ロウは固まりやすいので常に下から火を焚いていないと ロウでは描けません。 工房の中はロウの香りが充満しています。 先生の渾身の技がこのカタールのKIMONOに使われています。   ■カタールの昼夜を表現 最初、この着物のデザインは昼の砂漠と建物しか描かれていませんでした。 しかし、それでは「面白くない」と本郷先生と議論を重ね、 そこから生まれたのがカタールの夜でした。 カタールの夜の空気は、とても澄んでいて満点の星が綺麗に見えます。 そしてアラビア海。夜になると光を帯びてグリーンに見えます。 この幻想的な昼夜の変化を、一枚のKIMONOに描きました。 前から見る着物姿と、後姿はまるで違う着物のようです。 大胆なデザインと、繊細で高いスキルの虹染めにローケチ染。 京都の専門家が、驚きのあまり叫び声をあげたほど素晴らしい作品です。   ■カタールと日本の繋がり 今では天然ガスを輸出し、カタールは目まぐるしい経済発展を遂げています。 かつてのカタールには、 巨大な天然ガス田を商業化し輸出するための技術と資金が不足していましたが、それを可能にしたのが、オールジャパンで取り組んだ 「LNG(液化天然ガス)開発プロジェクト」でした。東日本大震災の後では日本へ恩返しにと 「カタールフレンド資金」 が設立され震災復興支援を目的に カタールが援助をしてくださるなど、繋がりの深い友好国です。   ■帯 製作者 本郷葵虹 技法 西陣織地に虹染め   ■表地と裏地に思いを込める カタールの帯は、作者の強い要望もあって、KIMONOと同じく本郷先生に製作をしていただきました。 西陣の帯地で中東の華文を織り込んだ帯地に、 「虹染め」の技法でKIMONOと同じコンセプトで表現された面を表地としています。 帯地は、KIMONOの生地と違い、技術的には非常に染が難しいですが、卓越した記述によって、KIMONOと変わらない色彩を醸し出しています。   ■アラビア海とパイプライン 裏地には、夜のカタールに描かれた「アラビア海」をイメージしてグリーンが使われています。 ロウたたきの技法で静かな波を描き、 ここにも金糸の地織によって表現されたパイプラインが織り込まれています。 カタールが天然資源によって発展している様子がこの裏地にも込められており、 コーディネートによっては、こちらを利用することも十分に考えられます。   ■トータルコーディネート 本来、染と織はそれぞれが独立した進化を遂げているが、 カタールに関しては本郷氏自体の感性によって、トータルなコーディネートで製作しました。 このことは、今後のプロジェクトの中でも十分に可能性が感じとれる手法であり、 その意味でもカタール国の製作は大きな足跡を残しました。


 ■世界一の大国をKIMONOに表現 アメリカ合衆国のKIMONOの製作を担当するのは、東京で創作活動を行う友禅作家「成瀬 優」先生です。 成瀬先生は、糸目手描き友禅のほか、ローケチ染や絞りにも精通するマルチなスキルをもつ屈指の染色家です。 また、俳優の舞台衣装を手掛けるなど、エンターテインメント性のあるデザインも得意であることから、世界一の大国で多民族国家であるアメリカ合衆国のKIMONOを引き受けていただきました。 しかし、日本人にとって多くの情報とアイコンが存在するがゆえに、アメリカという国を一枚のKIMONOに表現することはとても難しく、成瀬先生も苦悩されました。 たとえば自由の女神はとても有名ですが、ニューヨークという一都市のアイコンでもあります。しかし、星条旗だけではあまりに表層的すぎる。製作の議論は尽きませんでした。   ■大統領と合衆国 悩んだ末にたどり着いたのが「大統領」と「50州から成る合衆国」という主題でした。 そこで、成瀬先生は、大統領の紋章に描かれている白頭鷲を、大きく地球を俯瞰するように構成し、 宇宙からアメリカ大陸を見る様子に「大統領が国を守っている」という意味を込めました。 また、50州の州花を全て描くことで、それぞれの州が独立自尊しながら一つの国を成している「合衆国」を表現しました。 その結果、全ての州のアメリカ人にとって、このKIMONOとの絆が生まれることとなりました。 さらに、その州の花の中には、野球のボール、アメフトのボール、自由の女神、 ハリウッド映画のフィルムなどのアメリカンカルチャーを取り入れました。そして「42」という数字も描いています。この42という数字はアメリカ人の誰もが知る背番号で、 黒人初の大リーガーであるジャッキーロビンソンの背番号です。 メジャーリーグの全ての球団で永久欠番であるこの数字の麓には、 黒人解放を成し遂げたリンカーン大統領の彫像が描かれており、 そのストーリー性のある構成にアメリカの歴史を感じられます。 そしてさらには、スペースシャトルの宇宙飛行士、 ケネディ大統領をオマージュした「アポロ11号」の近くにはUFOも飛んでいます。 こんなジョークもきっとアメリカ人には好まれるのではないでしょうか。   ■前代未聞の挑戦 成瀬先生が、アメリカ合衆国のKIMONOに使った技法は、地紋を起し、 生地自体に柄のデザインを織り込んでいく技法です。 同じ文様を繰り返し白生地に織るのは珍しい技術ではありませんが、 絵羽文様のしかもこれだけ複雑な地紋を生地に設計し製織することは前代未聞の挑戦です。 パソコンの画面上に大きく拡大されたビットマップに、3000本以上の経糸と緯糸の交差点の6種類の組織を、 ひとつずつ指示をしながら生地のデザインを進めていきます。 それは途方もなく大変な作業です。しかも、先生のこだわりが凄いのは、同じ花が複数描かれる場面でも、 決して「コピー&ペースト」せず、一つ一つの花の形を変えていくところです。「自然界に同じ花はないよね?」当然のごとくおっしゃいますが、なかなか出来ることではありません。 結果、全体の生地の設計をするのに数週間を要し、大変な苦労を経て記事の設計が完了しました。   ■どこまで攻めるのか 白生地は、丹後の白生地屋さんの執念の仕事によって見事に上がり、 彩色の工程は非常に特殊な技法で行われました。 通常の糸目友禅のように染分ける堤防が存在せず、生地に直接描く「無線友禅」です。 染料に直接糊を混ぜて描くこの技法は、水分の調節がうまくいかないと、 滲んでしまうか掠れてしまうために、 常に糊の混ざった染料の粘り気を観察しながら描くという奇跡の様な友禅です。 また、描いている色は、 糊によって大きく色が違って見えるため、視覚的に配色をとらえることができず、 また、最終的に水洗をしないことには全体の色も見えません。 そんな状況の中で、成瀬先生は、 どこまで作品として配色を攻めるのかのぎりぎりの攻防をしました。 彩色の途中「済まないが、今は会いたくない」と、 面会を拒まれるほど、極限の集中力を発揮した末にこの色彩が生み出されました。   ■母国アメリカでのお披露目 作品が初めて披露されたのはロサンゼルスです。 日米協会のガラディナーでは日米の経済界の皆さんが、 ため息とともに感激し、独立記念日のパレードでは、 消防車の上に立ったこの作品に沿道を埋め尽くす数多くのアメリカの皆さんから大きな拍手と 歓声を頂きました。   文末ながら、本作品の製作資金をご提供くださった、 アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,inc.様に心からの御礼を申し上げます。   ■帯 製作者 西陣 中居織物 製作監修 帛撰 技法 手織り袿錦   ■平和のオリーブ アメリカ合衆国の帯の制作は、西陣織に精通した「帛撰」に依頼しました。 帛撰の小口社長は、大統領の紋章である白頭鷲がKIMONOに描かれることから、 大統領旗のエンブレムに意匠を求めました。そのエンブレムに絵描かれた白頭鷲の向かって左足には13葉のオリーブ、右足 には13本の矢を持っています。 これは、オリーブが平和を、矢が戦争を意味していて、白頭鷲の頭は左、すなわち平和を求めているように描かれています。 ここから、13葉のオリーブを平和を求める意味を込めてデザインの中心に取り入れました。 さらに、星条旗のストライプに注目し、全体の着姿の上品さを失わない程度に、オリーブの背景に描きました。   ■セミの羽の様に軽く薄い織組織 織り手に選ばれたのは「中居織物」で、 西陣でも中居織物だけの手織技法が「袿錦」です。 袿(うちぎ)とは、十二単の内側に重ね着する、セミの羽のように薄くて軽い織物です。 そんな、繊細な織の地組織の上に、撚りの強い糸を用いて、オリーブの葉を織り上げています。 この織り方が圧巻なのは、このように薄い土台に、地組織より太い緯糸で織り上げる際、 織の表面に窪みや織幅の縮みが出てしまうという常識を覆し、見事に織り上げているところです。 まさに、機の打ち込みの力加減や、 緯糸をいれるタイミングを熟知した熟練ならではの、オンリーワンの織技術です。   ■オリーブの葉に込めたこだわり オリーブの葉をよく見ると、 織上がりの織り模様がいくつもの種類に別れていることがわかります。 これこそ、単純に見えることを嫌う西陣ならではのこだわりで、 また、オリーブの葉の色も、葉先から枝の近くまでそれぞれに変えてあります。 これによって、遠目に見た時に立体感が生まれ、 KIMONOとのバランスも巧みに取れるように工夫されています。


■幸せの国ブータン ブータン王国は、 世界で唯一チベット仏教を国教とする国家であり、 南アジア、インドと中国の間にある、日本の友好国です。 数年前に国王夫妻が来日された時の報道を目にしたときに、国王夫妻の凛々しいお姿と、 その高貴な立ち居振る舞いに心から感動を覚えました。 ブータン王国は1989年より日常着として公の場での民族衣装の着用を国民に義務付けた国としても有名です。 国民総幸福量を高めることを国家目標に掲げ、物質文明にとらわれない指針は世界に大きな反響を与えています。 また、男性の民族衣装「ゴ」は呉服の語源ともされ、伝統の織物や染織においては、 古来よりの技術を今に伝える宝庫と言われています。 アジア最初の国にブータンを選んだのは、染織の先進地で、その歴史的価値を広く紹介したいという想いからです。   ■日本一の染め元の歴史 ブータン王国のKIMONOの製作を行ったのは、京都の老舗「千總」。 創業1555年、武田信玄と上杉謙信が川中島の合戦を行った弘治元年に、 法衣商を室町三条で営んだことが千總の歴史の始まりです。 友禅の技法が開発された元禄時代はもちろん、近代においては明治期に、日本画家に着物の下絵を描かせることにより、 明治以降の着物のデザインに大きな影響を与えました。海外的な視点も鋭く、パリやブリュッセルの万国博覧会では、 数々の賞牌を獲得し、日本の染色の技術の高さを世界に示すなど、業界における功績は数えきれません。 また、常に「新たな美」を追求し、アールヌーボー、型友禅、最近では友禅染めのサーフボードの製作、 世界的なデザイナーとのコラボによる友禅掛け軸の製作など、 時代の最先端を駆ける先駆者として確固たる地位と名声を誇っています。 その千總にして初めての挑戦が「国をテーマにしたKIMONO」でした。   ■温故知新のデザイン ブータンを製作するにあたり、デザインの基本に置いたのが「古典」です。 江戸時代の小袖には、着物全体を大きく取り分けて、 掛けた時と着た時の印象の違いを楽しむ文様も数多くあります。 そこで、ブータンの国旗に描かれている「龍」に着目して、 寛文時代の取り方を参照しながらデザインの製作が進められました。 国旗に描かれている赤と黄の配色は、この国の好みを端的に表していることから、 これを地色として、中心に大きく龍をシルエットで描く着想が浮かびました。 その際に、絞ったようにみえる友禅「友禅疋田」で龍を描き、ブータンの力強さを表現しました。 また、絣の織物が特徴であることに着目して、伝統的な織物の文様を染で表現し、仏教にゆかりの深い「唐草」の文様を、できるだけブータンの国花である芥子の花に近づける工夫を凝らしました。 また、世界で唯一ブータンにのみ生息するブータンシボリアゲハという蝶を、 ブータンの国民の皆さんへの敬意として描くことにしました。   ■京友禅の教科書 千總の仕事は、まさに京友禅の教科書と言えます。 図案が完成すると、千總専属の染匠である「木村染匠」と工程の打ち合わせに入り、 図案→下絵→糸目→糊伏せ→地染め→色挿し→蒸し→水洗→金彩→刺繍 といった職人の構成がきまります。 京都の友禅は分業制であり、それぞれの仕事に卓越した職人が、 単に図面通りの仕事を行うだけでなく、図案の持つ意図や出来上がりのイメージを、 それぞれの工程で共有しつつ、 更によくなるように自分の領域において工夫を重ねるところに最大の特徴があります。 即ち、つぎの工程へと進めば進むほど「進化」しながら完成に近づくのです。 その全体のディレクターが木村染匠であり、 統括するプロデューサーが千總ということができます。   ■浮かび上がった、ブータンの龍 着装時には全体を見ることはできませんが、衣装掛けに掛けて見るとブータンの象徴である龍がどっしりと中心に描かれ、 ブータンを護り導いているかのようです。 また、赤や黄の色もアジアンなテイストの彩色になっており落ち着きのある華やかな全体の印象に大きく寄与しています。 ブータンの力強い生命力や躍動感をあらわす「唐花」の文様は、上前と肩にデザインの中心を置き、刺繍や金箔によって飾られています。 ブータンシボリアゲハもブルー系の濃淡を用いて描かれていて、 全体をまとめるアクセントになっています。 世界的に貴重な素晴らしい国「ブータン」を敬意をもって創作された作品となっています。   ■ブータン 帯 製作者 西村織物 伝統工芸士 井上久人 技法 手織佐賀錦   佐賀錦は、元々旧肥前国鹿島藩の御殿女中に受け継がれた織物で、 大隈重信の肝いりによりロンドン万博(1910年)に出品され高く評価されたことから、 その後も高級な織物として現在に至るまで帯地に使用されています。 今回は、博多に現存する数少ない手織の技術を生かし、ブータンの帯地の作品に挑みました。 ブータンはチベット仏教の影響が強い敬虔な仏教徒の国であり、 また、男性の民族衣装である「ゴ」は呉服の語源とも言われています。 そんな、ブータンの寺院の装飾文様から取材を行いました。 佐賀錦の特徴は、網代のように金箔を経糸の代わりに張って、 緯に金糸や金箔を織り込んでいくことから、 必然的に市松や斜め45度の斜線にそった文様が織り上げやすいという点にあります。 そこで、タイル状にちりばめられた寺院の文様に注目し、 赤と青の色を中心に佐賀錦の金色を活かしたデザインが完成しました。 博多織の伝統工芸士「井上久人」氏は、80歳に至る佐賀錦織のベテランですが、 ここ20年近くは、現存するデザインを繰り返し織ることに従事してきたために、 当初は新柄への挑戦にためらいも感じていました。 しかし、今回のプロジェクトの真意を理解したうえで、 新たなデザインへの挑戦をしてくださいました。 井上氏曰く「一見、単純に見える市松の文様を正確に織り上げることは想像以上に 困難でした。強く打ち込めば四角がひしゃげてしまい、打ち込みが甘いと長方形になってしまうところが最大の難関 でした」 数度にわたる試し織の中で、金地に載った青や赤の彩を調節することで、豪華な振袖の上にも十分に合せられる帯の製織に成功しました。   織上がりは、見た目以上に薄手で軽く柔らかいもので、この質感こそ手織ならではのものといえます。 また、糸使いの妙によって、ブータン古来の絣の雰囲気さえ感じ取ることができ、 物質文明としての進歩以上に、幸せを追求するブータンの人々にも受け入れていただけるような織上がりに成功したと思っています。 大きな竜と国旗の色に彩られたKIMONとの相性も抜群です。    


■具象の中の空想で描く世界遺産「聖ペテロ・パウロ教会」 リトアニア共和国は、ヨーロッパ北東部の共和制国家、バルト海東岸に並ぶバルト三国の一つです。 中世においてはヨーロッパ最大の面積を誇った国家です。 第二次世界大戦中、リトアニア共和国のカウナス領事館に赴任していた杉原千畝という人物がいました。 ナチス・ドイツの迫害によりポーランドなど欧州各地から逃れてきた難民たちの窮状に立ち上がり、 外務省からの訓令に反して大量のビザ(通過査証)を発給し、 およそ6000人にのぼる避難民を救ったことで知られています。 その避難民の多くが、ユダヤ系でした。 「命のビザ」ともいわれ、まさしく命を懸けて発給したビザでした。 ヨーロッパ最初の国にリトアニア共和国を選んだ理由は「杉原千畝」氏への敬意でもあります。   リトアニア共和国を製作するにあたり、染処おかだが悩んだ末に選んだのが、 首都ヴィニュスにある「聖ペテロ・パウロ教会」です。   世界遺産にも指定されているこの教会は、外装に7年、内装には30年も費やされたという美しい教会で、 ここにある2000以上もの漆喰彫刻は見るものを圧倒します。 その教会内部の風景をデザインの根本としながらも、リトアニアの国花「ヘンルーダ」をブローチに見立て胸元に、 名勝「十字架の丘」、湖に浮かぶ城、そして杉原千畝さんの執務室。 リトアニアの歴史を一枚のKIMONOの中に表現しました。   ■色の魔法のレシピを持つ、染の岡田 岡田氏は、染匠という立場です。 作成する作品の向きに合わせて、お願いする職人さんを選定し、 細部に至るまで指示を出しながら、KIMONOづくりのディレク ションを行う専門職です。 過去の作品では、坂井抱一の琳派の名画から新テイストの古典文様を作成しました。 また、エミールガレの作品から創作されたアールヌーボーの作品など、「他の誰とも違う作品」づくりに定評があります。 そして、最大の魔法は色遣い。 「和」テイストの色の中に挿される「洋」の色の見事さ、少ない色 数で年齢間のない作品を創作する感性は、業界随一と言われています。 そんな、岡田にとって、今回の作品作りにおいては「どうせ作る のであれば、周囲をあっと言わせる作品」「誰にも負けないもの づくり」に挑戦するものでした。   ■リトアニアの美が、日本のKIMNOに昇華 ある時、偶然にふっと岡田の中に舞い降りてきた教会のデザインを、 KIMONOの図案に置き換えていくとき、岡田がポイントとしたのが 「いかに奥行きあるデザインにするか」です。そこで、教会の柱を直線的にとらえながら天井へとつづくアーチ形のドームの曲線美を最大限にいかし、さらに、背中の中心に柱を置くのではなく、 右にずらすことによって空間の広がりを感じ取れるデザインになるよう工夫しました。 そして、実際とは違う縮尺で、 柱の囲いや窓などを「KIMONO」として着たときに成立する美へと昇華させていきました。 ここに、この作品の最大の見所があります。   ■多彩が、一つの絵になった時 この作品には、タブーへの挑戦がたくさん隠れています。 きものに一番大切なものは「彩色」と「配色」です。 人は色で温かみや涼しさなど温度を感じ、作品の印象を左右します。   彩色・・一般的にグレーといえば、白と黒の混ざり合った濃淡の変化をもってイメージされることが多いです。 白い染料と黒い染料を混ぜるとグレーができます。 しかし「紫と黄色」からグレーを作ると、同じグレーでも、「かさ」に変化が生まれ、生地に載せたときに強弱が付き、感じる色が違います。 色は人の目に錯覚を与え、デザインに奥行きを与えます。 通常、遠くから見て人の目を引く色は、赤・白・金といわれていますが、このKIMONOには寒色系の色がほとんどです。 しかし、なぜか華やかに見えるのです。 これこそ、岡田が色の魔術師たる所以であり、彩色の職人さんのタブーへの挑戦です。   配色・・この作品には、地色というものが存在しません。 すべて筆による「塗り」で色を挿しています。これだけの面積の配色を考えることは、まさに狂気の沙汰です。 周囲の色の面積や彩色を頭の中に想像しながら、複雑なジグソーパズルを組み立てていくように、 しかも最終的には美しく色付けを行います。 地色が存在しないからこそ、「塗り」をしながら配色を調整していく、 究極の生放送のような仕事。これもまたタブーへ挑戦です。   ■色による立体感、力の強弱 濃い色と薄い色などを巧みに使って、全体として見えてくる教会の室内文様。 本来は空想であるにもかかわらず、なぜだか現実感が感じ取れ、どこにも違和感がない構図。 しかし、筆のタッチが同じものばかりになると、どうしても目にきつくなってしまいます。 最後に、岡田が意識したのが「どこで力を抜くか」です。 それが、湖に浮かぶ城の風景です。 この部分だけは、ぼかし友禅を多用して、輪郭のはっきりしない絵模様にすることで、観ている人の視線が休まる場所を入れるよう計算しています。 こうして、前例のない構図とデザイン・彩色・配色によるリトアニア共和国のKIMONOが完成しました。   ■帯 龍村美術織物 この作品を解説するにあたり、まずは龍村美術織物について語らない訳にはいきません。 龍村美術織物は日本を代表する織元で、 明治に織物業を始めた初代龍村平藏から数えて四代目の平藏氏が現社長を務めています。 初代平蔵氏は、正倉院や法隆寺の織物の研究を重ね、その復元を担ってきたことなどから、芥川龍之介をして 「明治の天才」と言わしめた稀代の人物です。 爾来、国会議事堂や儀仗馬車の内装など、国賓を迎える我が国の威信をかけた仕事の依頼を受け続け、 皇室の納采の儀などに用いられる絹織物の製作にもご用命が下る織元として現代に続いています。   バルト三国の一つであり、中世ヨーロッパにおいて最大の面積を誇ったこともある、 現在のリトアニア共和国の帯の製作にあたり、四代平藏氏より特別の許可を賜り製作がスタートしました。 まず、KIMONOのデザインとの相性を考え、黒地の帯にすることを前提として、 リトアニア共和国の国花である「ヘンルーダの花」に注目しました。 シンメトリーの美しさを大切にしながら、 ヘンルーダの花を「ブローチ」のように表現、 キリスト教の十字架を意識しながら、宝飾のような文様が完成しました。 その後、鮮やかな紫とグリーンを彩色の中心に据えながら、 地色との織上がりのバランスを試行し、輪郭をぼかしのように織り上げる工夫を行いました。 さらに、金糸と金箔のバランスも数度にもわたる試し織により、最良のバランスを発見し、 西陣でも貴重な本袋織(表地と裏地を同時に織り上げる技法)を用いて、 卓越した西陣織の職人によって数週間かけて織り上げられました。 本袋の帯は、経糸を表地と裏地の二重に構え、緯糸や箔などをループ状に織り上げていく。 そのため、一本の帯が織りあがって、裏返しを一気に行うまで(大返しと呼ぶ工程)一切、 織上がりの確認ができず、一発勝負の神業を必要とします。 織上がりを見ると、高貴で上品な宝飾の雰囲気が感じ取れ、 中世ヨーロッパの栄華を彷彿とさせる作品に仕上がっています。 世界遺産「聖ペテロ・パウロ教会」をモチーフにした斬新なデザインのKIMONOの上でも、 存在感を感じる雰囲気は、「流石は龍村織」と観る人を感服させる実力を如何なく発揮しています。  


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