開発秘話⑮「カップ麺を食べるために・・・」「おにぎりをそのまま温められる2層袋」の中で”お湯が沸かせる”ことを実証するため、早速設計を変更する事になりました。今のままだと、もしお湯が沸かせても発熱剤や蒸気と触れずにお湯だけを取り出すことが難しく、飲めなかったら意味がありません。ある日、電車に揺られながら「注水口」を追加しようとひらめき、早速袋の端に注水口を設計したのですが・・・またしても「コストの問題」や「技術の問題」などが噴出し再び壁にぶつかるのでした。なぜなら2層構造のうち、沸かしたお湯だけを外に出すための注水口の設置は一筋縄ではいかなかったのです。袋を全部圧着したら中の水は全く出せないし、逆に圧着しなければ発熱剤の反応水も一緒に出ちゃう。でも山の上でカップ麺を食べるためには何とかしないと・・・ということで「何とかならんかなぁ」と、またまた困った時の”直談判”!さすがに今回はできるかどうかやってみないと分からないそうで、「あんたの頼みじゃなかったら受けてないよ。」と言われつつも、とにかく一緒にチャレンジしてくれるそう!(笑)そうと決まれば・・・色んな注水口案を出してみたのですが、少し面積は大きくなるけど使いやすい方が良く「両サイド注水口」案で進める事に。(もう片方は給水袋として外袋に入れた水を持ち運ぶ時の注水口用です。)よし次は2層袋のデザインを描くぞー!続く・・・
開発秘話⑭「お湯が沸く!?」「おにぎりをそのまま温められる2層袋」として開発を始めた「HOTPLUS」ですが、専用に設計した発熱剤を用いて試験を重ねていくうちに、袋の中で”お湯が沸かせる”かもしれないという結果が出てきました。これまでの透明2層袋を加工したり、袋の代わりに設計した容器を使ってみたり。あらゆる方法で水の温度を測定し、どれだけ効率的に温められるかを実験。すると、推定ではあるものの「90℃」を超えるお湯を沸かすことが出来たのです。おにぎりだけでなく、ラーメンも食べれたら・・・高まる期待とともに、市販のカップ麺を片っ端から試食した結果、一つの目安として85℃以下のお湯では麺が調理しきれないものがある事が分かりました。※個人の感想です(笑)特に調理時間5分のうどん系はなかなか強敵でした。安定して90℃以上のお湯が沸かせるならと、ホットプラスにもうひと加工施し、もっと便利に使えるよう設計図を変更する事にしたのでした。続く・・・
開発秘話⑬「できたできた!」ということで、発熱剤袋のデザインをはじめたのですが・・・・「注意書き」は目に入りやすい位置で読みやすく・保管方法をしっかり書くことも重要です・開封がしやすく・バーコードはきちんと読み取れる位置に・・・などなどデザイン一つ作るだけで、こんなに色んな事考えないといけないのかぁと思いつつ、何とか完了!早速現地にサンプル製造を依頼するのでした。待つこと数日・・・国際貨物が届き中を開けてみると私のデザインしたパッケージが!これまた”2層袋”の時と同様、カタチになる感動を実感したのですが・・・「全然ダメやんっ!!」袋は汚く、開封できず、デザインもズレていて、色も悪い。まぁ、モノを作るときってほとんど失敗の繰り返しと言っても過言ではなく、できた瞬間に”即却下”というのも珍しくないのです。ただ凹んでいても仕方ありません。改善できるように次はもう少し分かりやすく伝えよう!とまた一つ反省を胸に刻んだのでした。「失敗は成功のもと。」続く・・・
開発秘話⑫「〇〇注意!!」信頼できる発熱剤を作るため、クリアしないといけないミッションがまだまだあります。中でも製品に表記する「注意書き」を決める事は重要な課題の一つです。さて、私たちのようなメーカーが消費者の皆さまに対する「注意書き」を決める”基”となる資料があるんですが、ご存知でしょうか?”安全データシート”(Safety Data Sheet)と呼ばれる資料で、化学物質を含む製品を販売したり取引先企業に引渡す際に、その化学物質の性質や危険性、有害性、取扱いに関する情報などを相手方にお伝えするための文書で、例えば「ビニール袋を燃やしたら有毒ガスが出るからダメよ」みたいな事がもっともっと詳しく書いてあります。ただ・・・細かすぎて読む気にならないので、分かりやすくかみ砕いて「使用上の注意」などの注意書きとして表記します。まず発熱剤に含まれる原材料を基に、この”安全データシート”を化学物質の専門機関に作ってもらう作業からスタートするのですが、ここでいきなり「こんな危険なもので食べ物を温めるんですか!?」と専門家からのご指摘が・・・(汗)危険だからこそ発熱剤と食材が触れない”2層袋”である点などを力説し、「HOTPLUS」の安全性を理解し納得してもらえましたが、そのまま哺乳瓶を温めるなんて考えられないと仰られてました。※とにかく知識量がすごかった(驚)さて、”安全データシート”の本来の目的は危険性を正確に把握することで、安心して製品を使ってもらうという点です。製品にもウェブサイトにもたくさんの注意書きを記載してありますので、めんどくさいと思いますがお使いになる前に一度見てみてください。色んな製品の注意書きを読むとちょっと賢くなった気がするのは私だけ?(笑)まぁ注意書きがない製品は論外ですね。さぁ注意書きもピックアップできたし、次はいよいよデザイン描くぞ~!※画像は発熱剤で調理するなべ「サポット」の注意書きです。続く・・・
開発秘話⑫「池やんに誘われて・・・」”発熱剤”という名前ですから熱を発するのは当たり前なのですが、「どのくらいの熱が出るのか?」「いつまで熱が出続けるのか?」温かいおにぎりを食べるためには、これが一番重要とも言えます。開発秘話⑦でもご紹介したように、日本より発熱剤に馴染みの深い現地生産工場の技術や、膨大なノウハウも共有してもらいつつ、国内での試験や評価なども実施していかなければなりません。そんなある日、いつも私の愚痴をスーッと聞き流すやり手銀行マン「池やん」から一本のお誘いが・・・誘われてやってきたのは世界に誇る「京都大学の桂イノベーションセンター」こちらにある「京都高度技術研究所」さんでは”大学の知”と”企業の技術”の融合を目的として、私たちのような新産業を創出する取組を支援して下さいます。(驚)普段はただのお調子者ですが、時折キリッと大活躍してくれる「池やん」。いつも感謝です!その後も足繫く通い、「ホットプラス」の課題の克服や発熱剤についての的確なアドバイスも頂け、今では最高の技術サポーターという位置付けです。皆さんのおかげです。そんな技術の裏付けをもって発熱剤設計を続けるのでした。続く・・・