私にはアパートが一棟と他に貸地があるのですが、もし私が認知症や疾病に遭った場合、その後のアパートの管理、土地の賃料管理や賃借人との定期借地契約の更新などに支障が出るのではないかと不安です。成年後見の場合・・・このような事例で成年後見人が就けば、引き続き就く前と同じような賃料管理をしてくれます。賃借人との契約更新にも相談者の不利益にならない限り、家庭裁判所への事前相談は必要ですがハンコを押してくれる可能性が高いといえます。今はまだ元気だけど、将来的に預貯金の管理、各種契約や手続きに不安がある場合、自身が信用できる人に任意後見をお願いしておくのも1つの有効な方法です。元気なままであれば、利用しないで終わりますので、そうなるのが理想です。損害保険と似ていますね。また、亡くなった後に備えて遺言も作っておけば、不安も減るのではないでしょうか。では、家族信託をした場合と成年後見では、どこが違うのでしょうか。ここでは、法定後見を措いて任意後見と家族信託を比較してみます。・賃料の配分の変更任意後見・・・本人の配分が減る場合には、家庭裁判所へ事前相談家族信託・・・ 家族信託契約の定め次第・土地の生前贈与任意後見・・・ 原則として不可家族信託・・・家族信託契約の定め次第・監督任意後見・・・ 任意後見監督人家族信託・・・必要な場合は信託監督人・老人ホームとの契約など任意後見・・・ 可能家族信託・・・受託者は出来ない・本人が亡くなったとき任意後見・・・任意後見人の仕事は終了家族信託・・・家族信託契約の定め次第一長一短の部分もあるので、どちらを選ぶか、何もしないか、2つとも利用するか、考えてみる必要がありそうですね。
私たちには、80歳になる母がいます。今はまだ判断力はあると思いますが、最近、認知症の症状が少し出始めているように感じています。母は一人暮らしで、私たちも近くに住んでいませんので心配ですから、施設に入所することになりました。しかし、施設暮らしで母の認知症が進むかもしれません。母の判断力がなくなると実家の売却の契約書に、母ではサインできないと思います。どうすればいいでしょうか?認知症になると・・・名義人のお母さんは判断力がないので、売買の契約ができなくなります。成年後見人を就けると・・・成年後見人が、本人(母)の自宅を処分する場合、家庭裁判所の許可が必要です。しかし、この許可は、「自宅を売却しなければいけない理由」がないとできません。例えば、施設費用に充てるため資金が必要、空き家の老朽化がひどい場合などです。単に「誰も住んでいないのだから、若い家族などに売ろう(貸そう)。」などの理由では、売却が難しいといえます。このように、お母さんの判断力がなくなると、実家が空き家になっても処分は難しいといえます。家族信託なら・・・お母さんが認知症になる前に、家族信託をしておけば、そのような心配は不要です。実家の売却手続きは、実家を託された娘さんが行います。お母さんの判断力がなくても問題ありません。売却したお金は、お母さんの収入になりますが、このお金も娘さんが管理します。お金の出し入れも娘さんがすることになるので、お母さんの判断力がなくても出し入れに困ることがありません。このように、事前に家族信託を設定しておくことにより、お母さんの判断力の低下に対処することが可能になります。※ただし、お母さんが判断力のあるうちに信託契約をしておく必要があります。
家族信託とは、暮らしを守るための信託です。信託銀行を通さなくても利用することができます。専門家に信託の契約書を作ってもらい、署名して印鑑を押せば完成です。一言で言うと、次のような契約になります。委託者【私】資産を誰かに託したい人受託者【あなた】資産を託される人受益者【あの人】資産を託されることにより、利益を受ける人 そして、受益者(家族信託により利益を受ける人)は何世代も先まで指定できるのです。例えば、設定時は自身が利益を受ける人。自分が亡くなったら配偶者。配偶者が亡くなったら、自身の子。その子がなくなったら孫・・・・というように何世代も先まで指定できます。皆様の家族はどうでしょう。本当の問題は何でしょうか。認知症が問題なのでしょうか。
・今までは、子どもに金融機関へ連れて行ってもらっていたけれど 運転免許を返納した、足が悪くて、などの事情があって子どもにATMに行ってもらってお金を下ろしてもらったり、窓口に用事があるときは、2人で行ったりということ、ありませんか。ATMで間に合う間は大丈夫です。今後窓口に用事がある場合はどうでしょう。怪我をしたら?認知症になったら?暗証番号を忘れた受益者の家族が、金融機関から本人を連れて来て下さいと言われた方がいます。皆さまはどうでしょうか。もし、亡くなった場合はどうでしょうか。葬儀費用などのまとまったお金は、残された人がATMに何回か走って引き落とすのでしょうか。・デメリット 家族信託にはデメリットはないのでしょうか。 家族信託を利用した場合、事業承継税制(非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度)が使えなくなります。所得の損益通算、損失の繰り延べが原則としてできません。社長が病気や認知症で、判断力がなくなってからでは、家族信託はできません。・家族信託をすれば、遺言は要らない? 家族信託が対象としていない財産については、遺言を書くことをお勧めしています。遺言でしかできないこと(遺留分減殺請求の順序、割合指定など)もあります。家族信託も全てに対応できるわけではなく、選択肢の1つです。
相談の中で多いのが、利用したいけれど利用できない、という状況になっていることです。特に、財産を託す親御さんの認知症が進んでいて家族信託の契約書を公正証書にすることが出来ない、という場合が多いです。相談に来られる方のうち、3分の1はそのような状態というのが肌感覚です。また、相談に来られた時には元気だったけれど、進めているうちに転倒などで入院し、そこから認知症などが進んでしまい利用が出来なくなってしまう、ということもありました。いざ、利用しようとしたら出来なかった、ということを1件でも減らしたいと思っています。