数年前に騒がれていた映画「セッション」をDVDで観る。「セッション」の物語は至ってシンプルで、音楽学校の鬼教師と、ドラムに熱中する男の子の話だ。 まず、大学で映画学科に在籍していたハタチ前後を思い出した。ろくに世間も知らず、仕送りで食っていたのに、自主映画を作っていっぱしの監督を気取っていた。 卒業後に声をかけてもらい、初めてプロの現場に助監督として参加した。監督きどりの薄っぺらなプライドは粉々に砕かれ、肉体的にも精神的にもボコボコにされた(給料は一ヶ月半で6万だった)。その経験が悔しくて「とにかく映像の仕事で食えるようになろう」ともがいた。29歳で東京を離れ福岡に移住する頃には、テレビのディレクターとして飯が食えるようになっていた。 「セッション」では鬼教師との紆余曲折を経て、男の子はドラムに回帰する。29歳で九州に渡った僕は、慣れない地で飯を食うことや、結婚生活に揉まれながら、気づけば37歳。なぜか今、映画に回帰している。 夢だけで生きてた「監督きどり時代」夢を捨ててとにかくプロになりたかった「ディレクター時代」が合わさって、今ひとつになりつつあるのを感じる。「映画で飯を食う」という楽しくも残酷な厳しい道である。 107分でこれまでの人生を振り返らせてくれた「セッション」は、僕にとって忘れられない作品になった。 ※※※※※※※※※※※※※※※※【映画「人情噺の福団治」九州先行公開情報】○KBCシネマ(福岡県)11/5(土)~11(金)連日朝10時より1回 ○別府ブルーバード劇場(大分県)11/12(土)~18(金)※12日夜13日昼・監督舞台挨拶あり上映時間・回数は劇場にご確認ください ○ガーデンズシネマ(鹿児島県)2017年1/2(月)~




