数十年は人が住めないとも言われていたものの、「お掃除(除染)が完了した」と2017年4月から飯舘村への帰村が始まった。村内のこども園、小中学校が再開され、飼育や米や野菜を作る営農再開も本格化した。避難した村民を呼び戻すために、校舎に運動場、プール、そして野球場やサッカー場のあるスポーツ公園が新設あるいは改修された。この年の村の当初予算は、なんと過去最高額の212億円。原発事故前の5倍だ。新設された交流センター「ふれ愛館」(11億円)、道の駅「までい館」(14億円)。各施設には著名な彫刻家の作品が飾られ、ブロンズ像は2体で3000万円。学校ではファッションデザイナーのコシノヒロコさんがデザインした制服が無料で配布され、給食費や教材費も無料だ。お金はどこから? ほかに使い道はないのか?映画『サマショール』では、報道では取り上げられない、村人たちのリアルな心情をお伝えしています。野田雅也(共同監督)
2月29日(土)より始まるポレポレ東中野での『サマショール〜遺言 第六章』の上映後トークゲストが決定しました!森達也さんをはじめ、豪華ゲストにご登壇いただきます。ぜひ劇場までお越しください。※トークは映画上映終了後、15分程度を予定しています。2/29(土)12:30の回上映後森達也氏(ドキュメンタリー映画『i新聞記者』監督/作家)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/1(日・映画サービスデー)12:30の回上映後鎌田慧氏(ルポライター) × 野田雅也(本作共同監督)3/2(月)12:30の回上映後堀潤氏(ドキュメンタリー映画『わたしは分断を許さない』監督)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/3(火)12:30の回上映後金平茂紀氏(ジャーナリストTBS報道特集キャスター)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/4(水)12:30の回上映後伊藤延由氏(本作出演者/元いいたてふぁーむ管理人)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/5(木)12:30の回上映後安岡卓治氏(本作編集プロデューサー/日本映画大学教授)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/6(金・映画サービスデー)12:30の回上映後豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/7(土)15:00の回上映後鈴木耕氏(一般社団法人「マガジン9」代表理事)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/8(日)15:00の回上映後今中哲二氏(本作出演者/京都大学複合原子力科学研究所研究員)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/9(月)15:00の回上映後川崎哲氏(ピースボート共同代表/核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/10(火)15:00の回上映後豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)3/11(水)15:00の回上映後長谷川健一氏(本作出演者/元酪農家)×豊田直巳、野田雅也(本作共同監督)※追加日程、追加ゲストなどの予定もあり!決定次第告知します
久しぶりに飯舘村の長谷川さんの自宅に泊めていただいた。2017年春の避難解除に向けて、村内宿泊ができるようになったからだ。長谷川家のある飯舘村前田の空間線量は、自然減とわずかな除染の効果で毎時0.8~1マイクロシーベルトにまで下がった。これは年間5ミリシーベルトの外部被ばく量に値する。長谷川花子さんが剥いてくれた福島市産の熟れた白桃をいただいたが、白桃ひとつを食べると、0.3ベクレルほどの内部被ばくになる。野菜も1ベクレルを下回る物が多いが(出荷制限は100ベクレル/キロ)、飯舘産の野生のきのこは、1万ベクレル/kgを軽く超えてしまう。村で生活するのは、法で定められた年間被ばく量1ミリシーベルトの5倍にあたる年間5ミリシーベルトに加え、放射性物質を含む食物を口にした分だけ、内部被ばく量も加算される。放射性物質の多くは尿で排出されるというが、取り込んだ分は体内でも放射線を出し続ける。生きている限り、被ばくし続けるのだ。そのことを熟知した上で、長谷川さんは村に帰るという。非常に重い選択だと思う。窓を開けると、汚染土を入れた山積みの黒いフレコンが、美しかった前田の風景を覆う。行き場のない汚染土の量は増える一方だ。「ずっとあの黒い山を眺めて暮らさなきゃいけないのよ」花子さんは二階の部屋の障子を、ピシャリと閉めた。その時に撮影した、障子を閉める花子さんの後ろ姿が、今回の映画「サマショール」のメインビジュアルである。ps.チラシ下段に使用した写真は、飯舘村飯樋の墓地で、土葬されたご先祖さまの土盛りが残っている。野田雅也(共同監督)
「お帰りなさい 首を長~くして待ってたよ」福島市から南相馬市へ続く国道399号線、飯舘村に入ると〝脱力系〟フレーズの看板が出迎える。看板に設置された線量計は0.27μSv/h、事故前の10倍の値を示す。「82歳の両親だけを帰らせることはできない」と福島市の借上げ住宅から1 家4人で帰村した浦住正喜さん(55)。20代の娘と息子は村には帰らない。「米作りの再開なんてとんでもない!、世界に汚染が知られた村の米を誰が欲しがりますか」事故前でも年金がなければ農業で生計を立てるのは苦しかった。「(1年後の)損害賠償の打ち切りで、被害者は貧困層になり、生活保護ですよ」避難生活を続けたくても、金銭面の問題で村に戻らざるを得ない人が出る。村に戻り営農を再開しても、作物は売れずに収入は途絶える。被害者たちが、加害者である国に養ってもらうことになりかねない。映画「サマショール」の中でも、村の草刈りをする男性が「収入なくては町では生活できない。 賠償が打ち切られれば村に戻るしかない」と生活の不安を口にする。「山に戻ってイノシシの顔でも見えるしかねえな」男性は苦笑いして草刈機のエンジンをかけた。野田雅也(共同監督)
チケットぴあにて、ポレポレ東中野での映画『サマショール〜遺言 第六章』の前売り券の販売を開始しました。https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2007373前売り券は1,500円です(一般当日券は1,800円)。ご購入はお早めに!※当日券の方がお安くなる場合がありますので、ご注意ください。 (大・専・シニア(60歳以上) 1,200円、高・中・障害者1,000円)※週により上映時間が変わりますため、開場時刻/開演時刻はポレポレ東中野のホームページにてご確認ください。※ご鑑賞当日、劇場窓口にて入場整理番号の受付をお済ませください。※前売り券1枚につき1名様に限り有効。入場前の切り離し無効。※ご使用なくとも払い戻しはいたしません。満員の際はご入場いただけない場合もあります。