【毎日更新】第37回『LOVE IS [NOT] DEAD.〜おやじパンクス、恋をする〜』 再び店に現れた俺らに、おばちゃんはちょっと怯えた顔を見せた。口では「あらあ、いらっしゃいませ」とか言いながらも、その表情はしつけえ新聞勧誘員を見るような感じだった。 まあ、そらそうだよな。さっきたらふく飯を食った客が、三十分もしねえうちに戻ってきたんだから。 「お茶でもしようと思ったんだけど、他に店がなくてさ」ボンが言って、おばちゃんはちょっとだけ安心したような、疲れた笑みを見せた。見れば既に客は誰もいなくて、皿とかもすっかり片付いてて、おおかたもう昼休み気分だったんだろう。 何か文句つけに俺らが戻ってきたわけじゃないって事がわかったところで、招かざる客だってのに変わりはねえってわけだな。まあ、いいけど。 おばちゃんがメニューを取りに厨房の中に消えている間に、俺たちはまた店の奥まで進んでいった。俺と涼介はさっきと同じ場所に座ったが、ボンとタカは向かい側ではなくて俺らの右隣に、つまりいっこ隣のテーブルに座った。 いや、まあ、全員が窓の外を見ようってんだからこうなるんだろうが、カウンターでもねえのに四人が横並びで座ってるってさすがに不自然過ぎねえか? だけどおばちゃんはもうどうでもいいのか、お茶くらいなら自販機で買って飲めばいいのにっていう顔を隠そうともせず、面倒臭そうにメニューを持ってきた。 涼介は当たり前にビールを頼みやがったが、置いてないってことだったので、結局アメリカンを四つ頼んだ。おばちゃんはそそくさと引っ込んでった。 ああ、どっちかっつうと丁寧な対応の店員って印象だったのになあ、人間、予想外の出来事があったときこそ素が出るもんだなあ。 まあいいや、そんなことより彼女の部屋だ。 赤いカーテンは引かれていたが、そこにできたちょっとした隙間から、部屋の中がかすかに、いや本当にかすかにって感じなんだけど、何とか伺うことができた。 涼介はあのバカの車の前で五階を見上げた時、隙間がまだあるってことまで見えてたんだそうだ。 「だってカーテン閉まってたら、エスパーとかでもねえ限り何にも見えねえじゃねえか」と、事前にそこまで確認していた事を自慢するように涼介は言ったが、「でも、いつ閉められるかも分かんねえよな」とボンに突っ込まれると、「念力で阻止する」とか訳分かんねえこと言いやがる。それこそエスパーじゃねえかよバカ。 まあ、実際いつ閉められるか分かんなかったが、とりあえず隙間はまだ健在だった。だけど、そこにはあのバカはおろか彼女の姿も見えなくて、誰もいねえ狭いワンルームが、DVDを一時停止したみたいな妙に心もとない感じで見えてるだけだった。「ほら、いねえじゃねえかよ」とタカ。 タカはどうやら、なんでか知らねえけど、もうこの話を終わりにしたいらしい。一番厳つい身体して、実際ケンカになりゃかなう奴はいねえんだけど、タカってのは妙に平和主義的というか、揉め事を避けたがる男だ。前に理由を聞いたことがあるが、教えてくれなかった。〜第38回に続く〜--本日はここまでです。少しでも続きが気になった方は、ぜひこのプロジェクトの「お気に入り登録」をお願いします。(登録していただくと、更新タイミングで通知が届くようになります)また、今回のプロジェクトでは、限定青カバー版(100冊限定)やオリジナルステッカー及びバッジ、著者と小説の舞台となったBARで飲む交流枠など、様々なリターンを用意させていただいています。ぜひチェックいただき、ご支援いただけますと幸いです。それでは、また明日。児玉ロウ






