前回の記事で、日本では畜産動物に対し世界では廃止の動きが広がっている狭いケージでの拘束飼育や過密飼育麻酔なしでの外科的処置、意識あるままの屠畜が未だに行われていると述べました。今回は絵本の主人公である「採卵鶏」(卵を産んでくれるにわとり)が日本でどのように飼養されているのかについて伝えたいと思います。◆オスひよこは生まれてすぐに殺処分される採卵鶏のオスひよこは卵を産めないので生まれてすぐに殺処分されます。ごみ箱に入れて窒息死・圧死させられたり、シュレッダーで生きたまま粉砕されたりします。多くは肥料や飼料の原料に使われます。メスひよこはつつき合い傷つかないよう、くちばしを切断されます。養鶏場の約8割がくちばしを切断(または切断された雛を導入)しています。痛みを伴い、うまく食べたり飲んだりできなくなるにわとりもいるそうです。くちばしの切断はデビークといい、世界的に廃止の動きが広がっています。◆多くのにわとりは狭いおりの中で、ただ卵を産みながら一生を過ごすメスひよこは、にわとりに育った後鶏舎へ移され、私達の食卓に並ぶ卵を産みます。養鶏場の約9割が、「バタリーケージ」という狭すぎるおりの中でにわとりを飼育しています。1羽あたりの飼養面積は通常B5サイズ程度かそれ以下で、こちらも世界では続々廃止されています。(ケージ飼育されているにわとりは全体の99%との調査結果もあります。)狭いケージでぎゅうぎゅう詰めのため、羽を伸ばすことも、歩くことも、飛ぶことも、隠れることも出来ません。(アニマルライツセンター提供)ケージの中では、採食行動(地面をつついてえさを探す)や砂浴び(羽毛の手入れと寄生虫対策)、止まり木での休息(高い場所で眠る習性)といったにわとり本来の行動も出来ません。隠れて卵を産みたいという本能がありますが、それも出来ません。養鶏場の約9割が、にわとりの欲求を満たす砂浴び場や止まり木、産卵箱を設置していないのです。退屈でストレスが溜まり、金網で怪我や骨折もします。多くのにわとりは、狭いケージの中で、まるで地獄のような一生を過ごします。にわとりが産んだ卵は、受精していない卵(無精卵)は食用として流通し、受精している卵(有精卵)は孵化させることでひよこになります。◆採卵期間を延ばすため、えさを抜かれる養鶏場の約5-7割が一定期間絶食させて産卵を停止させ羽毛の生え換わりを人工的に促す「強制換羽」を実施しておりそのほとんどが「絶食法」「絶水絶食併用法」で行っています。これにより、採卵できる期間が延びて、コスト低減につながるためです。人間の都合で、にわとりに多大な負担をかけているのです。(通常は、秋~冬にかけて2~4カ月間ほど休産し、その間に古い羽毛が抜け落ちて新しい羽毛に換わります)。(アニマルライツセンター提供)◆最期は拷問のような苦しみに苛まれる役目を終えたにわとりは狭いコンテナに詰め込まれ、食鳥処理場まで長時間運ばれます。採卵鶏用の食鳥処理場は数が少ないため、輸送時間が長くなります。運搬ケースで足がちぎれたり首が挟まって死んだりすることもあるそうです。(アニマルライツセンター提供)肉用の動物は、輸送中にストレスを与えると肉質に悪影響が及ぶため、一定の配慮が守られています。それに対し、採卵鶏は缶詰などの肉に加工されるだけで、肉質への配慮がないため、結果的にアニマルウェルフェアへの配慮が疎かになります。国内の約9割の食鳥処理場では、にわとりを生きたまま逆さづりにし、首(頸動脈)を切ります。(日本の鶏肉輸入先国では事前の気絶処理が一般的)(アニマルライツセンター提供)首を切るのに失敗し失血死できなかった場合は、生きたまま茹でられます。2023年には70万羽以上のにわとり(採卵鶏・ブロイラー含む)が生きたまま熱湯に入れられ全身やけどで死亡。その数は年々増加しています。受付時間内に屠畜が終わらなかったにわとりは狭いコンテナの中で身動きが取れないまま、処理場で長時間(12~72時間)放置されます。その間えさや水は与えられず、上から卵や糞が降ってくる状態。農水省、厚労省が過去に改善通知を出しているものの、未だに改善していないそうです。(アニマルライツセンター提供)◆にわとりは救われるのか採卵鶏は長年ケージ飼育が主流で、羽ばたきや砂浴びなどの自然な行動が制限されやすい / 肉質への配慮の必要性が少ない上、痛みで暴れても身体が小さいので人間への危害が少ないとの理由から畜産動物の中で特に、アニマルウェルフェアの観点で問題視されやすい動物です。このため、私はまず採卵鶏にフォーカスしてみたいと思いました。徐々にではありますが、鶏のウェルフェアには改善の兆しも見られます。令和7年度補正予算ではアニマルウェルフェア関連の補助金が含まれにわとりのガススタニング(ガスによる気絶処理)やケージフリーなどへの補助が強化されました。従来の補助金では難しかった、収益向上や規模拡大ではなく「アニマルウェルフェア向上」を目的とした畜舎改修や設備導入が申請しやすくなりました。アニマルライツセンターの話によれば、少しずつではありますがひよこの殺処分の改善が進んでおり複数の食鳥処理場がにわとりにとってより安楽なガススタニングの導入に前向きであるそうです。(日本種鶏孵卵協会はアニマルウェルフェアに配慮したひなの殺処分(安楽死)マニュアルを作成し改善を図っている)企業の側でも、ケージフリーの卵調達など、アニマルウェルフェアの目標を掲げる動きが少しずつ広がっています。アニマルウェルフェアには動物の苦痛軽減以外にも、実はさまざまなメリットがあります!こうしたメリットを政府や企業、畜産農家、消費者が理解すれば1羽でも多くのにわとりが狭いケージから出られ従来よりも安楽な最期を迎えられるかもしれません。アニマルウェルフェアに取り組むメリットについては、次の記事でまとめたいと思います。▼参考資料▼◆朝日新聞Sippo「日本では毎年約1億羽にのぼる 生後1日目に殺される採卵鶏のオスヒヨコ」 https://sippo.asahi.com/article/14737213 ◆アニマルライツセンター「#オスひよこの殺処分を廃止しよう」https://www.hopeforanimals.org/male-chicks/◆畜産技術協会 「採卵鶏の飼養実態アンケート調査報告書(2015年)」https://jlta.jp/test/wp-content/uploads/2023/12/factual_investigation_lay_h26.pdf ◆農林水産省「アニマルウェルフェアに関する飼養管理指針の取組状況に係る調査 (アンケート調査、2025年) 」https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/attach/pdf/animal_welfare-116.pdf◆アニマルライツセンター 「日本のケージフリー飼育の鶏の割合は1.11%、ケージ飼育が98.89%(2023年調査結果)」https://www.hopeforanimals.org/eggs/1percent-cage-free/◆Baur S, Rufener C, Toscano MJ and Geissbühler U (2020) Radiographic Evaluation of Keel Bone Damage in Laying Hens—Morphologic and Temporal Observations in a Longitudinal Studyhttps://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2020.00129/full◆アニマルライツセンター 「出荷時における鶏への暴力-関係機関の対応」https://www.hopeforanimals.org/eggs/482/◆枝廣淳子 「アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全」(岩波ブックレット、2018年) ◆アニマルライツセンター 「産業動物:と畜前の意識喪失の義務化」https://animallaw.jp/farmanimals/slaughter/?utm_source=chatgpt.com◆朝日新聞Sippo 「日本のずさんな食肉処理 70万羽の鶏が生きたまま熱湯に入れられた」 ※死亡数のデータは厚生労働省の食肉検査還元調査https://sippo.asahi.com/article/15539091◆アニマルライツセンター 「72時間放置する屠殺場も!農水省からの3度めの通知」https://www.hopeforanimals.org/eggs/there-is-a-slaughterhouse-that-abandons-chickens-72-hours/





