[誰もが打てるコンパクトな碁盤の誕生! No.5] ここで、携帯型碁盤を作ることになった母体、ブラインド囲碁サークルを紹介しましょう。私が、暮らしに時間の余裕だできてきた頃、この「ブラインド囲碁サークル」を立ち上げました。当初は6人ほどでスタートしましたが、日本福祉囲碁協会の方に指導していただいたり、噂を聞いた人たちが集まりだしたりで、何と7年経った今では、ブラインドの皆様が76名、指導者やサポーターの皆様が87名の計163名に達しています。人が人を呼ぶってすごいことですよね。もちろん、普段の例会に参加される皆様は限られていますが、時には富山県や香川県から、そして秋田県からも例会や合宿に顔を出してくださるようになりました。また、このサークルには、ありがたいことに日本棋院や関西棋院所属のプロ棋士10名の先生方にも入っていただいています。このように組織が大きくなり、まとめ役が必要だろうということで、事務局長として岡村が務めることになりました。このグループは、「ブラインド囲碁サークル東京」などと言います。略して、BIC東京、BIC富山…などと言います。ブラインドとは、まったく見えない人を指しますが、このサークルでは、あまり見えないあるいは見えにくいという弱視の方も含めています。このサークルは、会則も無い、会費も集めないというまったく自由で自主的なグループです。なぜなら、囲碁はとても紳士的なゲームであり、囲碁に関わる皆さんはとても紳士・淑女だからです。主な活動は、東京の高田馬場駅近くにある新宿社協視覚障害者交流コーナーを拠点に、週3回(月曜、水曜、金曜)の夕方まで例会を行っています。また、第2と第4金曜日には、日本福祉囲碁協会の皆様の協力を得て、初心者のための囲碁教室を開催しています。 このほかにも、新年会やお花見、暑気払い、忘年会、囲碁合宿などを企画していますし、全国レベルの囲碁大会にも年に2回ほどエントリーしています。 もちろん、現在はコロナウイルスの影響で、1年近くすべての活動を停止せざるを得ない状況です。(つづく)
[誰もが打てるコンパクトな碁盤の誕生! No.4] この碁盤は、MDFと言って、木の粉末を固めたもので作られています。手触りや材質的りは段ボール紙のようですが、かなりしっかりしている板です。この素材で碁盤を作れるのではと発想した山口さんは素晴らしいです。作業は、精密な設計図をデータ化します。次にレーザーカッターでライン部分を網のように切り取ります。これを、土台になるもう1枚のMDFに貼り合わせます。その後、カットした所を紙やすりで丁寧に処理します。これに、星などの印を付ければ完成です。さて、星は指先で触って分かるようにしましたが、材料は何を使ったと思いますか?それは、女性たちがネイルに使っているスワロフスキー社のクリスタルビーズです。ここに至るまでには、あちこちからいろいろなものを取り寄せ、やっとこれにたどり着いたのです。星には2,5ミリのビーズを、外側の印には2ミリのびーずです。こうしてできた9路盤、13路盤、19路の携帯型碁盤は、ブラインドの皆さん方にとても好評でした。ところがです。これを使っているうちに、不都合な点がいくつか明らかになってきました。それは、繰り返し使っているうちに、破損しやすいことがわかったのです。また、水分に非常に弱く、お茶がこぼれればもちろんダメですし、夏場の暑い日など、手に汗をかくと、汗が染み込んで柔らかくなってしまいます。紙のような素材ですので、これはやむを得ないことです。特にかみ合わせ部分が破損しやすい携帯型の碁盤を、製品として世に送り出すことはできませんでした。(つづく
[誰もが打てるコンパクトな碁盤の誕生! No.3] [携帯型碁盤が出来るまで]私が、初めてブラインド用の9路盤を手にした時のことです。「とても触りやすいし、何て軽い碁盤だろう!」と、それはいい意味での衝撃であり、心から感動したものです。この9路盤を考え、製作してくださったのは、大磯在住の囲碁ボランティア、山口晴夫さんと神奈川大学のファブラボの皆さんでした。それを知った私は、早速山口さんにお会いして、第1線をすっきりさせた9路盤に改良してもらいました。さらに、これと同じ素材で、ぜひとも13路盤を作っていただけないかとお願いしたのです。もちろん快く引き受けていただきました。これを作るに当たっては、何人ものブラインドの皆さんにも使ってもらい、最終的にとても打ちやすい13路盤が完成したのです。私の望みは、これだけではとどまりません。「もしかしてこの9路盤のようなものを、4枚パズルのように組み合わせれば、19路の碁盤ができるのでは…?」とイウアイディアが浮かんだのです。これを山口さんに伝えたところ、この突飛な考えにも対応していただいたのです。半年以上試行錯誤していただいた結果、私の願いがかないました。もちろん、ここに至るまで、何度も打合せをしました。山口さんには大磯から東京まで来ていただいたり、私が大磯まで伺ったりもしました。組み合わせ部分をどうするのか、ラインの太さはどうかなど、0,1ミリ単位で調整してもらいました。この碁盤は、4分の1の大きさでしまえますので、持ち運びに非常に便利です。これが完成した時は、多くの皆さんから注文が相次ぎました。(つづく)
[誰もが打てるコンパクトな碁盤の誕生! No.2] (つづき) 黒石が見えづらくなってからは、白っぽい碁盤を使ったり、照明で明るくしたり、何とか工夫しましたが、残念ながら続けることができませんでした。 その後、30年以上経ってからブラインド囲碁に出会ったのです。本来、目で見てする囲碁ですので、手で触れてするなどとてもできるものではないと思っていましたが、周りの方に勧められるままに少しずつ打ち方に慣れて、今では19路盤で対局を楽しめるまでになりました。このブラインド囲碁は、黒石の中央に凸点が付いているので、黒石と白石の違いがわかりますし、手で触れても石が動かないように工夫されている碁盤です。 ところがこの碁盤で囲碁を打つとなると、大きな荷物にして、私たちが持参するしかありません。そこで考え出されたのが持ちやすい携帯型の碁盤です。 これは、パズルのように4枚のピースを組み合わせれば、42センチ四方の19路の碁盤になるというものです。 この碁盤を使えば、視覚障害者のみならず、指先が周りの石に触れて石を動かしてしまうのでは…?と心配されている方にも安心して対局を楽しんでいただけます。 また、目が見える方はもちろんのこと、聴覚障害の方とも打てますし、言葉の通じない外国の方とも打つことが出来ます。まさにユニバーサルデザインの碁盤です。 ぜひともこの碁盤が製品化され、いろいろな方と囲碁を楽しんて打てるようになることを願ってやみません。詳しくは、以下のURLをご覧ください。ブログ: 視覚障害者も打てる携帯型碁盤を作る会https://ameblo.jp/keitaigoban/entrylist.html(つづく)
私たちのプロジェクトページをご覧いただいている皆様へこのプロジェクトは、あと17日となりました。本日より、ブラインド囲碁の魅力と、この携帯型碁盤の必要性、プロジェクトを立ち上げた経過などを書かせていただきます。少しずつ書き加えていきますので、その都度ご一読いただければ幸いです。なお、ブログの方には、「見えずとも歩み続ける私たち」という連載記事も載せてありますので、そちらもどうぞご覧ください。https://profile.ameba.jp/ameba/keitaigoban/[誰もが打てるコンパクトな碁盤の誕生! No.1] コンパクトになる碁盤で囲碁のバリアフリー化を! 視覚障害者も打てる携帯型碁盤を作る会代表 岡村晴朗 「あなたはどんなゲームが好きですか?」と聞かれたら、ほとんどの方が、スマホなどの画面を見ながら操作するゲームを思い浮かべるのではないでしょうか?これらは、もちろん最近出来たゲームですが、今から1000年以上も前から人々の間で楽しまれ、現代にまで引き継がれているゲームがあるんですよ。何と1000年以上もです!それは囲碁です。私はこの囲碁が大好きです。 囲碁は、一般的には難しいと思われているようですが、実は簡単なんです。では一言で説明してみましょうか?「相手の石を閉じ込めて、石を取ったり取られたりしながら、最後は囲った敷地の広さで勝敗が決まるんです。」 どうでしょう?お分かりになりましたか…?これだけで分かるはずがありませんよね。碁盤の交点に、黒石と白石を置きながら、知っている方と打ってみないと説明を受けたことにはなりません。囲碁のルールはとても簡単ですが、打つ手は無限とも言われるくらい非常に奥が深いんです。だからこそ現代にまで引き継がれているんだと思います。 私は、30代の頃、職場の仲間から囲碁を教えていただきました。奥が深くて、なんて面白いのでしょう。この囲碁を生涯の趣味にしようと思ったほどですが、たった3年であきらめざるを得ませんでした。それは黒石が見えづらくなったからです。(つづく)