荒廃した奥地人工林を『低コストで管理できる森林』へ!

日本の林業は衰退に歯止めがかからず、里山奥地の人工林は管理がままならぬ事態へと陥っています。私たちは人工林に隣接する天然林から広葉樹の侵入を誘導し、放棄された奥地の人工林を効率よく天然林へと戻すことで、多面的機能が高く、「低コストで管理できる森づくり技術」の開発と普及を目指します。

現在の支援総額

1,560,000

173%

目標金額は900,000円

支援者数

145

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2020/10/20に募集を開始し、 145人の支援により 1,560,000円の資金を集め、 2020/11/30に募集を終了しました

荒廃した奥地人工林を『低コストで管理できる森林』へ!

現在の支援総額

1,560,000

173%達成

終了

目標金額900,000

支援者数145

このプロジェクトは、2020/10/20に募集を開始し、 145人の支援により 1,560,000円の資金を集め、 2020/11/30に募集を終了しました

日本の林業は衰退に歯止めがかからず、里山奥地の人工林は管理がままならぬ事態へと陥っています。私たちは人工林に隣接する天然林から広葉樹の侵入を誘導し、放棄された奥地の人工林を効率よく天然林へと戻すことで、多面的機能が高く、「低コストで管理できる森づくり技術」の開発と普及を目指します。

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5月後半 活動報告
2022/05/31 22:11

気付いたら5月も終わりですね!6月に入ると、いよいよ梅雨も本番です。熊野の梅雨は本当にずー-っと雨降りなので、カビとの闘いが始まります。2年前、ここに越してきたばかりのときは、何も知らずに押し入れを閉めきっていたところ、見事に色々な物がカビだらけになりました。現在、教育実習に参加しており、山へ行く機会が無かったので今回は平井集落の様子をお伝えしていきます。5月後半、平井では田植えが始まりました。かつては集落中に棚田があったそうですが、現在は集落中心部に残るのみです。丁度、研究林の庁舎を望むあたりに田んぼが広がります。周辺の集落と比べると時期がやや遅い気がします。何か特段の事情があるのか気になって聞いてみましたが、特に理由はなく時間が空いたときにやっているだけなのだそうです。棚田特有の歪んだ区画の田んぼも、山間部ならではの光景ではないでしょうか。見るだけなら美しい光景ですが、隅の方は機械が入れられず手作業で進めなければならないため、農家の方にとっては苦労に耐えない形のようです。夏のような日差しの日も多かったので、皆さん早起きして、涼しいうちに作業を進めていました。上の写真は、水を張った田んぼの土をなだらかにしているところです。もちろん田んぼにはカエルもやってきます。ここの田んぼは僕の家の裏なので、毎晩寝るときに聞いている歌声は、彼らの声かもしれません。体の小ささからは想像もできないような大きな声で鳴きます。アカハライモリも田んぼを這いまわっています。平井に来るまで見たことが無かった生物ですが、今となってはご近所さんですね。雨が降った翌日の朝は、道端をアカハライモリがのそのそ動いているので、歩くときは気を使います。アカハライモリは冷たい水が好きなのか、給水口の近くにうようよ集まっています。上の写真の黒いやつは全員アカハライモリです。互いにぶつかったり、一緒になって水に流されたりと、見ていて飽きません。もちろん、おたまじゃくしも沢山います。おたまは水底に止まっていて、時々物凄い速さで泳いでいきます。たとえ、その先に親カエルがいようとも、頭突きしていくので凄い度胸です。柚子の花も5月ごろに咲くのですが、撮ったと思ったらSDカードを入れ忘れており、気付いたときには既に散ってしまいました泣。ただ、今年もいっぱい花が咲いていたので、秋になればまた、集落中が柚子の香りで満たされることと思います。いつまでも続いて欲しい風景ですが、所有者の方々も高齢化が進んでいます。この写真を撮らせて頂いた方も、今年で86歳となり、「田んぼは最後かもしれない」と教えてくれました。過疎化の波が容赦なく押し寄せている現状を実感します。一方、こちらは集落のやや下の方にあるかつての田んぼ。去年庭に播いたパンジーの種が沢山芽吹いたので、みんなの目に留まるここに花壇を作るのだそうです。丁度、墓地の方へ行く道の途中に作っていたので、お盆に親戚の方々が集まってきた際には、目に留まるだろうと楽しみにされていました。お話によると、平井出身の方もこの活動報告を読んでくださっているそうなので、是非お帰りになられた際にはご覧になっていって下さい!今回は簡単になってしまいましたが、6月から本格的に研究活動を再開いたします。活動報告にも研究の進捗を載せてまいりますので、どうぞお楽しみに。


5月前半活動報告
2022/05/15 18:20

平井の田んぼGWもあっという間に過ぎ去って、気が付けば平井の田んぼにも水が張られていました。5月に入ってから雨が多いような気がしますね。早くも梅雨に片足を踏み込んでいるのでしょうか。早めに調査を始めておいて良かったと胸を撫でおろしています。田辺市 五味集落の田んぼ所変わってこちらは、平井から山をいくつか越えたところにある、田辺市五味集落の田んぼです。個人的に好きな場所の一つで、僅かな平地を使って田んぼにしている様子が、いかにも山村風景です。ここと比較すると平井は割と平地が多い恵まれた環境かもしれません。雨が多くなると、そこら中の段差から湧き水が噴き出す平井ですが、集落中央部にはちゃんと井戸もあります。それが、こちらの井戸で、集落の名前の由来もこの井戸だそうです。井戸は全部平らだろうと思うのですが、何と比較しているんでしょうね。深さが浅いのを平らと表現したのでしょうか…。謎です。天気が続いたときも、この井戸の水だけはたんまりと溜まっているので、生き物の結構棲みついています。ちょっと覗いてみましょう。まずトタンの下を見ると、カエルが隠れていました。夏になると日差しから逃げてきたカエルでごったかえす人気の場所です。4月以降、彼らの鳴き声が平井の夜を賑わせます。時々窓に張り付いて鳴いていることもあり、小さな体からは想像できない大きな音量に眠れないこともあります。続いて水の中を見てみましょう。ペットボトルで作った即席観察道具で撮ったので、見にくいですがアカハライモリがいますね。彼らは集落中の側溝をのそのそ歩きまわっています。雨の日や湿気が高い日は、道路まで上がってきて危うく踏んでしまいそうになることもしばしばです。名前の通り、お腹が赤いのが特徴ですが、今回は見せてくれませんでした。この他にも、普段はカニやヘビがいるのですが、この日は姿が見えず。居るときは山のようにいるのに、どこへ消えるのやら。不思議なものです。どんぐり経過実験に使うどんぐりが、いよいよ発芽の最盛期を迎えています。一時は全く芽が出ずどうなることかと心配していたのですが、無事実験を行えそうです。最初に発芽した個体から実に2か月近く経過しているので、発芽のタイミングはかなり個体差があるようですね。どんぐりの背比べなどと言いますが、結構マイペースで他人は他人というスタンスなのかもしれません。どんぐりの経過観察平井の茶摘み前回、研究林で茶摘みした葉っぱを乾燥させている様子をご紹介しましたが、集落の方々も八十八夜の5月2日の翌日、新芽を摘んでいました。折角なので、新芽を摘んでから茶葉にするまで、お手伝いしながら見学させてもらいました。まずは摘んできた新芽を煎ります。籠一杯に摘んできた新芽の緑が鮮やかですね。この時点で既にお茶の香りがします。摘んだ手にもお茶の香りが染みついていました。因みに、この時使った籠はヒノキ製とのこと。軽くて丈夫なので重宝してるんだとか。ただ、今はもう作れる人がいないそうなので貴重な一品です。結構な強火で煎っていきます。時間は15分弱。中華鍋でチャーハンを作る感じで、茶葉をかき混ぜていきます。煎り終わったら揉む段階になります。手揉みはかなり疲れるそうなので、写真にある専用の機会を使います。この機会の中に煎ったホカホカの茶葉を入れて、重しを置いて、機械にかき回してもらいます。揉み終わったら乾燥させて終了です。確かに馴染のある茶葉の形になっています。香りもよりお茶っぽくなっていました。最初に出てきた新芽を使ったお茶を一番茶と言って、高級品とされるらしいのですが、平井の場合は何回も摘んでいる時間が無いので、全て一番茶だそうです。「贅沢や!」と笑いながら教えてくれました。研究計画②さて、前々回に紹介した研究計画の続きです。前々回までの内容を振り返りながら進めていきたいと思います。従来のJ-C仮説を検証する場合の概念図母樹の近くは母樹と同種の実生がたくさん生えてきて、同種密度が高くなります。そこへ、この樹種を好んで食べる天敵が集まってくると、同種が育ちにくい環境が母樹周辺で発生します。同種が育ちにくい環境では、他種が侵入しやすいことになります。つまり、天敵と実生の関係性が、森林の多種共存メカニズムを作り出しているとするのが、J-C仮説でした。では、このJ-C仮説の効果(以後J-C効果とする)は、種レベルでしか機能していないのでしょうか?例えば、天然林を生息環境として好む生物が天敵だった場合、実生にとっては人工林の方が成長に適した環境になっていることが予想されます。実際に、昨年実施した広葉樹実生の生存率を天然林と人工林で調査した結果では、天然林が人工林よりもはるかに高い枯死率を示していることが分かりました。この差が、J-C効果における母樹からの距離(もしくは実生の密度)だけによるものなのか、それとも林相の違いも生存率に影響を及ぼしているのか?それが2つ目の疑問でした。※図は各プロットの枯死率をデータとして利用した(人工林:16プロット、天然林:8プロット)。枯死率の有意差の確認にはGLMMを使用。各個体の生死データ(0,1データ)を用いて負の二項分布を仮定し、調査プロットをランダム要因とした。結果、有意差が認められた(p=0.0263)。では、上の図における天然林と人工林の枯死率の差が、従来のJ-C効果だけが原因ではないことを示すためには、どのようにすれば良いでしょうか。そこで、ある母樹が人工林と天然林の中間位置に立っている状態を想定します(下図:この母樹は、周辺に同種の母樹がいない、孤立した個体であり、同種個体のJ-C効果が干渉することはないとします)。想定する母樹の状況。天然林と人工林の境界部分に孤立して存在する種の母樹を想定し、その周辺の同種実生が人工林と天然林に散布されている。ここで、もし母樹と同種である実生の生存率の変化パターンが、母樹からの距離or同種実生の密度だけで決まっているならば、上図における①と②において、実生の生存率の変化パターンは同じになるはずです。しかし、もし①と②で生存率の変化のパターンが同じでなかったら、それは従来のJ-C効果だけでは説明できない現象であると言えます。この仮説を検証するために一番手っ取り早い方法は、天然林と人工林の中央に孤立して存在する母樹を見つけて、その周辺の実生の生存率を調査。その結果を天然林と人工林で比較するという方法です。孤立して存在する母樹は意外に多く見つけられます。しかし、実生が解析に耐えうるほど分布していることが珍しく、自然条件下での検証は断念することにしました。代わりに利用するのが、昨年も実施した土壌を持ってきて実生を植える方法です。この方法であれば、別途準備した実生を用いることでサンプル数を稼ぐことができます。詳しく説明すると、孤立して存在する母樹を中心として、天然林と人工林の双方向に30m地点を設定します。次に母樹直下と各30m地点から土壌を採取し、別に育てた実生を植え買えるという手法です。土壌採取地点の図もちろん、この方法には欠点もあります。天敵は土壌菌類に限られてしまうことが欠点ですが、先行研究(Seiwa 2008)で、実生の枯死における菌害の強さが大きいことが評価されているため、今回は土壌菌類に限定することとします。また、ポットを用いた温室実験では、実生の枯死が発生するまでに時間がかかることがあるため、生存率ではなく成長量を観察対象とします。これからやろうとしている実験の仮想図(データはまだとっていません)一定期間経過後、各地点(人工林、天然林、母樹直下)の土壌で育てた実生の成長量を調査します。成長量は重量を用います。仮説を支持するような結果となった場合、上の図のような結果になると予想できます。従来のJ-C効果の検証で確かめられていたのは双矢印①の差です。つまり母樹直下と遠方で、実生の枯死率に差があるかどうかという部分が確かめられてきました。一方、本研究の仮説が支持する結果となった場合、双矢印②の部分にも差が認められるはずです。つまり、天然林と人工林の成長量の差が、母樹からの距離ではなく、林相の違いによって生じていることが確かめられます。そして、この差が従来の種レベルのJ-C効果では説明できなかった、現象となると考えています。以上が二つ目の実験計画でした!次回以降もどうぞお楽しみに!


4月後半 活動報告
2022/04/30 23:32

こんにちは!研究林ではお茶の収穫が始まりました!研究林庁舎では葉っぱが広げられ、お茶の香りが漂っています。爽やかな良い香りです!さて、今回は2022年春の実生追跡調査について書いていきたいと思います(なお前回予告していました研究内容については、都合上、次回以降へと延期させて頂きます)。実生追跡調査 2022春開始!2020年から始めた、春と秋の実生追跡調査。その2022年春の調査を開始しました!この調査では、広葉樹実生の生存率や成長量を、天然林や人工林、そして間伐強度別に比較するために行っています。今回の調査で間伐後1年経過後の様子が分かることになります。新しく調査地に入っていたヤマザクラの実生昨年の春は、ヤマザクラをはじめカラスザンショウやアカメガシワ、タラノキといった先駆種(台風などの撹乱によって生じた裸地に真っ先に入ってくる種のこと)が発芽しているのが確認されました。今年の春はどのような種が発芽しているでしょうか?昨年の調査でよく出現したカラスザンショウ(左)とアカメガシワ(右)現在までに1/4の調査を終えたところですが、今のところの肌感覚では、昨年の春と出現種に違いがあります。例えば、昨年たくさん生えてきたカラスザンショウやアカメガシワは、今年はほとんど新規個体が確認できません。また、昨年発芽が確認され既に大きく成長していた、カラスザンショウの個体も、枯死した個体がほとんどでした。一方、サクラの実生は、今年も新規個体が多く入って来ていました。大きく成長したカラスザンショウ(しかしこの春には枯死していた)カラスザンショウやアカメガシワと、サクラの違いはどうして生じたのでしょうか。僕は、種子の由来が異なるためではないかと考えています。カラスザンショウやアカメガシワは、何年も前に存在した母樹から散布された種子が、土壌中で「今か今か」と発芽のタイミングを待っていたところ、間伐という絶好の機会が到来し、昨年の春に種子が一斉に発芽。一方で、サクラは毎年、動物たちがせっせと種子を運んでくれるので、この1年間でも新しい種子が散布されたのではないでしょうか。そうであれば、カラスザンショウやアカメガシワは、間伐直後でのみ実生がよく観察され、サクラは毎年一定の新規個体が見られるというパターンを、説明できると考えられます。その証拠ともいえる場所があったので、ご紹介します。タヌキが広げるサクラの森タヌキの溜め糞に含まれるサクラの種こちらは、昨年の活動報告で紹介した、タヌキの溜め糞に交じっていたサクラの種子です。タヌキは雑食なので、昆虫や動物の死体から木の実まで様々なものを食べています。そうした食べ物の中に、サクラの実が含まれていたようで、種子の部分だけ消化されずに糞と一緒に散布されていました。この種子がどれくらい発芽するのか気になった僕は、この場所に目印を立てておき経過を観察することにしました。1年後見事に発芽したサクラ(赤丸)そして1年後、様子を見に行くと、なんと30個近い実生が発芽しているのが確認できました。固まっていた種子は、風雨の影響でやや拡散していましたが、確かに溜め糞の周囲で密集して発芽している様子が確認できました(写真・赤丸)。動物が森を広げている姿を実際に見ることができたので、非常に興奮しました!教科書で動物散布型の種子があるとは知っていても、それを実体験として見ることができる機会は滅多にないと思いません。研究林ならではの体験かもしれませんね。別の場所でもサクラが密生していた同じく、密生するサクラの実生他の調査地内でも、密生するサクラの実生が何カ所か確認されました。これらの実生を発見した場所も、風雨で偶然種子が集まるような地形でもないため、動物が食べた種子が糞と一緒に集積された結果生じたパターンだと推測されます。動物と植物の関係は、動物が植物を利用してばかりというイメージを抱く人も多いかもしれませんが、こうした光景を見ると、植物も動物を何とか利用できるように進化を遂げてきたのだなあと実感します。虫に食われているサクラの実生さて、こうしてめでたく芽が出てきたサクラたちですが、早速新たな敵と戦っている個体もありました。それが上の写真です。虫にお手本のような虫食い穴を開けられています。昨年1年間の観察結果では、春に発芽した実生の多くが秋までに枯死していることが分かりました。枯死因は不明なことが多かったのですが、この食害のように天敵の影響によって枯死してしまった個体も多かったのではないでしょうか。調査中に見つけたものここからは調査中に見つけたものをご紹介します。まず一つ目が、トチノキの実生です。トチノキは栃木の栃で、手のひらを広げたような大きな掌状複葉が特徴の木です。母樹レベルにもなると、両手がいっぱいになるほど葉が大きくなる種ですが、実生はまるで赤ちゃんの手のようにミニサイズで可愛らしいです。この個体もあと数mズレていれば、プロット内に出現した新規個体として記録できたのですが、残念ながら今回は調査対象外になってしまいました。トチノキの実生は、私の調査地では非常に珍しいので、頑張って欲しいです!トチノキの実生続いてはヒメシャラの巨木です。ヒメシャラと言えば、温かみ溢れる良い色の材が思い浮かびますね。材の美しさと同様、ヒメシャラは樹皮の美しさでも日本の森のトップ層に入っていることは間違いないでしょう。どんなに薄暗い森でも、ヒメシャラだけは一瞬で判別できます。サルスベリの木肌にも似ていますが、ヒメシャラはツバキ科、サルスベリはミソハギ科で異なります。名前の由来は、ナツツバキの別名であるシャラの木の花よりも、一回り小さい花を咲かせるためだそうです。調査中に見つけたヒメシャラの巨木そんなヒメシャラの巨木を調査中に見つけました。あまりの太さに周りの木が細く見えてしまいますが、周りの木も胸高直径30㎝程度はある立派な木です。あいにく、直径メーターを持っていなかったので、計測することができなかったのですが、大人二人でようやく一周できるぐらいの幹の太さでした。もはや、ヒメと言うよりも皇帝と呼んだ方がしっくりくるサイズですね。ナンテンの展葉続いてナンテンの展葉です。ナンテンは以前お話したように、奇数羽状複葉という一見複数枚に見える葉っぱの全体が、実は一つの葉っぱであるという特徴を持っています。そんな大きな葉っぱが春先に生えてくる場面は、どのようになっているのでしょうか?非常に気になりますよね!そう思って観察してみたところ、写真のようになっていました。確かに、枝のような部分も葉っぱのような部分(小葉)と一緒に大きくなっている過程が分かりますね。林道の進捗状況さて、林道の状況はと言いますと、職員さんのご協力のおかげで、調査プロットの一歩手前まで順調に進んでいました!雨が降るたびにぬかるんでいた部分も、段々と固まりはじめて道らしくなっていました。日の当たる時間に行けば、木漏れ日が適度に当たり気持ちの良い散策路のような雰囲気です!林道道が固まってくれば、空転したり滑ったりするリスクが減って、重機でなくても林道まで入りやすくなります。車が入ってこれるようになれば、より多くの人が簡単に研究林の調査地にアクセスできるようになります。職員さん方と皆様のご協力によって作られているこの道を通じて、より多くの人に研究林の活動を知ってもらえればうれしい限りです。地面が固まって車が入れるようになった林道どんぐりの状況さて、先月からぼちぼち生え始めていたどんぐりは、いよいよ本格的に展葉する個体も出てきました。子どものころから大人に引けをとらない、アカガシらしさを身にまとった実生ですね!1000個ほど播いて、4月末現在で発芽している個体は150個程度です。実験では240個ほど必要という計画にしているので、もうすこし発芽を待ってから実験に移りたいと思います。万が一、発芽率が悪く実生が足りない場合は、実験の反復数を調整するなどして対応していきたいと考えています。続きをどうぞお楽しみに!今回、どんぐりを播いてみると、個体によって発芽のタイミングがかなり違うことが分かりました。最初は、3個体ぐらいしか発芽してこなかったので、かなり焦っていたのですが、あとからあとから次々と発芽してきます。同時期に撮影したどんぐり実生の別個体「どんぐりの背比べ」なんて言葉がありますが、どんぐりの大きさにはそれほど違いがなくても、播いてみれば意外と違いがあるのかもしれません…?


4月前半活動報告
2022/04/16 00:26

こんにちは!桜が咲いたと思ったら夏みたいに暑い日が続いて驚きましたね。古座川も朝晩こそ冷えますが、昼は汗ばむ陽気でついついアイスを買って食べてしまいました。さて今回のトピックは前回の続きの春の花②と、実験計画のうち「仮説を立てるところ」までです!どうぞお読み下さい!1.クロモジまず一つ目はクロモジ。クロモジは僕の好きな香りの木トップ5に入る木です。最近は、スーパーでクロモジののど飴が売られ始めて知名度も高まってきているようですね。その香りの高さから、高級爪楊枝としても利用されていたので、ご存知の方も多いかもしれません。さらに遡って江戸時代になると、ヤナギと共に歯ブラシに利用される種でもあったようです。ちなみに、名前の由来は木肌にできる黒い斑点が、文字のように見えるので黒文字とのこと。さて、そんなクロモジの花が上の写真です。香りと似たように品のある可愛らしい花を付けますね。薄っすら緑がかった黄色い小さな花でした。香りは材の方が圧倒的でした。2.イロハモミジ続いてモミジの代表格、イロハモミジです。モミジと言えば紅葉を楽しむ種なので、秋のイメージばかり思い描いてしまいますが、しっかり花を咲かせます。赤い小さな花が群がって咲いている様子が上の写真です。葉っぱはまだ展葉しきっていないので、あまりモミジらしさがわかりませんね。イロハモミジの由来は、葉っぱの切れ込みを「イロハニホヘト」と数えたことだそうです。けど、そんなこと言ったら全部のモミジがイロハモミジになってしまうような…。それはさておき、「モミジ」の方の由来は何なのでしょうか。少し調べてみた所、草木が赤や黄色に変化していく様子を示す動詞「もみつ」の名詞形という説が多いようです。イロハモミジの属するカエデ属の「楓」は「カエルの手」に似ているから「カエルノテ」が訛ったという説があるようです。個人的には楓の由来の方がすきですね。3.ハウチワカエデカエデ属つながりということで、お次はハウチワカエデです。こちらも花は似たような感じですね。暗色系の赤といったところでしょうか。ハウチワカエデはイロハモミジより一回り大きい葉っぱで、なおかつ切れ込みが多いのが特徴です。写真の背景にイロハモミジも写っているので、比較しやすいかと思います。名前の由来にもなっているように、天狗の持っている羽団扇がこのハウチワカエデの形にそっくりです。因みに、天狗の団扇は天狗なら誰でも持てるわけではなくて、力を持っている強い天狗しか持つことが許されないそうです。材料は天狗の羽で出来ていて、奇数枚になっているとのこと。そういえば、ウコギ科のヤツデの別名もテングノハウチワです。ヤツデの方がサイズ的にも”それっぽさ”があります。4.モチノキモチノキは知らないという方も多いかもしれませんが、実は日本三大庭木の一つで特に関東以南では欠かせない木の一つです(因みに他の二つはモッコクとモクセイ)。樹皮からトリモチの原料が取れていたことが名前の由来です。トリモチは漢字で鳥黐と書くので、モチノキを漢字で書くと「餅の木」ではなく「黐の木」になります。見慣れない漢字ですね。現在では狩猟にトリモチを使うことが禁止されているので、庭木が主流な用途になっています。モチモチの木との関連は不明ですが、イラストのサイズ的に恐らく別種です。また、モチノキ科に多い特徴として、材が白く美しいことが挙げられます。ソヨゴもモチノキ科の一種ですが、木目が薄っすらとしていて澄んだ白をしています。皇族が儀式で使う笏はこのソヨゴで出来ています。そんなモチノキですが、花は結構可愛らしいです。ただ、クチクラ層の発達した分厚い葉っぱの影に隠れているので、あまり目立ちません。5月ぐらいまではひっそり咲いているそうなので、是非探してやってください!5.イスノキモチノキが出たので次はイスノキ。こちらも椅子の木かと思いきや、柞の木と書くらしく、この柞を九州の方言で「ユス」と呼んでいたのが訛ったという説があるそうです。面白いのは「ヒョンノキ」という別名をもっていることです。このヒュンというのは何なのかというと、イスノキによくできる虫こぶを使った遊びが由来だそうです。イスノキは枝に写真のような虫こぶがよく出来ます。この構造物は、ダニがこの中で生活するために樹木の形を変えたことで出来るものです。大きくなると片手では持てないぐらいのものも出てきます。この虫こぶは、中が空洞になっているので、適当に穴を開けて息を吹き込むと笛のように音がなります。それが「ヒョン」と聞こえるそうです。このイスノキは日本で最も硬い木の一つです。武田製材さん曰く、ウバメガシ、イスノキ、モクマオウが製材した中では一番堅かったとか。確かに、持ったときの重量感は他の樹種とは比べ物になりませんでした。その強度から、武術の木刀に利用されることもあります。6.メギメギは目薬にしていたことから「目木」となったドストレートな由来です。ややこしいのは、メグスリノキという別の種類の木があること。メグスリノキはムクロジ科カエデ属でメギはメギ科メギ属です。メグスリノキも本当に目薬として利用されていた木なので、困りものです。この理論でいくと、パルプ材に利用されている広葉樹は全部カミノキになりますね。ただし、メギにしかない特徴もちゃんとあります。メギは木材界屈指の黄色を誇る種です。武田製材さんお墨付きなので、間違いなく黄色い種と言えると思います。また、メギは別名「コトリトマラズ」と言い、枝に棘が多いことでも知られています。結構尖ったやつなんですね。その割に、花は大人しく咲かせていました。実験計画①仮説までさてさて、今年度取り組む実験の大筋が決まってきたので、今日は仮説のところまでご紹介したいと思います。取り組んでいる実験が明らかにしようとしている大きなテーマは、「なんで森に沢山の木が共存出来ているのか?」です。そんなの当たり前と思われるかもしれませんが、考えてみたら結構不思議な現象が起きています。まず、ある樹木が荒野に1本だけ立っていることを想定します。その状態で母樹からタネが散布されれば、その周りは同種の子ども達がすくすく育っていきます。結果、単一種によって構成される森が広がると予想できますね。では近くに別の種がいた場合はどうでしょうか。ここで重要になるのが、生存能力の差です。ある一定の環境下で、生存能力に差のある樹木がいた場合を想定します。初めのうちは、それぞれの種が、種子を散布して徐々に子ども達を遠くへ遠くへ拡散させていくと予想できます。しかし、長い時間が経過すると、段々と分布範囲に重なりが生じて競争が起こるようになります。競争が起こってしまうと、種間で生存能力に差があれば、競争に優位な種だけが生き残り、最終的には最も強い種だけが優占するはずです。しかし、実際の天然林の多くは、実に多様な種があふれています。なぜなのでしょう?そこで、単一種が優占する過程を抑制する謎の因子Xを想定します。生態学では、このXが何かということが議論になってきました。そんな折、JanzenさんとConnellさんが、ほぼ同時期(それぞれ1970, 1971)に、この因子Xは"特異的な天敵”の存在なのでは?と提唱しました。一体どういうことでしょうか?ある樹種Aの母樹の周りでは、確かに種子がよく散布されA種が勢力を広めていきます。しかし、そのA種を大好きな天敵がいたとしたら、どうなるでしょうか?A種がいっぱい生えているところには、天敵Aも集まってきますよね。もしくは、ご飯が一杯あるところでA種が増殖するかもしれません。そうなると、母樹の周りでA種が沢山生えている環境というのは、A種にとって生きにくい環境になってしまいます。図にすると上のようになります。母樹から離れるに連れて散布される種子の数(赤線)は減少します。しかし、母樹の周りには天敵が集まるので、生存率(青線)は母樹から離れるほど高くなります。この二つの要素をまとめて考えると、実生の定着率は母樹からやや離れたところで最大になり、母樹の周りには”空白地帯”が生まれます。一方この空白地帯では、天敵を異にする別種であれば定着することが可能です。つまり母樹の周りで、天敵により定着できない空間が生まれ、そこに別種が入りこんでくることで、結果として多様な樹種が共存できているという説です。この仮説は提唱者のJanzenさんとConnellさんの名前から、Janzen-Connell仮説と呼ばれています。以降、この仮説をJ-C仮説。また、天敵によって母樹の周りに及ぼされる負の効果をJ-C効果と呼ぶことにします。仮説①天敵の複合的影響さて、このJ-C仮説について、これまで様々な研究者が検証を行ってきました。そこで議論になることの一つが、「”特異的な天敵”とは何なのか?」という点。例えば、昆虫を食べる鳥、カエルを食べるヘビのように、ある種にはそれが大好きな天敵がいます。では、J-C効果を引き起こす天敵は一体全体何なのだろう…というのが一つ目の問いです。この点についても、下記のようにこれまで様々な研究が行われてきました。この中でも土壌菌類は、J-C効果を引き起こしている可能性を支持する結果が多く出ています。しかし、時として全く逆の効果が出たり、影響がニュートラルだったりと、一貫した結果が出ないことも事実です。 そこで、一つの天敵だけでなく複数の天敵の影響を総合的に評価してみることを考えます。草本植物で行われた先行研究では、地上部の昆虫による食害の有無が、地下部での土壌菌類と植物との関係に影響を及ぼしていることが示されていました。具体的には、食害がある場合は地下部の関係が互いに負の影響。食害が無い場合は互いに正の関係を示すことがあるといいます(Heizen et al. 2020)。このことから、天敵の複合的な影響を考慮することで、J-C効果が初めて認められる場合があると考えられます。そこで私は一つ目の仮説として、「天敵の複合的影響がJ-C効果を生み出している」を設定しました。仮説②J-C効果のスケール続いて仮説の2つ目です(ただし、こちらの仮説は詰めきれていないので、変更になる可能性があります)。注目するのは、J-C効果のスケールです。ここまで見てきたJ-C仮説を検証してきた実験は、すべて「実生と近傍の親木が同種か否か」という点について種レベルで注目していました。しかし、近年の研究(下図参照)で、同種でなくとも生態的特性が似ていれば、J-C効果が生じることが明らかになってきました。生態的特性とは、天敵に対する防衛策や1年間の成長スケジュール(展葉など)のことです。特に地上部の昆虫食害への対抗策の類似性は、天敵の共有度に関係するためJ-C効果と関わりが深いようです(Forrister et al. 2019)。ここで、次のようなことを考えてみます。まず、ある広葉樹Aの母樹が照葉樹天然林と針葉樹人工林の丁度中間に立っていると想定します。地形的な偏りが無ければ、この母樹の種子はどの方向にも、等しい確率で散布されるはずです。では、これらの種子に働くJ-C効果は、天然林でも人工林でも同じ強さになるでしょうか?天然林内に広葉樹Aと同じ樹種が多く分布する場合、天然林内は天敵がうようよいるため、J-C効果における負の領域ばかりになっているとも考えられます。その場合、異種で構成される人工林側の方が天敵が少なく生き残りやすい環境であることは想像しやすいと思います。 では、天然林内に広葉樹Aがほとんどいない場合ではどうでしょうか?先行研究をもとにして考えれば、例え異種であっても、生態的に似ている広葉樹が多く分布する天然林の方が、天敵が集まりやすいと考えられます。その結果、広葉樹Aの実生は天然林側で成長や生存の成績が悪化することが予想されます。そして、その効果は個体レベルのJ-C効果だけでは説明がいきません。つまり、広葉樹Aの実生に働いているJ-C効果には、ある1個体に働いているJ-C効果と、林相スケールで働いているJ-C効果の二つがあると考えられます。そこで、私の研究では、この林相スケールのJ-C効果が生じていることを検証していきたいと考えています。そのためには下のようなグラフが必要になるので、次回からは、その内容についてご紹介していきます。どうぞお楽しみに!


3月後半 活動報告
2022/03/31 22:57

今日の内容①花のご紹介②林業の補助金依存の原因今日は!暖かくなって一気に花が咲いてきましたね!特に今か今かと待っていたサクラは、一斉に開花してあっという間に満開になったので、びっくりしました。押し寄せる春が感じられて気分もウキウキします!(花粉さえなければ)。僕の好きな山頭火の俳句に「窓あけて 窓いっぱいの春」という句がありますが、今年の春はまさにそんな感じです。いろんなサクラただ、サクラはあまりにも有名なので、今日は敢えてあまり名前のあがらない木々の花をご紹介していきたいと思います。なお、紹介する樹種は和歌山のものだけでなく、都合で帰省している関東の樹種も含んでいます。1.アブラチャンまず、アブラチャン。名前からして面白い樹種ですよね。油+chian(瀝青:半固体の炭化水素)が名前の由来で、その名の通り木全体に油分が多めです。そのため果実や樹皮が燃料や整髪油に使われていたそうです。小さい花がポコポコ咲いているのが、これまた可愛らしい木です。2.ナツグミ続いてナツグミ(の蕾)。夏に実がなるグミ科グミ属なのでナツグミ。「グミ」自体は棘のある実を指すという説があるそうです。花は未だ咲いていませんが、蕾の形が面白かったので紹介しました。ちなみに実の味はそれほど美味しくないそうです。3.クマシデお次はクマシデの花(雄花序)。漢字で書くと「熊四手」。四手は果実の様子が紙垂(しで)に似ていことが由来だそうです。花は地味ですが、シデの中では一番大きな葉っぱを付け、実も大きくなります。それが「熊」部分の由来です。材は柄の部分などによく使われるそうです。また、シイタケ原木や薪炭材にも利用される樹種です。4.アセビこちらは御馴染みのアセビです。漢字で「馬酔木」と書く通り、毒があってシカも食べないので、林床でよく見かける樹木です。その毒を逆に利用して、かつてはトイレなどに実を播いて殺虫剤として利用していたこともあります。小さい個体が多いイメージですが、大きいものは5mぐらいになり、グネグネ曲がった独特の樹形は見ごたえがあります。アセビは花だけでなく、春の新葉も見ごたえがあります。赤く出てくる新葉が、森の中で木漏れ日を浴びる姿は、灯がボウっと点いているような光景です。5.ミツマタミツマタも群生地の光景が有名なので、ご存知の方が多いと思います。名前の由来は右の写真を見てもらえば分かる通り、枝が必ず三又に分かれる樹形です。先端まで綺麗に三又で分かれていますね。紙の原材料として使われていることが有名で、日本の紙幣もこのミツマタから出来ています。元々は中国・四国地方を中心とした国産ミツマタが使用されてきましたが、現在では生産者の高齢化に伴い9割がネパールや中国産になっています。林床に群生すると、黄色い絨毯が森に広げられたような光景になるので、人気の観光地となっています。6.コクサギコクサギは漢字で書くと「小臭木」。写真はコクサギの雄花です。コクサギは葉っぱの付き方が独特で、右右.左左.右右.左左.右右.左左という風についていきます。このような付き方は、他にサルスベリやケンポナシで見られるそうで、コクサギ型葉序と呼ばれます。クサギは葉っぱを揉むと臭いのが分かりましたが、コクサギから臭いは感じませんでした。ちなみにクサギはシソ科、コクサギはミカン科です。7.ヒュウガミズキヒュウガミズキは日向と名前についていますが、原産は近畿北部から北陸です。マンサク科トサミズキ属で、小さい黄色い花を沢山つけるのが特徴です。材などに用途はなく、だいたいが観賞用に植えられています。8.マンサク同じマンサク科のマンサク。タコみたいな花が咲きます。春先真っ先に咲くので、里に春を告げる花とされています。「真っ先に咲く」が「マンサク」になったという説もあるそうです。他に似たような花をあまり見ないので、一度見ると印象に残る形です。黄色いタコが空から降ってくるような光景が広がります。9.ボケボケは漢字で木瓜と書いて、「もけ」と呼んでいたのが訛ったとする説があります。梅や桃のように中国原産のバラ科植物で、華やかな花を咲かせるので人気ですね。実は果実酒にも利用されるらしいです。10.カツラの葉っぱ最後はカツラの葉っぱです。今日のタイトル写真にもなっています。カツラはハート型の丸っこい葉っぱを付ける落葉樹で、秋ごろに甘い香りを放つことで有名です。春には写真のように丸っこい小さな新葉がたくさんついていて、これまた春らしさを感じさせる光景です。-----------------------------如何でしたでしょうか。春の花というと、サクラばかりに目が行ってしまいますが、それ以外にも綺麗だったり可愛かったり面白い花があちこちで咲いています。また、カツラの新緑のように、花以外にも春の訪れを知らせてくれるものもあります。そういえば北海道の春は、落葉樹が新緑を一斉に付けるので、花よりも葉で春を感じていました。皆さんの周りにも、何か面白い春ならではの光景があったら是非教えて下さい!林業の補助金依存の原因参考:「林業は所有者を犠牲にしてきた」 元農水官僚の独白 日経さて、前回からの続きで日本経済新聞が3回に渡って連載していた「日本林業の課題」の最終回を読んでいこうと思います。今回の記事で面白かったのは、日本の林業がなぜ補助金に依存するようになってしまったのか、その原因について触れられていた点です。これまで、あまりこの部分に言及している文章を読んだことが無かったので、面白く読めました。早速、その点について見ていきましょう。記事では補助金依存の根本的な原因は、日本の森林政策が「林業が儲かる」という前提のもとで、「森林資源の保護」に重点が置かれていた点にあると言います。たしかに、高度経済成長による旺盛な住宅需要に支えられ、1980年代まで儲かることが当然だった林業を管理するのに、産業的な努力を促す方向ではなく、開発を制限することの方が重要であるのは理解できます。しかし高度経済成長期が終わり、1980年以降になると、安く均質な外材に押されると同時に、建築手法の変化なども相まって、国産材の産出額が落ち込み始めました。このタイミングで、「林業」を産業として発展させる方向へ、林政の舵を切るべきでした。しかし実際には、それまでの「森林整備」を重視する政策が続けられ、どうしたら「儲かる林業」が可能になるか、という視点が欠けてしまいました。その結果、一定の制限を守る森林経営に対し、補助金が支給される構造だけが残ることになったのです。ただ、森林整備に主軸を置くことは悪いことではありません。例えば、「森林経営計画」(行政の森林経営計画に則り、森林所有者等に5年ごとに策定することが求められる)では、伐採量の上限が設定されることにより、森林の乱開発を防ぐことができます。しかし、市場の木材需要の変化に応じて増産しようとすると、制限を越えるために補助金が支給されなくなるという弊害も生じます。そのため、変化する市場に対応するか、安定して確実に得られる補助金に頼るか。この二択を迫られた際に、後者を選ぶ森林経営者が多くなるという事態が発生するのです。これが林業の産業的発展を妨げる一因になっているといいます。今後の指針問題だらけの日本の林業。では、これからの森林経営はどうあるべきなのでしょうか。今回のインタビュイーである針原寿朗氏(現住友商事顧問で林野庁林政部長や農林水産審議官等を歴任)は、森林の持つ多機能性に目を向けるべきだと主張しています。この点には私も同意します。現在、森林を使った主な経済的収入源は木材生産しかありません。しかし森林は、もっと大きく基盤となる部分で、生態系サービスを供給し人々の生活を支えています。水源涵養や大気の平準化作用、生物多様性保全機能などです。こうした生態系機能としての価値を、金額化することで「林業」という作業に多様な経済価値を見出すことが出来ると私は考えています。こうした利益によって補助金よりも大きな収益を出すことが出来れば、木材生産でも市場の変動により沿った経営がしやすくなるのではないかと考えます。また、他の機能からも収入を得ることで、木材生産とその他サービスとのトレードオフも生まれるため、補助金が無くても森林保全の配慮が必要になります。実際、こうした林業の在り方がスイスでは実践段階にあるといいます。森林管理を怠ることによるリスクを金額化して、その不利益を被る企業や自治体に提示する。そうすることで、林業への投資を積極化させ、林業の経済的価値を高めているようです。日本は災害大国であるため、こうしたモデルから見習うべき点も多いのではないでしょうか。今回は以上です!どうぞ次回もお楽しみに!


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