(現在の観音堂が建立されるまで仏像を収めていた旧観音堂) 株式会社文化財マネージメントの宮本です。今回一緒にクラウドファンディングに臨んでいる、観音堂付近の住民を代表して山岸厚子さんからコメントをいただきましたので、掲載します。 建穂に住みついてから、七十年が経とうとしている。観音堂の近くということもあったが、何かと行事あるごとに顔を出す事が多かったと思う。物心ついた頃は安倍郡服織村建穂という地名で、100%近くが農家で50軒足らずだった。現在は静岡市となって農家は少なくなり、700軒位と聞いている。 昭和50年には観音堂を新築する事になり、資金獲得に周り、町内会と有志の浄財によって完成された。今まで60体もの仏像が人目にふれることなく眠っており、地元に住んでいてもいつも見られるということではなかったが、これでようやく世間に広める第一歩となった。落成式には子供会で神輿をかつぎ、村中を練り歩いた事が懐かしい。 平成二年の藁科図書館での展示会では、一ヶ月で7000人近く入場者があった。その後、浅間神社や清水のフェルケール博物館での展示会も大盛況だった。 平安時代、鎌倉時代の作品と言われる仏像もあり、過去に火事、盗難にあいながらも今でも60体を守ってきた建穂の地元の人達を誇りに思う。又後世に引き継がなければならないという気持も強くなった。 山岸厚子
(吉備文化財修復所で修復された阿弥陀如来坐像) 株式会社文化財マネージメントの宮本です。 今回のクラウドファンディングで、仏像の修復を担当していただく「吉備文化財修復所」代表の牧野隆夫さんから、以前の投稿に引き続きコメントをいただきましたので掲載します。 ②建穂寺の今までに修復した仏像について 吉備文化財修復所では、現在までに建穂寺の仏像4体を修復しました。いずれも木造の不動明王立像(鎌倉時代/静岡県指定文化財)、不動明王立像(平安時代/静岡県指定文化財)、阿弥陀如来坐像(鎌倉時代/静岡市指定文化財)、大日如来坐像(平安時代/静岡市指定文化財)です。 これらは県や市の指定文化財になっており、公的な助成を受けられましたが、それでも管理する町内会には半額から4分の1程度の自己負担金が必要でした。それぞれに修復時のエピソードがありますが、ここでは阿弥陀如来坐像について簡単に述べてみます。 このお像の修復前は写真のように、台座は蓮華しか残っておらず、光背もありませんでした。 (修復前の状態) 修復後の写真と見比べた時、ずいぶん変っていることにお気付きでしょう。 (修復後の状態) 台座や光背を新しく造った?いえ、実は安置されている壇の下の戸棚には、仏像に関連する部材がバラバラになったまま沢山保存されていたのです。 (棚下から出て来た数百点の壊れた部材) その中からこのお像に関連するものを選び出し、復元しました。 (台座の復元 新しい木の部分はすべて復元箇所) 台座は段ごとに小さな材料の寄木で造られ、積み重ねるような構造になっています。残されていた部材は全体の6〜7割でしたが、さいわい全ての段ごとに何かしら残っていたため、完全な復元が出来ました。光背もこの台座のホゾ穴に当てはまるものが残されていました。 このように、お像だけでなく150年の間護り続けられていた台座や光背も、当時の姿に修復し整えることで、拝観する方々はこのお像が安置されていたお堂の内部の様子を想像し、「幻の寺建穂寺」の在りし日の全貌により強く思いを寄せることができるのではないでしょうか。
株式会社文化財マネージメントの宮本です。 今回のプロジェクトを、超宗派仏教徒によるインターネット寺院「彼岸寺」に取り上げていただきました。 記事は、「おてらおやつクラブ」事務局長を務めるなど多彩な活動をなさっているお坊さん、桂浄薫さんがご執筆くださいました。私や建穂寺の地元の方のコメントも寄せております。ぜひご一読くださいませ。 【第二弾は静岡】仏像修復クラウドファンディングを成功させよう! https://t.co/R1pBj3hdVk
株式会社文化財マネージメントの宮本です。 今回のプロジェクトに関する記事が、『新潮45』2016年8月号(7月19日発売)に掲載されます。http://www.shinchosha.co.jp/shincho45/ 「シリーズ日本を修繕する3 「仏像修復」から地域社会を再興する」という記事で、大宅ノンフィクション賞を最年少の26歳で受賞するなど多くの実績がある、気鋭のノンフィクション作家、稲泉連さんが執筆してくださいました。 今回のクラウドファンディングで仏像修復を担当していただく牧野隆夫さんの30年にわたる仏像修復の取り組みとともに、最新かつメインの事例として、建穂寺や今回のクラウドファンディングについて、取り上げていただいています。 私も「助手の役割をする坊主頭の宮本晶朗」として登場しており、仏像修復とクラウドファンディングについてしゃべっています。 タイトルのとおり、仏像修復と地域社会を考える上で、大変素晴らしい記事です。ご一読いただけると幸いです。
(吉備文化財修復所にて、平成24年度建穂寺阿弥陀如来坐像修復打合せ、左が建穂神社観音堂評議委員会の佐藤四郎氏、右が牧野隆夫氏) 株式会社文化財マネージメントの宮本です。 今回のプロジェクトで、仏像の修復を担当していただく吉備文化財修復所・代表の牧野隆夫先生から、コメントをいただきましたので掲載します。何回かに分けてupしていきたいと思いますので、お楽しみに! ①自己紹介と建穂寺との出会い 仏像の修復を中心として文化財の修復をしております吉備文化財修復所・代表の牧野隆夫です。当修復所の活動は、ホームページや拙著『仏像再興』(「山と渓谷社」刊)、最新情報はFacebookでもご覧頂けます。 建穂寺との最初の出会いは、静岡市が仏像の保存修復に本格的に取り組もうとし始めた平成8〜9年頃、市の教育委員会の方から相談を受け、訪ねた2ヶ所の内のひとつが建穂寺観音堂でした。それほど広くもない観音堂の中には、壁面のガラス戸棚にそれこそ折り重なるように仏像が安置されており、その数に驚かされたものです。 その時は、明治時代の売買裁判で有名になった入り口の両脇に立っている仁王像の調査が主体で、時代を判別するために安置した部屋の壁面と脚立によじ上り、3mもある仁王像から大きな頭を外したのが、懐かしい思い出です。頭部の首枘部分に江戸時代も半ば以降の銘文が陰刻されており、意外と新しいことに驚かされました。 その後、興味をもたれた各方面からの調査も進み、市や県の指定文化財になる像も出て来ました。現在まで何体かの修復にたずさわって来ましたが、こちらから出掛けるだけでなく、その間地元の方々も修復の視察に工房まで何度も足を運ばれ、仏像修復をきっかけとして「幻の寺 建穂寺」の将来について、少しずつ考える機運も出て来ました。 今回のクラウドファンディングによる新たな試みが、地蔵菩薩像の修復に止まらず、観音堂の仏像保存のための新しい動きになることを強く望んでいます。