今回は、リターン品の松江流おもてなし会の魅力について書きたいと思います。 今回の会場は、島根県松江市八雲町にあります安部栄四郎記念館から歩いて5分ほどの場所、人間国宝 安部栄四郎邸です。 安部栄四郎さんが自分の住む家として、また、お客さんを迎える場所としてこだわりを持って建てられた場所です。 釘を使わず、木材だけで建てられています。 大きな梁がとおり、随所に職人さんの腕が光る建物となっています。 今でも、出雲民藝紙の伝承者、安部信一郎さんやご家族の方が住んでいらっしゃるお宅なので、普段は非公開です。 そして、今回使わせて頂く部屋は、安部家の親戚の方も入ったことがないというくらい非公開です。 この企画のためだけに特別に、信一郎さんのご厚意でご案内頂きます。 玄関に一歩足を踏み入れると、ところ狭しと安部栄四郎さんが集めていた民芸品、交友関係のあった方々の作品が並んでいます。 安部栄四郎さんは自らの漉いた雁皮紙(がんぴし)と民藝運動の創始者 柳宗悦さんとの出会いにより、民藝について深く追求し、善い紙とは何かを考え、努力した人でした。その研究のための資料や民芸品がたくさん置かれています。 また、紙に関する資料も国内のものだけではなく、海外のパピルス紙、羊皮紙などをまじかに見ることができます。紙漉きを極めていく過程の中で自らが漉いた紙も、コレクションされています。 そして何より注目したいのは、民芸運動を通して生まれた幅広い交友関係を物語る作品の数々です。 柳宗悦、河井寛次郎、棟方志功、バーナード・リーチ、濱田庄司、芹沢銈介、など誰もが一度は聞いたことのある作家さんの名前が並びます。親交があったからこその作品を見ることができます。 特に目を引くのは棟方志功さんのふすま絵と壁にはめ込まれた絵です。このふすま絵は、家を新築した際に棟方志功夫妻が三泊され、この絵を描かれました。 三椏(みつまた)紙と雁皮(がんぴ)紙それぞれ書かれたふすま絵は、棟方さん独特のタッチで八雲の自然が描かれています。今回お邪魔するこの部屋で、棟方志功さんと栄四郎さんはお酒を飲み、趣味や仕事の話をして大いに盛り上がったようです。 壁にはめ込まれた絵も、この場所にふさわしい、この場所だから存在する、思わず手を合わせてしまうものが描かれています。 著作権の関係で、このふすま絵や壁の絵をお見せできませんが、ここでしか見れない作品の数々です。 民藝運動をしていた仲間たちと、互いに刺激を受けながら、励まし、切磋琢磨していたこの部屋で過ごす機会は本当に貴重です。タイムスリップしたような空間で、その当時の空気感や息づいを感じれます。 そして、今回はさらに貴重なお抹茶椀で、お抹茶とお菓子を頂きます。 河井寛次郎さん、浜田庄司さんの作られたお抹茶椀です。 貴重なので、本当に特別なお客様の時にしか使わないと、信一郎さんもおっしゃいます。 民藝運動の“用の美”日常の暮らしの中で使われてきた日用品の中の美しさ。町娘のようでなく、田舎娘の健康的な美しさこそが真の美しさである。と、そんな素朴な美しさの作品です。 日常の中にあるものの美しさや、必ずしもきらびやかでない芸術を美とする心が、日本らしいと思います。 当日は、松江流のおもてなしで、心をこめてお迎えいたします。 ウィーン帰国直後です。国際平和美術展の感想、出雲民藝紙や島根、松江のアピール活動、人生初の海外で見たもの、感じたことなどを報告させて頂きます。 作家さんの作品に囲まれ、作品でお茶を飲み、作家が実際に過ごした空間で過ごす。 こんな贅沢な時間の過ごし方があるのだろうかと思います。 この特別な空間にお越しください。 出雲民藝紙だけでなく、民藝や茶道、骨董などに興味のある方にも届けたい特別な企画です。ぜひお越しくださいませ。





