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荒廃した奥地人工林を『低コストで管理できる森林』へ!

日本の林業は衰退に歯止めがかからず、里山奥地の人工林は管理がままならぬ事態へと陥っています。私たちは人工林に隣接する天然林から広葉樹の侵入を誘導し、放棄された奥地の人工林を効率よく天然林へと戻すことで、多面的機能が高く、「低コストで管理できる森づくり技術」の開発と普及を目指します。

現在の支援総額

1,560,000

173%

目標金額は900,000円

支援者数

145

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2020/10/20に募集を開始し、 145人の支援により 1,560,000円の資金を集め、 2020/11/30に募集を終了しました

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荒廃した奥地人工林を『低コストで管理できる森林』へ!

現在の支援総額

1,560,000

173%達成

終了

目標金額900,000

支援者数145

このプロジェクトは、2020/10/20に募集を開始し、 145人の支援により 1,560,000円の資金を集め、 2020/11/30に募集を終了しました

日本の林業は衰退に歯止めがかからず、里山奥地の人工林は管理がままならぬ事態へと陥っています。私たちは人工林に隣接する天然林から広葉樹の侵入を誘導し、放棄された奥地の人工林を効率よく天然林へと戻すことで、多面的機能が高く、「低コストで管理できる森づくり技術」の開発と普及を目指します。

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12月前半活動報告
2021/12/15 23:53
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こんにちは!いよいよ12月になりましたね。今日は以下の3つのトピックです。・古座川町小森川集落 鯛釣り祭り・コウヤマキ人工林・研究報告 土壌処理実験それではどうぞご覧ください。小森川集落 鯛釣り祭り12月初頭、古座川町内ではイチョウやイロハモミジが所々で綺麗に紅葉していました。写真は平井とは別の支流である小川(こがわ)沿いにある田川集落というところのイロハモミジです。とても大きな個体が一本だけお寺の境内に生えているので、遠くからも目立っています。枝振りがとても立派で、力強いですよね!この集落のさらに上流に小森川という集落があります。平井のように川の最上流部に位置する集落で、現在はお一人の住人が暮らす小さな集落です。その小森川集落では12月5日になると、「鯛釣り祭り」という催しが行われます。海とはほど遠い山奥でなぜ「鯛釣り」なのか?由来は謎だそうですが、奇祭を一目見ようと小さな集落に大勢の人が集まっていました。鯛釣り祭り鯛は赤・黒・白の3種類があり、「3×9、27匹釣った!」と声がかかると参加者全員で「大漁、大漁!」と声を挙げます。なぜ27匹なのか?ということも不明だそうです。鯛釣りが終わると、「鳥打ち」「芋洗い」「猿追い」と神事が続きますが、「猿追い」以外は由来や目的が不明で謎に包まれたお祭りとなっています。元々は、小森川のさらに奥にあった「奥番」という集落で行われていた祭りでしたが、昭和17年に離村した際にご神体を小森川へ移したそうです。釣った鯛を数えているところさらにこの集落では、地元古座川の樹木医、矢倉甚兵衛さんが地域の固有種である「クマノザクラ」を起点に地域振興の拠点とすべく活動しています。クマノザクラは国内で100年ぶりに見つかったサクラの新種で、名前の通り熊野地域に分布する種です。周辺に交雑するような個体が存在しない小森川は、苗づくりに適した環境だそうで、「地域の宝を子ども達の世代へ残す」ため計画が進められています。この日はそうした活動を応援している地元の移動販売業の方も駆けつけており、普段は住人が一人しかいない集落に賑やかな笑い声が響いていました。地元のものをどう活かせば人が集まってくるか、小森川に起きている変化にヒントがあるような気がしました。コウヤマキ人工林先日、紀北のかつらぎ町へ行く機会があったのですが、道中にある標高1000mを越える護摩壇山付近ではうっすらと雪が積もっていました。和歌山は南国のイメージがあったのですが、山の方へ入ればやはり冷え込みが厳しいようです。尾根付近だと風が強いぶん札幌の冬よりも寒く感じることも…。雪が積もった護摩壇山付近の尾根目的地のかつらぎ町には以前から活動報告で度々出てきていたコウヤマキの人工林があります。コウヤマキの名前の由来になっている高野山の隣町なので、仏花需要が多いことが理由です。かつらぎ町のホームページでは、「コウヤマキを1枝供えると60種類の花を供えたことに匹敵する」と紹介されています。忙しい現代人にはもってこいの供花かもしれません?コウヤマキ人工林コウヤマキの人工林を実際に見るのは初めてでした。供花向けということもあって、材生産を目的とした一般的な林業に比べると、花卉園芸に近いと言えます。そういうこともあって、林内の様子もスギ・ヒノキ人工林と比べるとかなり異なっていることが分かると思います。コウヤマキ人工林(手前)とスギ人工林(奥)スギ人工林と比べるとこんな感じです。材生産を目的としているか、枝葉生産を目的としているかの違いがよく分かります。その意味でコウヤマキ人工林は、「農園」に近いかもしれません。枝葉生産ではシカの食害が致命的な被害をもたらすので、コウヤマキ人工林がネットで囲われているのも納得です。同じように供花として利用される樹種にはシキミやサカキなどがあります。どれも生命力が強く花瓶に差しても長持ちすることが特徴で、お供えした後にしっかりと姿をとどめておくことが選ばれた理由かもしれません。皆さんの地域でその他の樹種を使っているところがあれば、是非教えてください!また、どのコウヤマキ人工林も周囲のスギ・ヒノキ人工林と比べると樹高が低いことも気になります。このように樹高の差が激しい原因は、恐らく林齢の違いや管理方法の違いだけではありません。 コウヤマキは非常にゆっくりと成長する樹種で、十数年経っても人の背丈ほどということが多いといいます。一方スギは日本の樹木の中では成長スピードが速い方で、よっぽど環境が悪くなければ10数年で10m以上になります。早生樹の期待が高まる中でスギの優秀さを忘れてしまいますが、成長が早く通直で、乾燥・加工も容易という特徴は、拡大造林で選ばれるのも納得の優れた特徴のようです。樹形を比較するとこんな感じで、スギがモコモコなのに対し、コウヤマキはモシャラモシャラしています(※個人の感想です。ちなみにヒノキはパサパサ、モミ・ツガはガサガサ、マツはガラガラしています)。僕が大好きなコウヤマキ特有の香りは、立木の状態だと漂っていませんでした。切ったときに初めて香るようです。コウヤマキは以前紹介したように、世界三大美樹にも選ばれていて、放っておいても非常に整った形に成長します。写真は崩壊地に残った個体で、恐らく手入れされていないと考えられますが、それでも庭木のように水滴のしずくのような美しい形をしているのが分かります。こちらも放棄されたコウヤマキ人工林。やはり整った樹形の個体が多いですね。ひとりでに綺麗な形になってしまうのを見ると、確かに神秘的なものを感じるかもしれません。この写真も、人が並んでいような気配を感じるような…。葉を見てみると、こんな感じです。彼岸花が積み重なったような形をしています。1科1属1種の日本固有種という変わった植物で、似たような葉の付け方をする種は他にありません。材は耐水性と耐久性が高いと言われており、古くは棺桶や風呂桶、台所用品として利用されていたといいます。また樹皮は繊維質で防水性が高いので、槇肌と呼ばれ、井戸の壁に貼られたり船の隙間を埋めるのに使われたりもしたそうです。コウヤマキの葉さらに葉っぱをクローズアップするとこんな感じです。針葉樹としては比較的幅の広い葉っぱです。2枚の葉っぱが着合してこの形になったと考えられています。名前がよく似たイヌマキも比較的葉っぱが幅広い種ですが、コウヤマキの仲間ではなくてマキ科マキ属でナギの仲間になります。ついでにスギ・ヒノキと葉っぱを比べるとこんな感じです。雰囲気としてはマツに近いですね。ついでのついでに林内で見られる針葉樹には他にもこんな種類があります(下写真)。モミはクリスマスツリーで有名ですね。葉の先端が二又に分かれとげとげしているのが特徴です。ツガは国産のものよりもベイツガが建材としてよく利用されているので、ご存知の方も多いかもしれません。ベイツガに比べると日本のツガは針葉樹としては硬く、木目も綺麗なので高級建築材として利用されてきたようです。トガサワラは非常に珍しい樹種で、本州の紀伊半島南部と高知の魚梁瀬地方にしか分布しておらず、絶滅危惧II類に指定されています。こちらも高級建材として利用されていたようですが、市場に出回ることは滅多にないので見ることが出来たらラッキーです。他にもゴヨウマツやアカマツが見られます。ゴヨウマツは別名ヒメコマツで5本1束の葉っぱを付けることが名前の由来です。アカマツは尾根や崖などの貧栄養地帯に生えてきます。名前の通り、樹皮が赤っぽいのが特徴です。一方のクロマツは海岸や砂地を好むので海岸でよく見かける樹種です。コウヤマキ材コウヤマキ人工林近くの製材所では、コウヤマキ材が売られていました。中でも写真に写っている5000円の一枚板は店主によると曰くつきだそうです。写真からも分かる通り、この材は辺材部分が腐朽して無くなってしまっています。それほど長い間放っておかれたということになりますが、はたしていつ切られたのか?店主によると、戦時中、戦艦を作るのに材が必要になり強制伐採の対象になった山があるそうです。この材はその山に転がっていたそうで、切られたのにも拘わらず使われずに80年近く放置された材ではないかということでした(真相は不明です)。それを引っ張ってきて挽いたのがこの一枚板だそうです。挽いた直後はコウヤマキの良い香りがしたと言います。研究報告さて、研究報告の続きです。今日は土壌処理実験の結果についてご説明したいと思います。土壌処理実験では次の4処理の土壌を準備しました(実験開始当初は6種類ありましたが諸事情で4処理となりました)。これらの土壌に、アセビ、マンリョウ、ヤマグルマの実生を植えその成長量(葉の増加量)を比較する実験を行いました。僕の研究の仮説では、広葉樹の母樹群集である天然林内の土壌は、実生の成長に対し負の効果を持っていることになります。そこで次の予想を立てました。1.土壌菌類の負の効果は天然林内で強く働いており、殺菌処理の効果は天然林で顕著に現れる。グラフにすると下のようになります。また、アセビ、マンリョウは土壌を採集した場所に生息する種ですが、ヤマグルマは分布範囲が異なり調査地では1個体も出てきませんでした。そこで、もう一つ次のような予想を立てました。2.ヤマグルマは母樹群集内の土壌に天敵が含まれず負の影響を受けない。それでは結果を見ていきましょう。結果8月27日から9月27日までの1か月間の葉の増加量を比較したところ次のような結果となりました。まずアセビですが、殺菌によって葉の増加量が有意に増加していることが分かりました。しかし、その効果に天然林と人工林の間で差はありませんでした。つまり土壌菌類はアセビの成長に対し負の効果を及ぼしているものの、天然林内に特異的に存在してはいないと考えられます。予想とは異なる結果となりました。次にマンリョウとヤマグルマですが、処理間で差は見られませんでした。ヤマグルマに関しては予想の2を支持する結果となりましたが、マンリョウは予想と異なる結果となりました。原因として考えているのは、マンリョウの出現頻度が低かったことです。今回の調査では4000弱の個体を調査しましたが、その中でマンリョウは10個体だけでした。そのため土壌環境を形成するような力が無かったのではと考えています。以上の結果は、土壌菌類は群集内の一部の樹種に負の影響を及ぼしているが、その効果は天然林と人工林で差がないことを示唆しています。ただ、今回用いた樹種は採種時期の都合上、代表的な高木などが含まれていません。そこで今秋、活動報告で紹介してきたように様々な樹種の種子を採取しておきました。来年はこれらの種の播種実験を行いより説得力のあるデータを集めていきたいと考えています。どうぞお楽しみに!また、最終的な研究報告ですが、修士3年への進学が決定したため2023年3月ごろのお届けとなります。それまで中間報告を活動報告として紹介してまいりますのでご了承下さい。どうぞよろしくお願い致します。


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こんにちは!あっという間に師走になり、季節の変化に体が追い付かなくなりそうですね。和歌山の川湯温泉というところでは12月から、河原に日本最大の露天風呂が作られます。冷えてくると、そのぶん温泉が体に染みてたまりませんよね!去年はいけなかったので今年こそは行ってみようと思います!興味のある方は水着が必要なので忘れずに訪問してみて下さい!今日は以下のトピックをお届けします。1. 武田製材訪問記2. 研究林内 美術イベント「森のちから」3.能登ヒバ 楽器材への活用1.武田製材訪問記今月の中旬に、三重県の大台町というところにある日本一取り扱い樹種の多い製材所、武田製材さんを訪問しました。武田さんは10年以上前から、ありとあらゆる材を取り扱うようになり、今では100種以上の樹種を誇るそうです。武田さんと集めてきた多様な材お話を伺う中で印象的だったのは、名前を聞いたこともないような樹種にもしっかりと用途があることです。生活圏から見える山々がスギやヒノキばかりになってから久しいため、元々あった多様な樹種がどのように使われていたのか、町で生活しているだけではなかなか想像できません。しかし、ここ武田製材では、私達が使い道を忘れていた「その他の木」を求めて、全国から訪ねてくる人がいると言います。多様な樹種の価値が再認識される場所、そんな風な印象を受けました。武田製材のパンフレット武田さん曰く、「使えない木なんてなくて、結局は人の使い方次第でどんな木にも価値が出てくる」と言います。今回は、そんな武田製材さんで出会った珍し木材の数々をご紹介していきたいと思います(注:ここから先は趣味の世界です)。シャシャンボ(小小坊)まず到着して早々目についたのが、シャシャンボの大径木。シャシャンボはブルーベリーの仲間で佐世保の地名の由来という説もある樹種です。研究林にもありますが、両手を使えば簡単に握れるぐらいの太さのものがほとんどです。しかし今回見せてもらったものは、直径が20㎝近くあり、シャシャンボとしては見たことが無いぐらい大きな材でした。そもそも初っ端にシャシャンボを紹介して頂けるとは思っていなかったので、「この製材所はなんなんだ??」と度肝を抜かれました笑。シャシャンボの大径木沖縄の木さて、建物の中へ入っていくと所狭しと材が並んでいます。こんな中でも武田さんは迷わずに次々と木材を引っ張ってきて紹介してくれました。興味深かったものの一つに沖縄の木材があります。北海道で林学を専攻していた私にとっては、もはや異国ともいえる沖縄の木はなかなか個性的な木ばかりでしたのでここでもご紹介したいと思います。この中から次々と木を引っ張り出してきて紹介してくれました。しかもその一つ一つの用途も紹介して頂き、何時間でもいられる場所です!・デイゴまずはデイゴ。島唄の歌詞にも出てくるので有名かもしれませんね。注目して頂きたいのは成長輪(年輪)が見えにくいこと。成長輪は日本の場合、夏と冬の成長速度の差から形成される木口面の模様のことで、それが1年単位で形成されることから年輪と呼ばれています。しかし沖縄では、年間を通じて成長可能なため、年輪がはっきりとしない場合が多いことがあります。その結果、このように年輪がぼやけた材が誕生します。 また、デイゴは材が軽いことも特徴です。年輪のような模様がなく軽いことから、沖縄ではお面の材料として活躍しているそうです。・アカギ沖縄の木、お次はアカギです。名前の通り赤っぽい材が特徴です。しかしこの木が赤いのは材だけではなく、樹皮や果実も赤くなるそうです。耐久性が高いことから沖縄では家具材などに利用されていると言います。しかし本州以北ではほとんど流通しておらず、まさに希少材と言えるでしょう。因みにこのアカギ、小笠原諸島では外来種となっており駆除対象となっています。・ソウシジュ(相思樹 )次はソウシジュです。漢字で書くと何やら哲学的な雰囲気です。名前の由来は故事にあるそうですが、ちょっと長い話だったのでWikipediaのリンクを貼っておきます。ソウシジュはとても硬い木の一つで、建材、器具材、車両材などに利用される他、薪炭材としてもすぐれていたようです。また、枝葉は堆肥として優秀で、街路樹や防風林の木としても利用されていた木です。僕はここに来るまで知りませんでした。・フクギフクギは真っ直ぐ育ち15mほどにも達する木で、幹が固く葉が分厚く、さらに根も深いためアカギ同様、街路樹や防風林の木として沖縄で重宝された樹種です。また沖縄の伝統的な織物によくみられる黄色い色の染料が、このフクギの樹皮から取られていました。因みに漢字では福木と書き縁起も良いみたいです。 材は緻密で淡い黄色を示すそうです。建材の他、最近ではカラトリーの材としても人気が出てきていると言います。・モクマオウまだ沖縄の木が続きます。次は名前が厳ついモクマオウです。名前のイメージ通り?とても重い木で、武田さんとしては日本にある木の中で最も硬い木だと言います。 このモクマオウ、画像検索して是非樹皮や葉を見てもらいたいです!というのも、遠目で見るとマツのように見えて、実際に近くで見るとやっぱりマツのように見えます。ところがマツと近い種類というわけではなく、それどころか実は広葉樹という変わった種です。以前、広葉樹のように見えて実は針葉樹であるナギという樹種をご紹介しましたが、その逆のような存在の樹種です。・リュウキュウコクタン次はリュウキュウコクタンです。リュウキュウコクタンは日本では数少ない黒い材の取れる樹種です。材は非常に緻密で重く硬いのが特徴です。黒いのは心材部分で、辺材部分は対照的に白い材であるため、非常にコントラストの強い面白い色の木でもあります。このリュウキュウコクタンは沖縄の伝統的な楽器、三線の棹材として重宝されています。そのため、「リュウキュウコクタン 木材」で検索すると、三線店が端材を売っているという情報が出てきました。武田さん一押しの木・クロウメモドキ武田さん一押しの木です。それがこちらのクロウメモドキ。虹色のように輝く姿には私もすぐに虜になってしまいました。何でも最近、空前の木製ペン軸ブームが来ているようで、その材として探している人がいるのだとか。この先も随時更新していきます!2. 研究林内 美術イベント「森のちから」今月はさらに、美術作家の大矢りかさんが来林して、林内で製作活動を行いました!大矢さんが制作したものは、こちらの写真の船です。材料は全て研究林内で採取した落枝やコケ等で、1週間程度の短い期間でみるみるうちに造り上げて下さいました。こちらの作品は大きなトチノキに引っかかる形で作られています。トチノキは上へ手を広げるように大きく育つのが特徴の木で、その樹形も相まって作品の船が空高く飛んでいくような雰囲気を覚えました。そこで大矢さんに「この船はどこへ向かうんですか?」と尋ねたところ、「見る人の捉え方次第でどこへでも行きます」と答えて下さいました。なるほど、確かにこのままかつての筏流しのように川を下るのも冒険の始まりのようで面白いし、魚の遡上のようにまだまだ川上に行くのも精一杯の力を振り絞っている様子がして面白いですね。私個人は、実生の調査の中で、「樹木が私達には想像できないような熾烈な生存競争を経て巨大な体を手に入れているのだなあ」と、しみじみ感じたことから、生き残った個体の下で盆の送り火のように船が天へ舞い上がり、消えていった実生へ思いを馳せているように感じました。こちらの作品は12/10までの10:00~15:00の間、研究林内で一般公開されていますので、お時間のある方はぜひいらっしゃって想像を膨らましてみて下さい!3.能登ヒバ 楽器材への活用さて今月はニュースで知った能登ヒバの話題を紹介したいと思います。能登ヒバと言えば、活発なブランド材として度々新聞やニュースにも取り上げられるのでご存じの方も多いかもしれません。香りが強いことで人気があり、シロアリの防虫効果なども期待されている樹種ですね。 利用促進のための記事を読んでいると、比較的若い方の活動も多いことから、伝統的な産業と若者文化を掛け合わせた活動が積極的に行われているのかもしれません。今回紹介する事例もそんな活動の一つで、能登ヒバを楽器材に利用しようという取り組みです。プロジェクト名は「アテノオト」。「アテ」とは能登ヒバの林業樹種としての呼び方を指しているそうです。これまで能登ヒバが楽器材に利用されることはありませんでしたが、新しい価値を開拓することで県内林業の活性化を目指していると言います。実際、楽器材は他の利用方法に比べ付加価値がとても高く、武田製材さんでも果樹材の楽器材への利用が盛んになっているという話を聞きました。何でも果樹を支えるための果樹材の特性が、良い響きを作るんだとか。そういえば2020年のウッドデザイン賞の受賞アイデアの中にもあんず材を使ったウクレレがありました。果樹材を利用した木皿。最近では楽器材への利用も検討されている。今回の能登ヒバではエレキギターに応用しています。記事を読んでみると、能登ヒバを使うことで重量の軽減や中高音域の響きが良くなるなどの変化があり、現在試験的にプロの演奏家に利用してもらっている段階だといいます。また、エレキギターだけではなく和太鼓の試作も進められていると言います。能登ヒバはスギよりも曲げに強く、太鼓の胴を薄く加工することが可能になります。胴の厚みが薄くなれば、音の振動が伝わりやすくなるため大きな音が出るようになるそうです。人口減少に伴って住宅需要が減少する中で、どうしても建材の需要は長期的に落ち込むことが予想されます。従って、建材以外の分野で木材の価値を開拓しておくことは、長期的な林業の活性化につながるのではないでしょうか。その際に武田製材さんのような、多様な用途を知っている方がいらっしゃれば、きっと地域産材の利用促進にも貢献されるのではと思います。


11月前半活動報告
2021/11/15 23:47
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こんにちは!紅葉が見ごろの地域も増えてきた頃かと思いますが、いかがお過ごしでしょうか?平井では柚子の収穫が最盛期を迎えています。この時期は車で集落内を通るだけでも柚子の香りが香ってきて、秋の澄んだ空気と共に非常に清々しい空気が漂っています。森のちからⅫ今日はまず宣伝があります。和歌山研究林内でNPO 和歌山芸術文化支援協会(wacss) 主催の芸術イベントが行われます!今回は現代美術家の大矢りか様がいらっしゃって、研究林内の木を使った作品作りを行います!大矢様はある場に元々存在する素材を使い、その環境の中で製作することを流儀としています。そうすることで、その場にあることの意味を探ることをテーマとしている作家さんです。その場にある意味を探ると言う点では、木々の分布の原因を調べている本研究に通じるところがあるかもしれません⁈◎公開制作2021年11月15日(月)〜22日(月)場所:北海道大学和歌山研究林時間:10時〜15時(変更する場合もあります。)◎学校訪問アート・ワークショップ2021 年11月22日(月)対象:古座川町内の児童生徒◎アート・ツアー2021 年11月20日(土)対象:地域住民の子どもから一般成人まで場所:北海道大学和歌山研究林の森の中、本館参加費:100円◎聞いてみたい・語ってみたい「語りば」&アートワークショップ2021 年11月23日(祝・火)13時〜15時30分対象:子どもから一般成人まで場所:田並劇場参加費:100円ゲスト講師:大矢りか、南条嘉毅、ほか【アートツアーお申し込み先】NPO法人和歌山芸術文化協会(wacss)073-454-5858【現地お問い合わせ先】0735-66-0557(林)活動の様子などはFacebookのページからご覧いただけるようです。是非一度ご覧ください!今日のトピックさて、今日のトピックは以下の通りです!・平井の柚子・運材モノレール・研究進捗・COP26平井の柚子今年は研究林でも柚子の収穫をすることになったようです。折角なので作業の様子を見学させていただくことにしました。このように剪定ばさみを用いてとにかく収穫していきます。柚子の木は鋭い棘が付いているので、柚子畑の中でうっかり頭を上げてしまうと頭がツンツン刺激されます。去年お手伝いで初めてこの作業をやったときは、枝から切り離す際に柚子が地面へ落ちてしまうことが多かったのですが、地元の上手い方たちは全く落とす気配がありません。やはり何かコツがあるようです。運材モノレール今回収穫するのは下の写真の区画です。柚子畑は急斜面のところが多い中、ここは段々畑が綺麗に整備されていたので比較的作業しやすい場所だったみたいです。写真左下から蛇行しながら左上まで続いている線はモノレールの軌道で、収穫した柚子を運ぶのに活躍します。モノレールがなければ道路までの高低差を歩いて荷下ろししなければならず、労力軽減に多大な貢献をしている機械です。急傾斜地の運材と言えば、林業でも似たような話をきいたことがあるような…と思いますよね。僕もそう思って林業用運材モノレールが無いのか調べてみたところ、岐阜県の森林総研が2006年に開発を進めようとしていた報告がありました。報告によると運材でモノレールを利用する利点として、次の2点があるそうです。一つは設置の簡単さです。モノレールは支柱となる杭を地面に打ち込みレールを乗っけるだけで完成します。この手軽さ故、急傾斜地においては林道を敷設するよりも簡単に高密度路網が付けられることが利点になります。もう一つは、地面から浮いているという特性が地面の撹乱を最小限に抑えることです。こうした利点がありながら、報告が2006年以降に見られないことを見ると、実現に向けての課題が大きかったことが予想されます。和歌山研究林で活躍するモノレール2006年の報告で運材モノレールの実用化に向けた障壁として挙げられていたのは、一度設置するとレールが簡単に動かせないことでした。この欠点により折角設置した軌道も、その林分で作業がなければ数年間使われない期間が発生し、投資した分のコストを回収するのに長い時間がかかって効率的ではありません。では、使いたい場所にレールを敷き直そうとなった際、設置は簡単でも撤去には時間がかかるそうなので、折角のコスト効率を活かしきれません。そうなると、架線集材の方が良いという話になってしまうようです。上記の理由から普及しなかった林業用運材モノレールですが、使い方によってはまだ可能性が残っているのではないかな?と個人的に思います。和歌山研究林の実習で目玉となっているものの一つに林業用モノレールの試乗体験があります。やや不安になるようなひょろひょろの軌道で急傾斜地を登り、森林を駆け抜ける様子はなかなか迫力があり人気があるのも納得できます。そこで、林業で使うことの無い期間は、地域の観光資源として活用するという手もあるのではないでしょうか?実際、徳島県の祖谷では全長4600㎞の観光用モノレールが大人気の観光スポットになっています。普段は観光資源として使い、森林施業の時は貨物用として活躍する。といった使い道があっても良いかもしれません。もちろん全ての地域の路線での応用は不可能ですが、こういった林業モノレールの可能性もあるのではないでしょうか?エコツーリズム×林業モノレールに限らず、環境意識が高まる昨今、林業の作業そのものが観光資源としての可能性を秘めたものとして注目されてもおかしくありません。例えば、林業で栄えてきた歴史ある街に観光した際に、森の植樹体験や自身で間伐した木材で木工体験を行うなどのプログラムです。植林体験の様子観光に環境教育や持続可能性の教育を取り入れたこうした取り組みは、エコツーリズムと呼ばれここ10年程で広がった観光様式です。このエコツーリズムと林業を合わせることは、林業の作業に木材生産以外の新たな経済的価値を生み出すことにつながります。その結果、効率や生産量だけを重視するような粗悪な森林管理を抑えることになり、労災等の改善にもつながるのではないでしょうか?以前見学した吉野杉で出来たお宿。まさに地域の歴史や文化と林業、さらに観光を複合させたような宿泊施設でした!研究進捗9月から10月にかけて行っていた秋の毎木調査の結果がまとまってきたので、少しずつまた解説していきたいと思います。今日はまず広葉樹実生の枯死率からご紹介します。今年の春の調査から秋の調査までに枯死した広葉樹の実生の割合を比較したところ、有意に天然林で実生の枯死率が高いことが分かりました。このことは母樹の周囲で天敵が集まることによって、母樹と同種の実生の更新が困難になるというJ-C仮説を支持する結果となります。しかしこれまでJ-C仮説をテーマにした先行研究が、個体レベルで検証してきたのに対し、僕の結果は天然林を母樹集団とし群集レベルで検証したものです。そのため、個体レベルの事象として唱えられた仮説が、より広い群集レベルで適応できる可能性を示しています。この枯死率の差は、成長にも影響を及ぼします。天然林内では新しい個体が侵入してもすぐに枯死するというサイクルを繰り返していると考えられます。その結果、天然林内では常に小さい個体しかないのに対し、母樹集団から離れた人工林内では安定して成長できるため比較的大きい個体も多いことが予想されます。こちらの図は、調査地内で出現した広葉樹を樹高区分ごとに区分けし、それぞれの個体数が全体に占める割合をグラフにしたものです。母樹をカウントしないよう、2m以上の個体は解析から除外しています。この結果を確認すると、先ほどの結果から予想されるように、母樹集団から離れた人工林ほど、樹高の高い広葉樹が占める割合が多いことが分かります。ではこうした差を創出している”天敵”は何なのでしょうか?そこで温室で行った土壌実験の結果を見てみます。土壌処理実験では天然林と人工林の土壌を、殺菌した場合としなかった場合で、広葉樹実生の成長量がどのように変わるか観察していました。用いた樹種はアセビ、マンリョウ、ヤマグルマで、アセビは頻出樹種、マンリョウは希出樹種、ヤマグルマは群集内にいない種です。殺菌処理の有無による葉の増加量の差を見てみると、調査地内で出現したマンリョウとアセビでは、殺菌処理により葉の増加量が有意に上昇していることが分かります。(この比較は人工林、天然林両方の結果を混合しています。)一方、ヤマグルマではそのような傾向が見られませんでした。このことは、群集に特異的な土壌菌類が実生の成長を阻害していることを示唆しています。そして、この特異的な土壌菌類の影響が母樹集団である天然林内で強い時、先に見たような樹高分布が形成されると考えられます。しかし今回の実験では人工林と天然林の土壌で、実生の成長に差が見られませんでした。これは今回実験に用いた樹種が最も分布している地域が、天然林内ではなく、その林縁付近に最もよく出現するためだと考えられます。今後行うアカガシやカクレミノといった樹種は、天然林内で最もよく出現するため、距離依存的な葉の増加量の変化もみられると考えられます。来年にかけて行う実験の中でさらに検証していきたいと考えています。間伐の効果などは未だ解析中なので分かり次第またご報告したいと思います。COP26閉幕さて10月31日から第26回気候変動枠組み条約締約国会議が英グラスゴーで行われ会期の延期を経て、つい先日閉幕しました。1995年ベルリンで始まった同会議は、1997年COP3で京都議定書をまとめましたが、先進国のみに排出削減が課せられ米国が離脱。その後2015年のCOP21に200ヵ国が合意したパリ協定が採択されました。パリ協定では工業化前からの気温上昇を2度未満にし、1.5度以下に収まるよう努力するという目標が設定され、各国がその目標の下で排出量削減へ向けた取り組みを行っています。そんな締約国会議ですが、今回の会議で2030年までに森林破壊を止め、回復へ向かわせるという目標で130ヵ国以上が宣言を行いました。気候変動リスクの把握と、それに対する森林の価値認識が広がっている証拠とも言えます。ただし課題も多く残っています。人口増加はまだしばらく続くため、農地拡大のための森林破壊も続くことが予想されているのです。さらに、国連によると食糧生産の過程で排出される温室効果ガスは、過去30年で17%増加しているといいます。全排出量に占める割合は31%で(2019年)、見逃せない排出源といえるでしょう。環境負荷の低い生産方法、小面積でも高収量が得られる農法の開発など農法面での技術開発が各国で重要になると考えられます。食料は生死に直結する重要な問題であるため、環境問題との関連性においてやっかいな問題となります。しかし「持続可能」の真価が問われるのは、こうした局面のように思います。ただ自然環境に優しいだけが持続可能性なのではなく、どのように人の生活を両立していくか。そのバランスが求められているようです。人も自然も無理のない暮らしの実現へ向けて、最も難しい局面を迎えているのかもしれません。


10月後半活動報告
2021/10/31 23:55
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平井はいよいよ柚子の収穫が始まりました!今回のトピックは次の通りです。・林道の進捗・高性能林業機械の見学・種子採集の続き・令和3年度版森林・林業基本計画の解説林道の進捗室さん、千井さんのご協力で林道がだいぶ伸びてきました。雨の合間を縫っての作業にも拘らず、立派な道になり始めています!今回の実験だけでなく、今後数十年、数百年?使えるような立派な道になると嬉しいですね!僕の調査地へのアクセスも格段に向上するので、実習等での活躍にも期待です。高性能林業機械以前林道の話をした際に、林業機械の効率について下のような図面でご説明しました。ハーベスタ等の高性能林業機械も、システムをしっかり熟考しなければ、かえってコストがかかってしまうことがあるという話でしたね。この絵に出てきた林業機械の写真を撮ることが出来たので、お見せしたいと思います。まずは絵にもあったフォワーダです。後ろの荷台に木材を積んで、ある程度のデコボコ道も往来することが可能です。キャタピラが付いているこのようなタイプをクローラ式と呼びます。安定的な走行が可能という長所と引き換えに、あまりスピードが出ないのが欠点だそうです。これに対し、トラックのような大きなタイヤを付けたフォワーダをホイール式と呼びます。走行速度が速く、山梨県で行われた検証実験では950mの路網運搬において70%の輸送時間短縮が可能になったという報告もあります。その結果、1.5倍の生産性と燃費も2/3に抑えられたそうです※1。では、悪路は厳しいのかというと必ずしもそうではないようで、使いようによってはクローラの上位互換としての利用も可能なようです。また、ホイール式の方が設置面積が少ないぶん、路面への圧力が大きくなり路面を痛めやすいという指摘もありますが、これも地質等の条件によるようです。この写真を撮る際に教えていただいた方の話では、クローラ式は大面積をひっくり返しながら進むので道が荒れやすいとのことでした。ようは場所によって使い分けが必要と言うことのようですね。続いてこちらが、枝払い、玉切り、集積まで可能なプロセッサです。こちらが立木を切る際のチェーンソーです。左右についている大きな爪で抱きかかえるようにしてしっかりと立木を固定して切ります。こちらは新しいハーベスタだそうです。安くても お値段数千万円です!先ほどのプロセッサも同じですが、運転席に注目すると鉄格子のようなもので守られていることが分かります。これは造材作業中に運転席に丸太が突入してしまった事故の教訓から設置されたもので、運転手を誤操作による災害から守っている構造になります。枝払いをするのは、この黄色い部分の刃です。丸太をすごい勢いで送り出す際に、枝がこの刃に当たりそぎ落とされます。お次はスイングヤーダ―という架線集材用の林業機械です。なかなか街で暮らしてると聞きなれない名前かもしれませんが、急峻な地形の日本ではかなり重要な機械の一つと言えます。操縦室の左についているワイヤーを使って林内から伐倒木を引き出したり、逆に荷物を送ったりする役目を持っています。このスイングヤーダ―とプロセッサ、フォワーダを組み合わせれば、急傾斜地でもそこそこ高い生産性となります。実際にこれらの機械を組合せて素材生産の一連の流れを見せて頂いたので、次回以降にご紹介できればと思います。北欧の林業学校で使われるシュミレーターさて、ハーベスタの見学後、運転シュミレーションの体験もさせて頂きました。この機械は、北欧の林業学校で実際に練習・テスト用に用いられているそうです。お値段なんと400万円!しかし価格相応のリアルさを追求していて、伐倒方向を誤るとかかり木を起こしたり、谷へ木材が転がって言ったりしました。以前紹介したスマホ版のシュミレーションとは大違いですね。数えきれないぐらいのボタンがあって、操作を覚えるのですら大変です…。それでも、人力で全てやるよりは圧倒的に早いということは十分体験できました。スマホのゲーム種子採集の続きさて研究林では、まだまだ集めたい樹種があったので山のあちこちで拾い集めてきました。下の写真はモミの種子。松ぼっくりならぬモミぼっくりです。前回は虫との戦いでしたが、こちらのモミぼっくりはリスに人気です。リスにかじられて芯だけ残った通称”エビフライ”を見かけることがよくあります。モミぼっくり続いてこちらはヒメシャラ。個人的に材の色が好きな種の一つです。クラウドファンディングのリターンでコースターを選択された方の中には、ヒメシャラの方もいらっしゃると思います。程よい温かみのある色が良いですよね!天然林や二次林ではそこそこ大きい個体をよく見かけますが、ほとんど実生を見たことが無いのでもしかすると天敵が関係しているのかもしれません。ヒメシャラ次はタカノツメです。こちらは逆に人工林内で実生をよく見かけますが、大径木は今のところ一回しか見たことがありませんでした。スパイシーな独特な香りがする木で、三出複葉という特徴的な葉っぱを持っています。タカノツメその三出複葉がこちらです。以前カラスザンショウの葉っぱを紹介したときに複葉についてお話したと思いますが、カラスザンショウと一緒でタカノツメもこれで一枚の葉っぱになっています。モミジの切れ込みがどんどん深くなっていったようなイメージです。タカノツメの三出複葉その証拠ではありませんが、分裂過程がイメージできるような葉っぱも付いていました。下の写真は同じ個体から取った葉っぱで、それぞれ全体で1枚の葉っぱを形成しています。真ん中の葉っぱの右下らへんを見て頂くと、なんとなく膨らみが大きくなって、分裂しそうに見えませんか?こんな感じで分かれてしまった成れの果てが一番右の形です。(※あくまでイメージです)タカノツメ森林・林業基本計画さて話は変わって今年6月に新森林・林業基本計画が閣議決定されました。そのうち紹介しようと思って忘れていたので、忘れないうちにご紹介したいと思います。森林・林業基本計画とは日本の森林と林業の施策の基本的方針を定めるもので、5年ごとに変更が行われています。この変更は森林法に則って、国の森林整備と保全の方向性を定める全国森林計画に反映されます。全国森林計画は5年おきに15年計画で立てられ、国有林の地域別森林計画や、都道府県の森林施策の方向性を定める地域森林計画へ反映され、最終的に市町村の森林整備計画や森林所有者の経営計画まで反映されることになります。言わば、日本の森林の方向性を指し示す親分的な存在です。今回の変更は令和3年開始の基本計画です。前回(平成28年度)の基本計画では伐期を迎えた人工林をどのように利用していくかに焦点が当てられ、林業と木材産業の成長産業化の推進がテーマとなっていました。そのため、原木の安定供給体制や木材産業の競争力確保、木材需要の創出が施策の主軸となっています。集約的な作業システムも前回のテーマの一つ一方で今回の計画では、林業や木材産業の成長発展に加え持続性にも焦点を当てているのが見て取れます。また、脱炭素社会に向けた森林の位置づけも意識した内容となっていると言えるでしょう。まず前回計画からの課題として次のような点が挙がっています。・皆伐地の再造林・気候変動による災害の激甚化・林業従事者不足⇒省力化の必要性の増加・木材品質管理の徹底・住宅需要の不透明性⇒人口減少とコロナ・脱炭素社会実現へ向けた社会の変化以上の課題を解決するため、要約では大きく次の3つの施策が示されていました。①森林の有する多面的な機能に関する施策②林業の持続的かつ健全な発展に関する施策③林産物の供給および利用の確保に関する施策(※補助的・横断的項目として国有林野活用による地域振興や、林業DXの推進、東日本大震災からの復興・創成なども挙げられている。)一つずつ詳しく見ていきましょう。①森林の有する多面的な機能に関する施策多面的機能の発揮のための施策です。恐らくこの項目において今回のポイントとなっているのは、脱炭素化におけるエリートツリーの活用や、木材利用による炭素貯留などが加えられている点でしょう。エリートツリーの活用は、そのまま林業の収益性アップにもつながりますし、依然紹介したようにゲノム編集技術開発も加速しているため、樹木生理分野での林業改革に期待したいポイントですね。また、気候変動対策としては土砂災害時の流木の問題に関連し流木補足式治山ダムの文言が書かれていたのが印象的です。樹木の表土保全機能が注目され、その機能に目が行きがちですが、深層崩壊などにより流れ出した樹木は、橋などの河川周辺の構造物を破壊する要因にもなります。そのため、流木対策は気候変動において重要な課題となっているようです。また、山村価値の創出においては、森林サービス産業による所得確保の機会創出という文言がありました。コロナ禍でテレワークが加速した今、ワーケーションの需要などが増加すると見込まれるため、森林の潜在的な経済的価値が発掘されるかもしれませんね。和歌山では白浜町や田辺市が積極的な姿勢を見せているようで、活力のある地方都市になるか期待が高まります。最後に複層林において環境贈与税の利用という文言が加えられていたことも特筆すべき点です。2024年の森林環境税に先立ち2019年から開始された森林環境譲与税を受けての改変になります。今後5年では、多様性の高い森林における経済性価値の創出はまだ起きにくかもしれないので、公費によって森づくりの方向性を決定することは重要でしょう。ですが、あと10年か20年ぐらいすると、多様性クレジットのシステムが本格化すると考えられます。そうなったとき、「経済的価値のある森林の形」が大きく変わるんじゃないかな?と僕は思っているので、環境譲与税による複層林施業において、多様性クレジットを意識した森づくりのノウハウを蓄積しておく必要があると思いました。②林業の持続的かつ健全な発展に関する施策林業の持続性についての項目です。ポイントとして2つが挙げられていました。一つは林業の労働環境における持続可能性の整備。もう一つは、伐採と再造林による資源面での持続性を可能とする経営体の育成です。まず後者を達成するための課題として、生産コスト低減による収益性のアップに焦点が当てられていました。造林経費においてはドローンによる苗木運搬、自動林業機械による省力化。立木販売においては、ICTを活用した生産流通管理の効率化などが施策として挙げられています。また以前と同様に、集約化や効率的な作業システムの導入も継続的な課題となっています。効率化の手段に位置付けられているコンテナ苗(今度紹介したいと思います)安定的な経営と言う面では、長期施業委託や経営管理権の設定などが挙げられていました。森林経営管理法によって意欲のある事業体への管理委託が始まりましたが、その先の施策ともいえるかもしれません。また、事業体連携や民間事業体の法人化・協業化の促進も、作業の集約化による安定的な経営という意味では欠かせません。さらに、安定的な経営に欠かせないのが人材育成と、その労働環境の整備です。林業では慢性的な人材不足に陥っているため、コストをかけてでも人材育成・確保へコストを行う必要があります。また、就業したとしても、労働環境が劣悪では元も子もありません。丁度今月、和歌山で1週間に3人も林業関係で死者が出るということがありました。劣悪な労働環境が露わになった問題といえるでしょう。今回の基本計画では10年後の死傷年千人率を半減という目標と、労働安全対策の強化と書かれていましたが、しわ寄せが現場で災害として浮彫になる実態を把握し、収益性と安全性のトレードオフを見つめ直した施策が必要のように思います。効率の重視される木材生産のみが収益源として拡大してしまえば、問題は悪化するかもしれません。砂防や文化的サービスなど多様な経済的価値づけをすることで、同じ仕事量でも生産性が高く評価されるシステムを作るなどの変革が必要なのではないでしょうか。賃金においては、通年雇用による他産業並みの所得確保が課題となっています。生命の危険と隣合わせなうえに所得も低い産業では魅力が下がってしまうのも致し方ありません。慢性的な従事者不足の改善、そのための労働環境の整備こそが今最優先に解決すべき課題といえるでしょう。③林産物の供給および利用の確保に関する施策木材利用にかかる分野の項目です。大きく次の3つに分類されています。1. 原木の安定供給2. 木材産業の競争力強化3. 新たな木材需要の獲得原木の安定供給では依然として最適な生産流通モデルの構築が課題のようです。森林経営管理制度による林地の集約化も、まだ始まったばかりなのでこれからが本番と言ったところでしょうか。木材産業の競争力という点では、JAS・KD材※、集成材の低コスト安定供給体制を整備し、輸出拡大を見込んだ低コスト安定供給体制の構築を掲げています。海外販路の拡大は新たな木材需要の創出という点でも重要です。ロシアの丸太の輸出規制が厳しさを増す中、ロシアに依存していた中国が日本の丸太輸出に注目していますが、ここで付加価値を付けずに丸太を売ってしまうのかどうかよく考えておく必要があるかもしれません。また広葉樹家具など多様なニーズに応えることができる中小地場工場を活用して、多品目製品の供給体制も並立するという話題もありました。前回の基本計画策定以降、木材加工工場は大規模化が進み、中小地場工場が減少しています。しかし、各々が異なる役割を持つことで、共存を可能にし、しかも全体として広い需要をカバーするというアイデアということでしょう。※・AD材(air dried lumber):自然乾燥された木材。手間と時間がかかる。木の収縮が起こりやすいが、乾燥過程で脂を損なわないため粘りが維持され長期的(50年以上)な耐久性に優れているらしい。詳しいことはまた今度調べてみます。・KD材(kiln dried lumber):人工的に熱を用いて乾燥させた材。割れや反りは起きにくいが、乾燥過程で脂を損なうため粘りが失われるらしい。以下同文※1平成26年度岩手県事業 地域けん引型作業システム改善実証調査事業 先進的な作業システム改善の取り組み


10月前半活動報告
2021/10/14 19:45
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こんにちは!空気が冷たくなってくると、より一層星空が綺麗になってきたような気がします。近所の畑ではおばあちゃんがサツマイモの収穫を始めており、集落内にも秋の色付きがはじまってきました。林内の皆伐跡地ではススキが金色に輝き始め、哀愁漂う秋の匂いが漂います。研究林内のススキ原おばあちゃんの畑のサツマイモ今日のトピックは次の通りです!・毎木調査進行状況・アカガシのどんぐり集め・どんぐりの戦略・木のボールペン・ソマノベースの来林・スギのゲノム編集毎木調査進行状況毎木調査も後半に入ってきました。間伐を行ったところでは、所狭しと実生が生えてきました。今年春の調査ではプロット内に3500ほどの個体が観察されましたが、この半年で新たに2000個体ぐらい増えそうな勢いです。今後の経過観察を行うために旗を付けて識別します。今年の秋は黄色い旗で統一することにしました。1個ずつ実生を探して旗を付けていく作業は、森林の動態を可視化できる楽しい作業です。あまりに途方もない作業量に、「全部引っこ抜いてしまい!」と思ったことなんて1度もありません、本当です、、、。けど生まれ変わったら二度と実生の調査はしないと心に誓いました…。特に今回の調査で出現頻度が高いのは、以前ご紹介したアカメガシワやカラスザンショウの他に、ヒサカキという種です。写真の赤丸のところに生えているギザギザの葉縁が特徴の樹種です。神事に使われる榊の代わりとしても利用される種で、漢字で書くと「非榊」や「姫榊」と書くこともあるそうです。学芸大の植物図鑑によると、ヒサカキの付ける花の香りが「たくあん」や「インスタントラーメンの粉末」に似ているらしいので、今度咲いていたら嗅いでみようと思います。一カ所に集まって芽が出ていることも多く、写真の場所では17個体がひしめいていました。おそらく落ちてきた種子が、雨水の流れで集まってきたか、鳥たちが食べてフンと一緒に落としていったものと思います。疲れたタイミングでこんな場所を見つけてしまうと、見なかったことにしてしまいたくなります笑。そんな憎きヒサカキですが、昨年秋の事前調査でも最大の個体数を誇っていました(上図下段)。また、人工林30m地点と5m地点の樹高差が全く無かった種としても注目しています(上図上段:縦軸は人工林30m地点と5m地点で出現した個体の樹高差の指数。値が高いほど30m地点で出現した個体の方が大きいことを示している。)。私の仮説では母樹集団である天然林に近いほど、天敵となる土壌菌類の影響で成長が阻害されることになりますが、ヒサカキはその仮説が当てはまらない種の一つです。今のところ僕が原因として考えているのは①ヒサカキがスペシャリストとなる土壌菌害に対し耐性がある。②母樹集団が既に人工林内に進出していたため、土壌条件が一様になっていた。の2つです。他の研究結果などを見ていると、どのような林床でもヒサカキ実生の出現頻度は高いそうなので、①の可能性が高いかもしれません。今後温室での実験で検証していきたいと思っています。アカガシのどんぐり集め秋は多くの樹種が種を落とす季節です。ヒサカキを含め、今後の実験に用いる樹種の種子を集めているのですが、その中の一つにアカガシがあります。アカガシは比較的標高の高いところに生えていて、カシの中では最も大きくなる種です。とても重い材で耐水性もあり狂いも少ないので大昔から有用材として利用されてきました。ただ硬すぎて加工が難しいのが難点なようです。材が赤いことが名前の由来だそうですが…。並べてみてもさっぱり分かりませんでした。ただ光の当て方やオイルを塗った状態だと確かに赤く見えることもあります。そんなアカガシのどんぐりを集めているのですが、どんぐりは動物にとってもご馳走なので、森の動物たちと競争をすることになります。うかうかしていると全部食べられてしまいます。ということで台風の通過後、早速どんぐりを山から山へかき集めてきました。森から誘拐された大量のどんぐりやっとの思いで数千個集めてきました。実験では1000個ほど確保しておきたいので、これで十分かと思いきや、これだけ集めても安心できません。どんぐりが好きなのは哺乳類や鳥だけではなく、昆虫も同じです。このどんぐり達を水に2~3日沈めて、浮かんでしまったら昆虫が既に食べてしまっている可能性が高く、発芽は期待できません(元から不稔という可能性もあります)。とは言え、これだけあれば大丈夫だろうと期待していたのですが、、、見事にやられてしまいました。哺乳類との戦いに勝っても昆虫との競争に負けてしまったようです。浮いたどんぐりをよく見ると、小さい穴が確かに開いています。昆虫おそるべし。最終的に集めてきたどんぐりのうち7割弱が残念な結果となってしまいました。まだまだ森の生き物たちとの競争は終わりそうにありません。どんぐりの戦略ところでどんぐりを含め樹木の多くは種子の豊凶周期があることをご存じでしょうか。例えばコナラだと2~3年周期、ブナでは5年おきに森中のコナラやブナが一斉に大量の実を付ける年があります。こうした豊凶周期の特性がなぜ樹木に備わったのかについて大きく2つの考え方があります。一つは、種子を作るのに必要な資源量が樹体内に溜まるのを待っている時間が凶作、溜まった資源を使って一気に種子をつけるのが豊作年という、現象面における考えです。もう一つは豊作年が続くと、どんぐりを食べる虫やネズミの食べ物が増えて大量発生してしまい、結果として子孫を残せなくなってしまうので、敢えて凶作年を設けることで捕食者の個体数を抑制しているという戦略面での考えです。それならばネズミが絶滅するまで凶作を続ければ良いのでは?と思うかもしれませんが、ネズミはどんぐりを運ぶという役割も持っています。そのため多すぎても困りますが、少なすぎても困ってしまうのです。そんな絶妙な関係性を保つために豊凶年が定着したというのが後者の考えです。樹木の戦略が見て取れる面白い考えですね。木のボールペンさて話題を変えて、町内の小学生向けに行った木のボールペン作りの様子をお伝えしたいと思います。研究の傍ら町内の小学校で毎週2回放課後活動の支援を行っているのですが、その企画として年に数回、研究林産の木材を使った木工体験を行っています。今回のボールペン作りもそんな企画の一つです。因みにボールペンの作り方は千井さんに教わりました。折角なら様々な種類の木に触れてもらおうと、コレクションの中から引っ張り出した材で、元となる部品を作ってきました。小学生に人気だったのは、良い香りのするクロモジと、北海道から持ってきた樹種です。特にクロモジの香りには驚いていたようで、他の木も匂いがするかどうかなど確かめていました。さらに、持った時の感触が良い物を選ぼうと、熱心に観察している子もいて、凹凸が独特な樹種に興味を持っていたので、持ってきた甲斐があったなと一安心です。渡して終わりではつまらないかなと思い、色ペンを渡して自由にデコレーションする時間も与えたところ、それぞれ驚くようなセンスで色付けしていました。例えば下の写真の作品は、鉛筆の先っちょに季節の移ろいを表現したそうです。その発想の柔軟性には本当にびっくりしました!こうした体験を入り口として森林や林業、環境問題にも興味を持ってもらえると良いなあと思っています。ソマノベースさんの来林木や森林の魅力を川下に届けようとしている方々は多くいますが、今月初めに来林したソマノベースさんもその一つです。ソマノベースさんは、「土砂災害での人的被害をゼロにする」という理念の下で発足した林業スタートアップの一つで、代表取締役を務める奥川季花さんはお隣の那智勝浦町ご出身です。高校の頃に紀伊半島大水害を被災し、林業と水害の関係性に興味を抱いた奥川さんは、都会の人にも参加できるような苗木生産・植林活動のシステム(戻り苗)を考えたり、適切な森林管理を促すための情報を収集したりしています。少し前にテレビでも紹介されたのでご存じの方も多いかもしれません。千井さんの話を聞くソマノベースの社員さんたち半日の日程でしたが、林道作設の現場や僕の調査地を紹介したり、改修中の資料室を見学したりと充実した視察になったと思います。特に現場で働いていた千井さんの話には釘付けで、代わる代わる質問していたのが印象的でした。現場にいた人だからこそ知っている知識や、ちょっとした作業のコツなどは、ネットや書籍にも載っていないことが多くあります。そうした知識を持っている方々が引退される前に記録しておくことは、広がりを見せる自伐型林業を推進するうえでも確かに重要です。また林業従事者不足も課題となる中、林業に関する情報へのアクセスを容易にして入り口のハードルを下げることで、林業人口の裾野を広げるのにも役立つかもしれません!僕の調査地の紹介また、川下も参加する苗づくりや植林活動は、「森に対して当事者意識を持つ」と言う意味で、この上ないアイデアだと思いました。どこか他人事になりがちな山のことを、都会にいながら意識できる社会が実現できれば、社会全体の環境意識を変えるきっかけになるのではと思います!意見交換会の様子半日ではやはり時間が足りなかったようで、「まだまだ聞きたいことが山ほどあるので、また来ます!」と仰っていただけました!奥川さんは田辺市の「木を伐らない」ことで有名な林業会社「中川」の社員も兼任しているので、ご近所同士、交流が活発になると良いなと思います!スギのゲノム編集技術最後に前回予告していたスギのゲノム編集についてです。樹木の炭素固定機能が注目される中で、より多くの二酸化炭素を吸収するようにスギを品種改良する研究が進められています。密度を変えずに成長速度を高めることもできれば、気候変動抑制へ貢献するだけでなく林業の短期的な収入機会を増やすことにもなるため、非常に重要性の高い研究と言えるでしょう。前回少しお話したように、これまでの樹木の品種改良には精英樹(成長や性質がすぐれている個体)の選抜やその交配個体のクローンを増やすという方法が行われていました。しかしこの方法には10年以上の長い時間が必要です。そこで樹木に対してのゲノム編集技術の開発が始まり、2015年にはポプラで初めてゲノム編集が行われるまでに至りました。翌2016年には遺伝子情報から無花粉スギ個体の選抜を可能とする技術が開発され、今年8月には、森林総研が昨年ノーベル賞を受賞したゲノム編集技術、クリスパー・キャス9※1を応用したスギのゲノム編集に成功したと発表しました。さらに森林総研と農業・食品産業技術総合研究機構、横浜市立大学は9月に、ゲノム編集によって林業樹種の任意の遺伝子領域を改変する技術を開発したと発表しました。実験ではスギの葉緑素を担う遺伝子領域を破壊した白いスギを作ることが可能になったと言います。「そんなことをして何になるの?」と思ってしまうかもしれませんが、ここで重要なのは葉緑素を失った個体を作り出したことではなく、あくまで「特定の遺伝子領域を改変する」という目的を達成したことです。つまり、今後ある性質を改変したいと思ったときに、遺伝子上の位置さえ分かっていれば技術的に改変が可能になったことを意味します。今年5月に農林水産省が発表した「緑の食料システム戦略」には、林業用苗木における英精樹の割合を2030年までに3割、2050年までに9割以上という目標が立てられています。今回のニュースのようなゲノム編集技術が確立されたことで、今後林業樹種における品種改良のスピードが速まるかもしれません。ここからは私の妄想ですが、スギやヒノキ以外の樹種でも品種改良が応用されれば、成長が早く樹形が適しているという理由で「スギ・ヒノキ」を選ぶ必要もなくなってくるのではないだろうかなと思いました。ともすると、多様な樹種を植えた森であっても建材や家具材に適した材の産出が、ゲノム編集によって可能になる時代が来るのではないでしょうか?今後林業用木本種の選択肢が広がることにも期待したいと思います。※1デオキシリボ核酸(DNA)を切断するCas9酵素と、狙ったDNAと相補的な配列になっているガイドRNAを組み合わせることで、DNAの特定の部分を切除するゲノム編集技術。CRISPERは一部の細菌に見られるウイルスに対する免疫システムのこと。一部の細菌は体内に侵入したウイルスのDNAの一部を自身のDNAに組み込み、再び侵入したときにCas酵素を使って攻撃する。ウイルスから切り取られた配列は、同じ塩基配列が繰り返されるリピーターと呼ばれる部分に挟まれたスペーサーと呼ばれる部分に組み込まれる。このスペーサーとリピーターのセットをCRISPRアレイと呼ぶ。CRISPRアレイはCas酵素を発現するCas遺伝子と共同で働き、ガイドRNAの役割を果たす。一連のシステムからクリスパー・キャス9という手法が開発された。参考文献・スギ改良でCO2吸収量増 森林総研、ゲノム編集で実現へ 日経9/27・世界初 スギのゲノム編集技術を開発 ~針葉樹の品種改良を⼤幅に短縮する新技術として期待~ 横浜市立大学 閲覧日2021年10月14日・ノーベル賞解説】「クリスパー・キャス9」って何?新型コロナにも有効? 三菱電機 閲覧日2021年10月14日・CRISPRの謎 natureダイジェスト 閲覧日2021年10月14日・ソマノベースさんのぺージ 閲覧日2021年10月14日 ・学芸の森 私の植物 閲覧日2021年10月14日