40年以上にわたり、日本で生活するインドシナ難民や条約難民、中国帰国者、日系定住者とその子弟の定住と自立に向けた支援を行う「社会福祉法人さぽうと21」。 そのコーディネーターとして、日本に住む難民支援の最前線に立つ矢崎理恵(やざき りえ)さんに、日本語支援における課題や展望を伺いました。矢崎理恵さんへの取材はリモートで行われた■オンライン型の個別支援で、難民の子どもの家庭での様子が垣間見えた―まずは、あらためて、さぽうと21の活動内容について教えてください。 日本に住む難民の方々の自立を、教育面から支援する活動を続けています。大きく分けると、3つの事業があります。 1つ目は、難民の方々が学業を全うすることを目的とした「経済的支援」です。高校生から大学院生までに、奨学金(就学・生活支援金)の提供を行っています。 2つ目は、小学生から60代の方々までを対象とした「学習支援室事業」です。日本語や学校で習う教科を教えたり、パソコンの学習をサポートしたりと、様々な学びの場を提供しています。 3つ目は、主に生活支援金を支給している学生やその家族からの相談にお応えする「相談事業」です。行政への手続きのサポートなど、公的な支援につなげる役割を担っております。―受講者のニーズに合わせた支援を続けているのですね。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の最中では、どのような対策をされましたか? 子どもたちが学校に行けなくなったので、ボランティアの方々のお力をいつも以上にお借りして、オンライン型の個別学習支援を始めました。4月17日に第一回目をスタートさせて今に至るまで、1日も休まずに個別学習支援を継続しています。 これからは、次の3つの学習支援の形を子どもの状況にあわせてうまく統合していきたいと考えています。 ①目黒と錦糸町で従来より展開している「教室型」 ②今回始めた「オンライン型」 ③今年度スタートさせようと思っている「アウトリーチ型」―実際にオンライン型の支援を開始されてみて、何か大きな変化はありましたか? 従来の教室型では週末のみでしたが、オンラインにしたことで、子どもたちは望めば毎日支援を受けられるようになりました。子どもたちの日常の学習状況がわかるようになり学習計画が立てやすくなったという点で、オンライン型の支援は私たちにとってもプラスに働きました。 また、難民の各家庭は意外にもiPad等のデバイスを持っていたんです。なので、思っていたほどは、子どもたちの学習環境が整わないといったことはなかったです。とはいえ、ない子はないので、そこは次の課題かと思っています。―オンラインにしたことによるプラス面は多かったのですね。 今のところはそのように感じています。私たちは家庭訪問的な支援はしないというのを決めごととしています。オンラインによって、詮索はしないけれど子どもたちの生活圏が少し見えるようになり、ちょうどいい距離感を構築できたように感じました。 子どもたちが家にどの程度の学習リソースを持っているのかがわかるようになりましたし、家族全員でwi-fiを繋げるために試行錯誤している様子などを見ると、支援者(日本語や学習支援のボランティア)はもっと難民の家族を応援したい!という気持ちになったと聞いています。■日本語の日常会話はできるのに、大学で壁にぶつかる難民の子どもたち―日本語学習における、子どもたちのモチベーションはいかがでしょうか。 ネット社会になって、子どもたちにとって「遠い祖国も遠くなくなった」というのが、実は支援するうえで難しいところです。というのは、インターネットを通じて祖国の人とすぐに繋がれて母語でコミュニケーションができると、日本語を学ばなければならないという気持ちを持ちにくくなることもあるからです。 また、日本を本拠地と感じていないのか、日本語の勉強に100%打ち込めていないように見える子どももいます。「自分にはもっと違う場所がある」という思いで、日々生きているような印象を受けるんです。言語の習得には5~7年かかりますが、それは子どもにとっては非常に長い時間です。遠くのゴールを目指すことにピンときてないことが、理由のひとつだと思います。―高校までは問題なく学校生活を送っていても、大学になると勉強についていけず、中退する難民の子どもが少なくないと聞きました。その原因は何だとお考えですか? 日本語をツールとして、論理的に考える能力が不足していることが原因のひとつではないかと考えています。大学では、高校までの受動的な学びと異なり、能動的な学習活動、つまり日本語で論理的に考えて自分でアウトプットしていく力が求められます。様々な背景により、日本語レベルがそこまで達していない子どもは大学でつまずいてしまいます。これには、おそらく読書をあまりしていないことも影響していると思います。読書をしてなければ文書を書いたりできないですよね。 日常会話では全く日本人と遜色なく話せる子どもにとって、大学で直面するそのつまずきは非常にショックなことです。 こうした状況を受けて、今「対話型アセスメント:Dialogic Language Assessment (DLA)」*1の勉強会をしています。DLAとは、日常会話はできるが、教科学習に困難を感じている児童生徒対象とした日本語能力の測定方法です。子どもたちの言語能力を把握するだけでなく、どのような学習支援が必要であるか、教科学習支援のあり方を検討するための手段として有効だと感じています。 *1参考:文部科学省初頭中等教育局国際教育課(2014)「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント」―DLAを通して、新たな発見や気づきはありましたか? DLA勉強会の先生が、母語の重要性を説明してくださったのが印象に残っています。 非常に知的で、母語だったらもっと多様な表現ができるだろうなという難民の方が、簡単な日本語の単語を並べて子どもと接することがあるのですが、そういうケースでは子どもの言語能力が伸び悩むことが多いように思います。そのような場合に「親御さんも日本語頑張りましょう!」と声掛けしてしまうことで、親に相当のプレッシャーがかかってしまう。もちろん親は子どもの将来を考えて必死に日本語を使っているのですが、親は親で凛として自分の言葉を愛し、それを子どもに継承していくくらいの強い姿勢をもつことも大切なんです。日本語の習得に加えて、母語で思考する力を身に着け、そしてきちんと読書もするというのが、大学に入っても困らない言語能力を身につけるには必要なことではないかと思います。 DLAでの学びも踏まえ、今後も難民の子どもたち、そして大人たちが自分らしく本領を発揮できるような支援をしていきたいですね。 ―日本語学習支援を40年以上も継続されている中で、我々のオンライン日本語学習支援(LIP-Learning)に期待することを最後に伺えますでしょうか。 これからオンライン学習が増えて質が問われるなかで、既存のプロフェッショナルのコンテンツを上手く利用して提供するというのは、日本語教師の私からすると望ましい形です。今まであまりなかった支援の形なので、非常に興味深いですし貴重だと思います。―オンラインでありながら書き取りの授業ができたり、日本語能力試験の学習に特化したプログラムを提供できないか現在模索しています。 内容が充実してくると、いろいろな方のニーズにあってくると思います。期待しています!―ありがとうございます。ぜひ今後ともお力添えいただけると嬉しいです。今日はありがとうございました! こちらこそありがとうございました。―――お知らせ――― 最後までお読みいただきありがとうございました! Living in Peace 難民プロジェクトは、難民の方々に日本語を学ぶ機会を提供するためのクラウドファンディングに挑戦中です。 ぜひ、ご寄付やSNSでの拡散等にてご協力ください!
本日も、全員プロボノとして活動しているLiving in Peace(以下「LIP」という。)難民プロジェクトのユニークなメンバーを紹介いたします。私たちメンバーがどういった思いで日々活動しているのか、少しでも知っていただければ幸いです。3回目の本記事では、T.Tさんをご紹介いたします。========================================なぜ、難民の方々をサポートしようと思ったのか、きっかけは何ですか?本業の傍ら、本業からは少し離れつつも、同時に自身の経験や知識を生かして、何か社会活動にも参加をできないかと思っていた際に、LIPの活動を目にする機会があったことが1つの契機です。また同時に、日本において難民の方々が置かれている状況や、難民認定支援に関する事項についても触れる中で、語学力や法的知識などを生かしつつ、様々な形・角度から、難民サポートをしてみようと思うに至り、LIPに参加をして、難民支援をしてみようと思うに至りました。LIPの難民PJではどのようなことをされているのですか?主として、今回のクラウドファンディングの契機となっており、現在トライヤルを実施中のLIP-Learningを通じた難民の方の支援をしております。具体的には、日常の難民の方とのやり取りや日本語の授業の提供元であるアルクとのやり取りを始めとして、難民の方との定期的な面談等の機会の設定や来期以降のLIP-Learningの企画・立案など、LIP-Learningに関する事項について全体的な関与をしております。その他にもLIPの難民PJとして外部の学者の先生と行っている共同研究への参加や難民PJ内などで発生する法務に関する事項に関する対応なども行っております。本業ではどのようなことをされているのですか?弁護士をしています。専門とする分野は別ですが、プロボノ活動で難民認定の支援もしています。LIPとプライベート/趣味はどのように両立されているのですか?本業もLIPの活動も、時期によってかなり繁忙に差があるのですが、週末を中心に、メリハリをうまくつけながら、隙間の時間を活用をしています。LIPのクラウドファンディングのページをご覧の皆様にメッセージを!多くの難民の方にとって日本語学習の機会は非常に貴重な機会となっており、現在のLIP-Learningのトライヤルへの参加者からは、このような機会の設定に大変感謝する声が多く寄せられております。またその中でも、日本語学習は単なる学習ではなく、日本社会において生きることそのものであるなどの切実な声も寄せられております。このうような難民の方々の声に、1人でも多くの方に共感を頂き、ご支援をいただけますと幸いです。========================================次回のメンバー紹介もお楽しみに!
前回に続き、全員プロボノとして活動しているLiving in Peace(以下「LIP」という。)難民プロジェクトのユニークなメンバーを紹介いたします。私たちメンバーがどういった思いで日々活動しているのか、少しでも知っていただければ幸いです。2回目の本記事では、S.Tさんをご紹介いたします。========================================なぜ、難民の方々をサポートしようと思ったのか、きっかけは何ですか?学生時代にスウェーデンの移民・難民の社会統合について研究していたことがきっかけです。当時移民・難民に対して「寛容だ」と言われていたスウェーデンで、移民・難民に対する制度や考え方を学び、全く問題がないわけではないけれど、一生懸命彼らの社会統合に向けて取り組んでいる様子を目の当たりにすることができました。同時に、それと比較しながら日本の状況を考えることができました。日本にも多くの難民の方々が生活していますが、一般にそのことがあまり認知されておらず「難民危機」の際もどこか対岸の火事のように捉えられている状況も気になりました。自国を離れなければならなかった人たちがやっとの思いで逃れた先である日本で何とか心の平穏を保ちながら希望を持って暮らせるように、ひいてはよりよい社会を一緒に作っていけるようにしたい!そういう思いから日本にいる難民の方々と関わっていくことを決めました。LIPの難民PJではどのようなことをされているのですか?難民の大学生の方々に対する就労支援を主に行っています。その時に大切にしているのは、就職できればなんでも良いということではなく、彼らのこれまでの経験や希望を丁寧に聞きながら納得いく仕事を見つけられるようにすることです。そのために、いろいろな可能性を示しながら、少し後ろから背中を押せるようなサポートをしています。幸いLIPは全員が本業を持って活動している団体なので、難民の学生が興味を持つ業界には誰かしらが働いています。それを活かしてLIP版OB/OG訪問みたいな機会を提供することにより、学生には志望する業界に対して憧れだけではなく具体的なイメージを持ってもらえていますし、そこは我々の強みであると考えています。本業ではどのようなことをされているのですか?コンサルタントとして働いています。毎日たくさんの学びがあり刺激的な日々を過ごしています。LIPとプライベート/趣味はどのように両立されているのですか?難民プロジェクトに所属しているメンバーで集まる定例ミーティングは隔週で1時間半ですし、イベントの前等でない限りは時間的な拘束は普段はそこまでないかと思うので、落ち着いている時や時間の合間を見つけて自分の好きなことをしています。LIPのクラウドファンディングのページをご覧の皆様にメッセージを!より多くの難民の方々が日本語を習得し、周囲のコミュニティや日本社会とのつながりを感じながら安心して暮らしていけるようご支援いただけるととてもうれしいです。どうか、宜しくお願いします。========================================次回のメンバー紹介もお楽しみに!
「日本に暮らすムスリム女性の方たちが日本語を学びたいと訴える1番の理由は、なによりも、自分の子どもを助けてあげたいからなんです」そう語るのは、日本に生活する難民・移住者の方々、とりわけムスリム女性やその家族に対して日本語学学習のサポートを行ってきた、ISSJ(社会福祉法人日本国際社会事業団)常務理事、石川美絵子(いしかわ みえこ)さんです。なかなか理解されることのない、日本に暮らす難民の方々が抱える困難について、同じく難民の方向けに日本語学習をはじめとした就労支援サービス「LIP-Learning」の提供を開始した、認定NPO法人Living in Peace共同代表 龔軼群(きょう いぐん)が話を聞きました。執筆:大沼楽■ムスリム女性の社会参加を阻む、言葉の壁―ISSJさんのご活動には、常に大きな刺激をいただいております。あらためて、ISSJがムスリム女性難民の方々に対して日本語学習支援を始めたきっかけを教えてください。 以前、ISSJがパートナー事業を受託しているUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が実施した、「AGDM(Age Gender Diversity Mainstreaming)」というプロジェクトに参加させていただいたことがきっかけです。石川美絵子さん 取材はリモートで行われたプロジェクトを進めるにあたり、私たちは当事者の方々とお話しすることに力を入れていました。いろんなエスニックコミュニティにうかがって、直接お話を聞いて回ったんです。そうした中で、ムスリム女性のための日本語学習が必要であることを実感し、現在の活動をスタートしました。―日本に暮らすムスリムの女性たちは、どのような状況に置かれていたのでしょうか。そもそも状況を知る以前に、女性の意見を聞くことが難しいというところからのスタートでした。広く知られている通り、ムスリムの方々と話そうとする時には、まず男性に話を通す必要があります。直接女性と話すことができず、彼女たちが何に困っているのかを知ることすら難しかったんです。回数を重ねていくうちに女性とも話せるようになり、今では女性の方々とライングループでやりとりすることができるようにまでなりました。しかしそれでも、何か新しい事業などを始める際には男性たちの理解も得ておく必要がありますね。―ムスリムならではの困難があったのですね。ヒアリングの中で見えてきた女性たちのニーズには、どのようなものがあったのでしょうか。多くの女性に話を聞いてきましたが、いつも答えは同じでした。「自動車の免許を取りたい」「日本語を学びたい」のふたつです。運転免許を取りたい理由は明白です。ムスリム難民の方々が暮らしている地域は、公共交通機関が充実していないことが少なくありません。ゆえに、普段は徒歩圏内までしか出かけることができないからです。徒歩圏外に行けるのは、週末に旦那さんが買い物に連れて行ってくれる時だけ。これは、あまりにも不自由ですよね。―なるほど。しかし、運転免許を取得するには日本語が使えなければならない。龔軼群(Living in Peace共同代表)おっしゃる通りです。もちろん、彼女たちが日本語を学びたいと思う背景には、他にもさまざまな理由があります。たとえば、「家の外に出て働く」ためなどです。先ほどの話とも繋がりますが、世界全体で見ると、ムスリムには女性が社会に出て働くことを「よし」としない価値観がある。実際に、他国への第三国定住(難民が最初に保護を求めた国から、彼・彼女らを受け入れることに同意した第三国へと移ること)を希望する男性が、「妻が働かないと生活できない国には行きたくない」と言うケースがあると聞いたことがあります。でも実際に日本で暮らしてみると、そうした意識って薄れることがあるんですよね。男性も日本社会で暮らしていくうちに、女性が働きに出ることに対する抵抗感がなくなっていく。しかし、だからといって簡単に働きに出られるようになるわけではない。意識が変わったとしても、言葉の壁がそれを阻む。日本語がわからないために、就労の機会を得ることができないのです。−裏を返せば、日本語学習の機会さえあれば社会参加できる女性が少なくないということでもありますね。実際に、私たちの開催している日本語教室を経て就労に至った女性は少なくありません。彼女たちへ日本語学習の機会を提供することには、間違いなく大きな意味があるといえるでしょう。また、彼女たちが日本語を学びたいと思うことは、もう一つ大きな理由があります。「自分の子どもに勉強を教えたい」という理由です。 ■子どもの困難をサポートできない親の苦しみ−私たちLiving in Peaceもお母さん方に日本語学習を提供していますが、やはり同じように「子どもに勉強を教えたい」という声を頻繁に耳にします。そうですよね。ムスリム難民の子どもたちは、多くの場合日本の学校に通っています。ですので、教科書や宿題などは当たり前のように全てが日本語。日本語がわからない親は、自分の子どもに勉強を教えてあげることができないんです。―「自分の子どもに勉強を教えてあげられない」という状況は、自分を「ダメな母親だ」と責める要因になってしまいますよね。その通りです。そうした課題感をうけ、私たちISSJは母親に対する日本語学習支援だけでなく、夏休みなどの長期休暇における子どもの宿題支援も行っています。―具体的には、どのような支援を行っているのでしょうか。一緒に算数の問題解いたりもしますが、メインは「考えをまとめる作業」や「文章の行間を読み取る作業」のサポートですね。わかりやすい例でいうと、読書感想文などです。読書感想文って、難民の子どもたちにとって、非常にハードルが高い作業なんですよ。子どもは大人に比べて言葉の習得が早いため、一見して語学面での苦労が少ないかのように誤解されがちです。しかし実際には、日常会話に支障がないように見える子どもでも、実生活のなかで見えない言語のハードルに悩まされていることが少なくない。―どういうことでしょうか?たしかに難民の子どもは、親と比べると日本語を流暢に喋るケースが多い。一見して語学面の苦労が少ないかのように見えるかもしれません。しかし子どもたちには、「生活言語」はすぐに覚えても、「学習言語」の習得が遅れているというケースが少なくないのです。「生活言語」というのは文字通り、日常生活の中で会話を中心に獲得される言語です。こちらについては、たしかに子どもたちは比較的に早く習得する傾向にあります。しかし一方で、勉強や思考の際に使用する「学習言語」については、「生活言語」に比べて遅れていることが往々にしてある。論理的思考力や抽象的思考力などの発達が遅れ、読み書きなどに困難が生じているんです。―「生活言語」と「学習言語」の発達に差が出てしまった場合、子どもには具体的にどういった困難が生じるのでしょう。読書感想文などは、まさにその典型だといえるでしょう。会話はできるけれども、文章を読んで理解することが難しい。感想を論理的に書くことができない。同じ理由で、算数の文章問題に躓く子も多いですね。問題文は読めるけれども、そこで何を求められているのかを理解することができないのです。しかし一番の問題は、子どもたちのそうした困難に「学校の先生たちが気づきづらい」という点にあると思います。教室ではスムーズに会話できているため、ついつい宿題などを日本語ネイティブの生徒と同じレベル感で出してしまう。しかし実は、それが子どもたちにとっては先生が想像する以上に大きな負担となっているのです。―そうして発生する子どもの負担を親はフォローしてあげたい。しかし自分も子ども以上に日本語ができないので、助けてあげられない。親としてはつらいですね。それに加え、新型コロナウイルスの影響で家庭学習が推進されたことも大きな負担となっているのではないでしょうか。難民家庭には生活困窮世帯が少なくないため、そもそもIT環境が整っていないという家庭も非常に多かったですね。今回の急速な変化についていけない親子が大量に発生しました。また、インターネット環境が整備されていたとしても、そこで提供されている教材やコンテンツの意味が理解できない、使い方が分からないという相談も多数寄せられています。資料提供:ISSJ言語の壁がもたらした教育格差は計り知れませんし、そこで親たちが抱いてしまった自己否定の気持ちについてもケアが必要とされているのではないでしょうか。―語学面の支援は不可欠だといえそうですね。もちろん、難民の方々は語学面以外にも、さまざま面から複合的困難な状況に置かれています。これは、何かひとつの課題さえ解決すればどうにかなるものではありません。しかし言語は、そういったさまざまな困難に少なからず結びついている課題です。引き続き支援ニーズがあるのは間違いありません。―そうしたニーズをうけ、私たちLiving in Peaceも2019年度から、難民の方々を対象としたオンライン日本語学習支援(LIP-Learning)を開始しました。受講生の方々の反応はいかがですか?LIP-Learning2019募集要項 ―まだ僅かな人数にしか提供できていませんが、受講生の方々からは、「日本語が上達することで、生活の中で日本語を使って話す機会も増え、友人も作ることができた。まるで祖国にいるようなそんな感覚を覚えることができた」というようなご感想をいただいており、たしかな手応えを感じ始めているところです。素晴らしいですね。Living in Peaceさんの機動力の高さには、とても頼もしさを感じています。また、既存の団体がリーチできていない層にアプローチできている。ぜひこのままつき進んでほしいですし、どんどんスケールアップしてほしいと思います。 ―ありがとうございます。ぜひ今後ともお力添えいただけると嬉しいです。今日はありがとうございました!こちらこそありがとうございました! 応援しています! ―――お知らせ―――最後までお読みいただきありがとうございました! Living in Peace 難民プロジェクトは、難民の方々に日本語を学ぶ機会を提供するためのクラウドファンディングに挑戦中です。ぜひ、ご寄付やSNSでの拡散等にてご協力ください!
本記事から数回に分けて、全員プロボノとして活動しているLiving in Peace(以下「LIP」という。)難民プロジェクトのユニークなメンバーを紹介いたします。私たちメンバーがどういった思いで日々活動しているのか、少しでも知っていただければ幸いです。今回は、Y Kさんをご紹介いたします。========================================なぜ、難民の方々をサポートしようと思ったのか、きっかけは何ですか?偶々参加したワークショップで、陽気で面白いアフリカ系難民の方と友達になったのがきっかけです。1泊2日と短い時間でしたが、一緒に芋を掘ったり、ワールドカップを見たりと、その時はあまり彼のことを難民と意識しておらず、少し変わった面白い友達ができたことがただ嬉しかったのを覚えています。その時は日本の難民問題って複雑なんだなとぼんやりと考えていたのですが、難民のニュースが流れるたびに自分の意識がそこに向いてるのに気づきました。ニュースを見るたびその難民の友達の顔が浮かぶようになり、自分の中でモヤモヤとした感情が沸き上がるのを感じておりました。日本はグローバル化などと謳うくせに、外国籍の方を受け入れることにはあまりにも冷たすぎると思うと居たたまれなくなり、それがきっかけでLIPでの活動を開始しました。LIPの難民PJではどのようなことをされているのですか?新卒の難民学生向けの就労支援をメインに行っており、最近ではファンドレイジングの業務も一部担当しています。LIP難民プロジェクトは他のプロジェクトと違ってまだ立ち上がって間もないこともあり、メンバーが助け合って業務を行っています。本業では担当しないような業務も行えるので、自分の仕事の幅も広げられる様に感じております。本業ではどのようなことをされているのですか?現在は製造メーカーをクライアントに法人営業を行っています。理系の大学院を出た後に、化学系のメーカーで勤務していたため、難民問題とは全く関わらない生活を送ってきました。また、NPOやプロボノという活動にはこれまであまり縁がなく勝手がわからない部分も多々ありますが、本業の営業の視点を活かしながら活動できていると感じております。本業の経験をLIPに活かすだけでなく、LIPの経験も本業に取り入れながら良いシナジーを生み出せていると感じます。LIPとプライベート/趣味はどのように両立されているのですか?LIPは本業もプライベートも犠牲にすることはNGですので、簡単に両立できる環境です。ただ、私はあまり友達と遊ばないので、土日のほとんどをLIPに費やしております。むしろLIPに参加するようになってからは、メンバーと飲みに行くことも増えたので楽しく日々を送っております。LIPのクラウドファンディングのページをご覧の皆様にメッセージを!難民の方々は祖国での苦しい経験を経て、日本に逃れてきております。難民としての生活は多くのストレスに晒されますが、その中で語学の壁にもぶつかります。私たちが望んで海外生活をするのとはわけが違います。海外の方を受け入れる気持ちを持つことは、日本社会にとっても有益なことです。日本語支援は単なる語学力を上げるための支援ではなく、人と人が必要な時に必要な形で支えあうそんな社会にしていくためにも重要な活動の一つだと考えております。私たちの活動に共感して頂ける方が少しでも多くいらっしゃることを願っております。========================================次回のメンバー紹介もお楽しみに!