荒廃した奥地人工林を『低コストで管理できる森林』へ!

日本の林業は衰退に歯止めがかからず、里山奥地の人工林は管理がままならぬ事態へと陥っています。私たちは人工林に隣接する天然林から広葉樹の侵入を誘導し、放棄された奥地の人工林を効率よく天然林へと戻すことで、多面的機能が高く、「低コストで管理できる森づくり技術」の開発と普及を目指します。

現在の支援総額

1,560,000

173%

目標金額は900,000円

支援者数

145

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2020/10/20に募集を開始し、 145人の支援により 1,560,000円の資金を集め、 2020/11/30に募集を終了しました

荒廃した奥地人工林を『低コストで管理できる森林』へ!

現在の支援総額

1,560,000

173%達成

終了

目標金額900,000

支援者数145

このプロジェクトは、2020/10/20に募集を開始し、 145人の支援により 1,560,000円の資金を集め、 2020/11/30に募集を終了しました

日本の林業は衰退に歯止めがかからず、里山奥地の人工林は管理がままならぬ事態へと陥っています。私たちは人工林に隣接する天然林から広葉樹の侵入を誘導し、放棄された奥地の人工林を効率よく天然林へと戻すことで、多面的機能が高く、「低コストで管理できる森づくり技術」の開発と普及を目指します。

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7月前半 活動報告
2021/07/14 17:46

こんにちは。だいぶ気温も上がり夏の日差しを感じることも多くなってきましたね。そんな日でも森の日陰に入ると涼しい風が吹いているので、驚くことがあります。東京では街路樹の日陰でも熱風が吹き付けていたのでなんとも有難いです。土壌実験:仮説の振り返り山で採取してきた種子が順調に成長してきたので、山の土壌を使った実験を開始することにしました。今回はその様子をご紹介したいと思います。発芽したマンリョウその前に、土壌実験の内容を忘れてしまっていると思うので、簡単に振り返りたいと思います。僕は、図1の毎木調査の結果に見られる傾向がなぜ起こっているのか?と言う点に注目しました。そしてこのような傾向が現れるのは、「天然林に近いほど種子の散布量が多いも一方で、実生の生存率が下がっているからではないか?」と考え、その生存率を下げる要因が土壌中の病原菌であるという仮説を立てました。図1:2021年春における毎木調査の結果。天然林では基部直径・樹高が小さい個体(つまり若い個体)の占める割合が高いが、人工林に向かうにつれて大きい個体の割合が高くなっている。天然林から離れる方が生存率が上がる一方で種子散布量が少なくなっていればこの傾向を説明できる。この仮説を検証するため、山の土壌を使い次のような実験を行おうとしています。まず表1のように、天然林・人工林5m・人工林30m(境界からの距離)の土壌を採取し半分を殺菌して6種類の土壌を作ります。この土壌に先ほどの実生を植え替えて、生存率や成長量の差を観察する予定です。表1:土壌処理もし僕の仮説が正しければ、図2のような結果が期待できます。殺菌をしていない状態だと土壌中の病原菌の影響で、天然林内の生存率が著しく低下します。しかし母樹の効果が少なくなる人工林の奥へ進むにつれ、病原菌の影響が減るため生存率が上昇します。一方で殺菌した土壌では、上記のような土壌中の菌類の影響が緩和されるため、地点間での差が減ります。その結果、生存率や成長量に差が生じにくくなると考えられます。図2:期待している結果土壌実験:実験の様子では実際に実験の様子を見ていきましょう。まずは実験に使用する土壌を採取します。表面の落葉をどけて浅い部分にある有機物層を採取します。この部分は種子が着地する場所で、尚且つ菌類が活発に活動している場所です。一回で20kg程度の土壌を採取し、それを林内の12地点で行います。急斜面を重い土を背負って上り下りするのはなかなかに大変で良い筋トレになりました!土壌採取風景ここで面白いものを発見しました。タヌキの溜め糞にサクラの種子が大量に混ざっていたのです。種子の動物散布と聞くと鳥やリス・ネズミなどが最初に思いつきますが、タヌキも種子拡散に一役買っているようです。パット見ただけでも100以上は含まれていたので、今後この場所でサクラが発芽してくるか注視したいと思います。タヌキの溜め糞に含まれるサクラの種子余談ですが、サクラに限らず動物散布の種子の中には、動物に食べられることで果肉や種皮部分が消化されたり、その過程で種皮に傷がついたりすることで、発芽しやすくなるものが多くあります。そのため、人工的に播種して発芽させる際には果肉を取り除いたり、種皮にやすりで傷をつけたりすることがあります。一見すると動物ばかりが植物を利用しているように見えますが、植物もしっかりと動物を利用しているようです。ヤマザクラの実生 これもタヌキが運んだのかも?さて土壌採取が終わると、土の条件付けを行います。今回は土壌菌類に注目したいので、それ以外の条件をなるべく均等にしていきます。まず最初に廃材で作ったお手製の土壌篩機を使って、森林土壌を篩にかけていきます。森林土壌そのままだと、木の根や石が多く含まれており地点間でばらつきが生じやすいので、その原因を除去する作業です。篩にかけると重さは約半分ぐらいになります。大量の土を入れた容器を1日中手でゆするので、想像以上に疲れてしまいました。これも良い筋トレですね!お手製土篩機篩作業が終わると殺菌するため半分を電子レンジでチンします。この方法はJill &Anderson (2009)に則っており、殺菌効果は予めエコプレートを使って確かめています。約1kgに対し600Wで7分間チンすることで、高い殺菌効果が見られました。「こんな簡単に殺菌できるのであれば、食中毒予防にも有効かもしれないな」などと思いながら作業を進めます。殺菌風景この後、赤玉土を混ぜ込み土壌菌類意外の水はけや栄養といった点も揃えていきます。この先は現在進行中なので、次回ご紹介したいと思います。広葉樹?針葉樹?梛(なぎ)の木所変わって前回の伊太祁曽神社の続きの話です。境内に梛という種のご神木がありました。ここに来るまで聞いたことが無かったので、後で調べてみると、関東南部よりも南に分布するらしく関西では比較的多いようです。どうりて見聞きする機会がなかったわけですね。伊太祁曽神社 梛のご神木この梛の木、少々変わった特徴を持っています。下の写真が梛の葉っぱの写真なのですが、この木は広葉樹/針葉樹、どちらだと思いますか?梛の葉っぱ実はこれ、針葉樹なんです。ぼーっと眺めていた時は広葉樹とばかり思ていましたが、案内板に針葉樹とあって驚きました。調べてみると、南半球で主流の針葉樹であるマキ科の仲間のようです。日本で自生しているマキ科の仲間はイヌマキとこのナギの2種のみだそうで、どちらも暖かい地域で生垣や神社によく植栽されているんだとか。梛の読みが凪と重なるので船乗りの信仰を集め、葉っぱや実が航海のお守りになっているそうです。熊野三山の熊野速玉神社でも樹齢1000年で日本一大きい梛と呼ばれる個体がご神木になっています。因みに同じ「マキ」でも「コウヤマキ(高野槇)」は全く別の種で一科一属一種の日本にのみ自生する変わった種です。コウヤマキは2年前まで和歌山研究林のお風呂の材でした。一度実習で入りましたが、とても良い香りがしたのを覚えています。またコウヤマキは樹形が非常に整っており、東京スカイツリーのモデルにもなっています。コウヤマキの端材 研究林のごみ箱は面白い材がちょくちょく入っているので、時折ごみ箱を漁るのが日課になっています話がそれてしまいましたが、梛の名を今まで聞いたことが無かったので古座川にもあるのかなあと思ってうろついていると…串本町の梛ありました。正確には隣町の串本町ですが、大きな梛が2本並んで立っていました。偶然所有者の方にお会いできたので、母樹の下にあった苗を頂くことにしました。もらった梛の苗早速葉っぱをよく観察すると縦方向に沢山の筋が見られました。縦方向に引っ張っても裂けない頑丈な葉を持つことから、縁起物とされているようです。それにしても、梛はなぜ針葉樹に分類されるのでしょうか?確かに広葉樹に見られるような主脈と側脈はありませんが、もう少し詳しく理解するためには針葉樹や広葉樹の定義を再確認する必要があります。調べてみると、広葉樹とは被子植物(花をつける仲間)の木本、針葉樹とは裸子植物の球果植物門(松ぼっくりのようなものをつける仲間)のことのようです。そしてナギを含むマキ科は裸子植物の球果植物門なので針葉樹ということになります。イチョウは何者なのか?ところで、先ほどの針葉樹と広葉樹の定義にひっかかるところがありませんでしたか?広葉樹は被子植物でくくっているのに対し、針葉樹は裸子植物の中でもさらに「球果植物門」である必要があります。つまり区分の階層がずれているのです。基礎生物学研究所の陸上植物の分類で図の一番上の部分に注目してみるとよく分かると思います。(※ここでは球果植物門が針葉樹類と表記されている)基礎生物学研究所の陸上植物の分類 陸上植物の進化 よりなぜこのようなことが起きてしまったのかというと、形態的分類による広葉樹/針葉樹と、進化的な分類による被子植物/裸子植物球果植物門がよく一致していたため、ほぼ同義で用いられてしまったからということのようです。そのため、ナギのような種が「針葉樹」という字面に似合わなくなって違和感が生じてしまいました。さらに違和感どころではなく、針葉樹/広葉樹という分類で立ち位置を見失ってしまう種も出てきます。イチョウです。先ほどの図で上から4つ目のところにイチョウとあるのが分かるでしょうか。そのため広葉樹の分類にも針葉樹の分類にも当てはまらないことになってしまいます。新宮市の廃校にあるイチョウとは言っても便宜上、イチョウは針葉樹に分類されます。その場合針葉樹の定義を裸子植物に属する木本まで拡大する必要があるようです。参考文献・Jill T. Anderson 2009. Positive density dependence in seedlings of the neotropical tree species Garcinia macrophylla and Xylopia micans. Journal of Vegetation Science volume 20, pages27-36・陸上植物の進化 Yukiko Kabeya, Takanori Nakamura, and Mitsuyasu Hasebe @ 基礎生物学研究所 閲覧日2021年7月14日


6月後半 活動報告
2021/06/30 23:58

しばらく研究の内容が続いたので、今回は①研究林の近況と②木に関わる昔話、の二つについてご紹介したいと思います。林業大学校の実習先日、和歌山県立農林大学校の林業研修部(以下 林大)の実習が研究林で行われました。こちらの学校では、山林経営から専門技術の習得まで、森林資源を活用する様々な術を教わることが出来るそうです。どんな実習が行われているのか興味があったので、特別に見学させて頂くことにしました。研究林庁舎前で実習前の説明中朝、研究林庁舎前でその日の活動の説明が行われると、早速山へ向かいます。今回のメニューは、実際の現場で必要になる伐倒技術の練習だそうです。10名弱の生徒さんと数人の講師陣がそれぞれチェンソーを担いで山へ入っていく姿はなかなか迫力があります。重いチェーンソーを持って未整備の林床を歩くのはもちろんのこと、作業用の靴で歩くのにも慣れが必要とのこと。まずはじめに、靴慣らしも兼ねて僕の調査地を一巡することになりました。チェーンソーを担いで山へ調査地では、千井さんと室さんに間伐して頂いた場所の切り株を使って、受口や追口(木を伐倒する際に予め作っておく切れ込み。下図参照)の作り方を練習します。今回の間伐作業が僕の研究だけでなく、実際の林業従事者の方にも役立っていることが嬉しくて、ついつい何枚も写真を撮らせて頂きました!写真を見て頂くと分かると思いますが、僕の調査地は平均傾斜で36°、場所によっては60°超と恐ろしいほどの急傾斜地で、10m先にいる人は視界から消えてしまいます笑。ところが紀伊半島ではこれが当たり前なので、そのような場所で安全に作業するためにも実践的な練習は欠かせません。調査地の切り株でチェーンソー使いの練習中防護服ところで、写真の中でも一際目を引くオレンジ色のジャージ、実はこれには隠された機能があります。万が一チェンソーの刃が脚に当たってしまった際に、中の繊維が刃に絡まり付いて止めてくれるのです。こういった防護服は林業分野ではチェンソーを使う他の産業に先駆けて、2015年から義務化されておりセミナー等を通じた普及が進められています。東京都あきる野市で森林整備業を営む「山武師」では、海外製の都会的なブランドを採用しているなど、「格好良い林業」を目指す事業体もあるのだとか。長らく林業にまとわりついてきた3Kのイメージを変えてくれると嬉しいですね!チェーンソー防護服いよいよ伐倒!靴慣らしも終わると別の山へ移動し、実際の立木を使って伐倒練習に入ります。林業のイメージと言えばチェンソーを使って木を切り倒す作業を思い浮かべる方が多いと思います。言葉で言ってしまえば只それだけのことなのですが、説明を聞いていると「そんなことまで考えていたのか…」と驚かされることばかりです。例えば、切るときの立ち位置は谷側と山側のどちらが良いか?とか、枝振りを考えるとどの方向に倒すのが適切か?とか言った具合です。何mもある木を切り倒すのには、やはりそれなりの危険が伴います。一歩間違えれば大事故につながってしまうため、何重にも何重にも慎重な対策を重ねてやっと刃を入れるという習慣を作ることが大切です。そのため、ちょっとの手抜きも見逃さないよう千井さんの指導にも熱が入ります。研究林職員かつ林大の講師も務めている千井さんの指導風景大方の説明が終わると、まずロープワークの練習を行います。ロープは思い通りの方向に安全に倒すために必要です。幹を輪っかに遠し、アンダースローの要領で徐々に輪っかを上へ持っていきます。これがなかなか難しく、千井さんにコツを教えてもらいながら皆さん徐々に輪っかを持ち上げていました。ロープワークの様子ロープが付け終わり、退避場所等の安全確認が終わればいよいよ伐倒です。受口の方向を確かめつつ徐々に切れ込みを入れていきます。皆さん待ちに待ったといった様子で、独特の緊張感の中、集中して切り倒していました。もちろん、最初から思った通りの方向へ倒せる人はそれほどおらず、「かかり木」と呼ばれる周りの木に引っかかってしまう状況になる方が多くいました。そんな時は、千井さんをはじめとした講師陣の方と生徒さんが一緒になって、失敗の原因を考え、かかり木の処理方法を学んでいきます。伐倒風景こういった指導を見ていると、技術の継承の大切さを改めて感じました。例え林業の機械化が進んで高性能なメカだけで伐倒が出来るようになったとしても、道のない山の奥まで森が広がっていたり、機械では対応できない巨木の処理が必要になったりと、どうしても人の手が必要な場面が出てくることでしょう。その時のためにも、チェーンソーを使って安全に伐倒を行う技術が今後も継承される必要があると思いました。かかり木の処理作業なぜ林業に関わろうと思ったのか?お昼休みに、参加していた生徒の方々とお話しする機会があり、林大への志望動機や卒業後の進路を聞くことができました。その中のお一人、和歌山県在住の浦光良さんのお話をご紹介します。浦さんは、昨年まで県内の小学校の校長先生を務めていた方で、御年60歳だそうです。しかしその年齢とは裏腹にとてつもない健脚の持ち主で、チェーンソーを片手にひょいひょいと急傾斜を上り下りしていました。聞けば趣味はマラソンだそうで、素人の域を超えたタイムを持っていらっしゃいました笑。実習に参加していた浦光良さんそんな浦さんが林大に入学したのは、「先祖から引き継いだ森の管理をする」ため。卒業後はその山林で森林経営を行うのが夢だそうです。会話の中で、僕が和歌山県内の山村を回る中で住民から聞いてきた「先祖から受け継いだ山林がお荷物になっている」という話をすると、「それは勿体ない!森は宝の山だ!」と笑顔で言い放ったのがとても印象的でした。暗い話の多い林業ですが、こういった方々の期待に応えるためにも、森や木の価値をより多くの人に知ってもらいたいと改めて思いました。ロープワーク中の浦さん。そういえばロープワークも誰よりも早く習得していました。日本中に木を植えた神様の話今日はもう一つ、和歌山県内の神社についてご紹介したいと思います。紹介するのはこちら伊太祁曽(いたきそ)神社 です。こちらの神社には日本中に木を植えた神様が祀られているということで、僕の調査地にも種子を飛ばしてくれるよう、お願いしてみることにしました!(種子が入りすぎると毎木調査がキツいので適度にお願いします!) 和歌山県にある伊太祁曽(いたきそ)神社境内の案内板を読むと、祀られているのはかの有名なヤマタノオロチを倒したスサノオノミコトの子どもである五十猛命(イタケルノミコト)という神様のようです。何でも、高天原から下りてくるときに木の種を大量に持ってきて、妹二人と一緒に3人で九州から順々に植えていったそうです。これには拡大造林期の方々もびっくりですね。因みに、その木の種苗はスサノオノミコトの体毛から採種したと日本書紀に書かれていて、髭からスギ、胸毛からヒノキ、眉毛からクスノキといった具合だそうです。 本殿日本全国への植林作業が済んだ3人は、和歌山の地を気に入って住むようになりました。後の人々がその場所を木の神様がいるところという意味で、「木の国」と言い始めたのが「紀国」の由来という説があるそうです(※諸説あり)。木の神様を祀っているので、境内にはなかなか興味深いものがあります。その一つがチェーンソーアートです。チェーンソーアートとは1970年代から北米で広まった彫刻の一種で、チェーンソーを使って木や氷を掘る芸術のことを指します。世界最速の木彫刻と呼ばれることもあるそうです。チェーンソーカービング境内には干支にちなんだ彫刻や龍の彫刻が並べられていました。これを全てチェーンソーだけで彫ったとは俄かには信じがたいですね。例年四月に行われる「木祭り」でこれらの彫刻が奉納されるそうなので、興味のある方は行ってみると良いかもしれません。また、全日本チェーンソーアート協会なるものもあるので、参考までにリンクを載せておきます。干支境内には他にも面白いものがあったのですが、今回は長くなってしまったのでまたの機会にご紹介したいと思います。どうぞお楽しみに。参考文献・和歌山県立農林大学校HP 閲覧日2021年6月29日・令和元年度版 森林・林業白書 林野庁・林業の担い手、若返り図る 兼業容認や海外製の作業着 日経2021/6/1・全日本チェーンソーアート協会HP 閲覧日2021年6月30日


こんにちは。あまり梅雨らしくない晴れが続いて、出歩きやすい日が多く嬉しい反面、雨不足がやや気になりますね。去年の梅雨時はずっと雨だったので、押し入れにしまっておいたものが片っ端からカビて大変だった記憶があります。古座川ジビエ先日、古座川町にあるジビエの加工場から写真のような食品を頂きました!ありがとうございます!ジビエと言うと、獣臭さが苦手という人も多いかもしれません。僕も初めはそんな味を想像していましたが、食べてみると臭みが全くなくむしろ市販の肉よりも旨味が多く美味しいように感じました!古座川町にいらした際は、一度試してみてはいかがでしょうか?通販もやっているようなので参考までにURLを載せておきます。https://kozagawa-gibier.stores.jp/生き物がわらわらと…今年の4月から昆虫好きの後輩が新しく入ってきたのですが、彼の話を聞いているうちに僕も探してみたくなってしまい、最近よく集落をぶらぶらしています。すると、今まで気づかなかった虫がそこら中にいることが分かりました。自分の知らない世界の面白さを語ってくれる人がいると、こういう発見があってとても楽しいですね。まだまだ、集落内ですら知らないことが多そうです。研究活動もちろん、研究も進めております。ここ1か月は梅雨前の毎木調査を実施しました。丁度先日終わったところなので、データ整理はまだですが何か面白い発見があればまたご紹介したいと思います。梅雨時は前回ご紹介した土壌感染性の病原菌が活発に活動しやすい季節で、秋の調査の際に、どれほど実生が生き残っているのかが気になっているところです。間伐処理の強度によってその生存率が違ってくると面白いのですが、、、。毎木調査の風景実生の生存率へ影響しているものは何か?前回、Janzen-Connell 仮説における天敵として、土壌中に住む病原菌に注目するところまでご紹介しました。そこで、ここからは実際にどのような実験を行うのか説明したいと思います。ひとまず今日は、今年度に行う予定の実験で参考にしている論文を紹介します。Janzen-Connell 仮説 に関連して、土壌中の微生物と実生の成長や生存率について調査した先行研究は、前回紹介したSeiwa (2008)をはじめ世界中で行われています。例えば、Alissa & Keith (2000)は北アメリカでメジャーなサクラの仲間を使って次のような実験を行いました。まず彼らはSeiwaと同様に、親木からの距離に応じた調査区を設置し、実生の発芽数と生存率を調べました。そのグラフが下の図です。横軸が親木からの距離、左縦軸が実生の個体数、右縦軸が生存率になっています。Janzen-Connell 仮説 に基づいて予測すると、親木から離れるほど実生の個体数は減少し、生存率は上がると予想できます。このグラフはその予想と合致していますね。つまり、この実験を行った場所でもJanzen-Connell 仮説のメカニズムが働いている可能性があります。Alissa & Keith (2000). 横軸:親木からの距離.  a:1996年調査(n=212, 親木3本),  b:1997年調査(n=974, 親木6本 ),  c:1998年調査(n=266, 親木3本 ).  黒い三角:発芽した種子数(左縦軸). 丸:4か月後の生存率(右縦軸).  菱形:16か月後の生存率(右縦軸) .  四角:28か月後の生存率(右縦軸) ここまではSeiwa(2008)と変わらない内容ですが、Alissa & Keithはさらに注目した親木ごとに生存率の距離依存性がやや異なることに気が付きました。調べてみると、実生集団の大きさと相関していることが分かりました※1。この点について実は、Janzen-Connell 仮説 を提唱したJanzenが、「種子の収穫量が少ない樹木は、遠くにある生産性の高い樹木よりも、天敵からの影響が少ないのではないか」と示唆していました。つまり、親木の種子生産能力が低い場合は実生の個体数が少なく、距離の効果が薄まる可能性があるということです。これを踏まえAlissa & Keithは実験結果から、生存率と親木からの距離、隣接個体の密度の関係をモデル化しました。モデルからは親木からの距離も隣接個体密度も有意な予測因子として選択されましたが、密度よりも距離の方が影響力が大きいことが分かりました。下のグラフが模式図です。ここではaだけに注目してみて下さい。生存率を示すアミアミの面が右手前の角で最も高くなっているのが(なんとなく)分かりますよね。その面の傾斜に対し、手前横軸の親木からの距離(density to parent)の方が奥横軸(Neighbourhood density)よりも強く影響していますね。Alissa & Keith(2000) a:全ての個体データを用いた場合のモデル。b:やや成長した個体のみのデータを用いた場合。縦軸:生存率, 手前横軸:距離, 奥横軸:隣接個体密度Alissa & Keithはこの密度と距離の生存率との関係性をさらに詳しく説明しようと、操作実験をすることにしました。実験では、まず親木から近い場所(0~5m)と遠い場所(25~30m)で採集された土壌を持ってきます。そしてそれらの半分を殺菌します。この殺菌は土壌環境の中でも特に土壌中の菌類の影響を見るための処理です。つまりAlissa & Keithも天敵として土壌病原菌に注目していると言えます。この殺菌済みと殺菌していない土壌でポットを作り、1つだけ実生を育てるポットと、3つの実生を育てるポットを作ります。これが、密度を比べるための処理です。実験の処理をまとめると下の表のようになります。左から順々に読んでいくと各処理になります。例えば一番上を見ると、「親木から近い場所の土壌を殺菌せずに、疎で植えるポット」と読めます。合計8処理あることになりますね。これらのポットを使ってAlissa & Keithは生存率を比較しました。では結果を見ていきましょう。下が結果になります。ごちゃごちゃしているので、まず点線でつながっている記号だけに注目して下さい。すると、親木に近い土壌で高密度で植えたポットでは生存率が著しく低いことが分かります。ところが、遠い土壌では生存率は上昇していますね。また、疎に植えることで、近い土壌でも高い生存率を維持できることも示されています。つまり、親木からの距離が生存率へ及ぼすためには、実生の密度が重要になることが分かります。では親木からの距離で土壌の何が変化しているのでしょうか?実線でつながった記号に注目しましょう。これらは殺菌した土壌で生育した場合を示しています。すると、どれも高い生存率を示していることが分かります。つまり、土壌中の菌類が生存率へ影響していたと言えます。Alissa & Keith(2000)縦軸:実生の生存率 横軸:距離 四角:疎植 黒丸:密植 実線:殺菌処理した場合の変パターン 点線:殺菌していない場合のパターンまとめると、この論文ではJanzen-Connell 仮説 を成立させている天敵が土壌菌類であり、それらが実生の密度によって変化していることが分かりました。植物と土壌の関係が常に一定であるのではなく状況依存的に変化することを示した面白い論文です。次回以降、これらの論文を参考にどのような実験を行っていくのか紹介したいと思います。※1:初期個体群の親木からの平均距離と時間経過後の生存個体の親木からの平均距離の差が、実生集団の個体数と相関があった(P=0.04)。森林の炭素固定能が温室効果ガス排出の免罪符になっている?最後に、気になるニュースがあったのでご紹介したいと思います。今回紹介する記事は日本経済新聞の6/13の記事『脱炭素へ走る企業、CO2「帳消し」のワナ』です。簡単に内容をご紹介したいと思います。まず、みなさんご存じの通り、樹木を含む植物は二酸化炭素を吸収して自身の体を大きくしていきます。この機能が排出された温室効果ガスを吸収し、温暖化を抑制できるとし、近年植林や森林保全・整備が進められてきました。また京都議定書ではCO₂の削減目標に森林の吸収機能が計算に入れられることとなり、発展途上国と先進国の間で排出枠の取引が行われるようにもなりました。その後、削減目標のために企業へ環境貢献が求められるようになると、植林や森林保全活動により発行される炭素クレジットを買うことで、自企業が排出した二酸化炭素を相殺し、企業の社会的役割を果たそうとする動きが活発になってきました。しかし、この「排出量の相殺」の概念は温暖化抑制へつながっているのか?と記事は問いかけています。例えば、アメリカのペンシルベニア州やサウスカロライナ州などの自然保護区を対象に、世界的な自然保護団体が発行した炭素クレジットは、そもそも伐採の心配が無い森林が対象になっていました。購入した企業は『環境貢献』という面では無意味なクレジットを購入したことになります。さらに、ブラジルの森林再生プロジェクトで発行されたクレジットは、売却後に対象の森林が伐採されたことが明らかになっています。CO₂削減につながらないどころか負の影響を及ぼしているのにも関わらず、企業は排出に関して免罪符を手にした形となっているというのです。民間団体が好きなようにクレジットを発行し、ルール作りが不十分である現状では 、共通した厳格な監督機関がないことが大きな問題となります。今のところ認証の7割を手がけているとされる米基準管理団体Verraは、国際排出量取引協会(IETA)や持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)などが設立した信頼性の高い組織とされていますが、それでも審査の甘さが問題になっているそうです。つまり、システムが不十分であるのにも関わらず、企業の排出活動の免罪符として炭素クレジットが急速に普及してしまっているというのです。その場合、企業は免罪符を手に入れたので排出抑制への積極性を失い、しかも免罪符は表面上のものなので実態が分からず、環境改善へ向けた努力が停滞してしまうことになります。記事ではこのことを危惧していました。そもそも、森林の吸収機能は技術的な排出抑制が限界まで達した時の補助的な役割として考えられていました。しかし、京都議定書で自国の経済への打撃を恐れたアメリカ(結局、京都議定書に批准することはありませんでした。)が、CO₂の削減目標には森林の吸収機能も計算に入れるべきだと主張し、途上国との排出枠取引も整備されました。それ以降、補助的なものだったのが、安価で環境貢献している口実を作れる「排出量相殺」の概念が加速してしまったようです。森林保全や整備を口実に、企業の排出削減に関する努力をしないのは非常に残念な話だとは思います。また、「なんだ。森林は温暖化抑制への貢献度が低いのか。」と、人々の評価が下がってしまうような結果となったことにも悲しみを覚えます。炭素クレジットのルール作りをしっかりと行ったうえで、炭素固定機能だけに注目するのではなく、他の環境調整機能や文化的機能の面からも森林の価値が評価されると良いなと思う話題でした。参考文献・Alissa Packer & Keith Clay. 2000. Soil pathogens and spatial patterns of seedling mortality in a temperate tree. Nature volume 404, pages278–281・日経 6/13 脱炭素へ走る企業、CO2「帳消し」のワナ Global Economics Trends 編集委員 西村博之


夜の森に光生き物たちこんにちは。気付いたら梅雨入りして雨続きの日々になりました。平井を含む熊野一体は日本有数の多雨地域で、バケツをひっくり返したような雨が一日中続くこともしばしばあります。雨続きだと山に入るのも億劫になってしまいがちですが、この時期、山の中ではひっそりと光る生き物が出てきます。その一つが表紙画像のシイノトモシビタケです。スダジイの倒木に発生するキノコで、紀伊半島には日本一と言われる群生地があります。月明りで見えなくなってしまうぐらい僅かな光ですが、ぼおっと暗闇に浮かび上がる姿は目を見張るものがあります。ホタルまた、清流だらけの古座川流域には蛍の群生地もちらほら。今まで見たことのない大群が小川の上を飛び交っており、さながら天の川のようです。都会のホタル観賞会のように行列に並ぶ必要もなく、この景色を独り占めできるので最高の贅沢をしている気分でした。コアジサイ間伐した場所の近くではコアジサイが咲いていました。普通のアジサイよりも小柄なこちらの花は、もちろん光ることはありません。しかし、この花が好きな研究林の職員さん曰く、「薄暗い中で見ると花がボォッ浮かび上がる」そうです。言われてみれば、湿っぽい立体感が景色の中から花を際立たせています。こちらもこの季節ならではの楽しみですね。実生の天敵前回、Janzen-Connell仮説についてご紹介しました。Janzen-Connell仮説の成立には、母樹付近で実生や種子の天敵密度が高まる必要がありましたね。では、実生や種子の天敵とはどのようなものなのでしょうか?樹木と考えるとイメージしにくいかもしれませんが、野菜で考えるといかがでしょうか?例えばアブラムシは葉や茎に寄生し、汁を吸うことで苗を枯らしてしまいますね。また、うどんこ病や立ち枯れ病、根腐れ病など土壌や空気が媒介する病原菌も苗を枯らしてしまうことがあります。さらに近年は山から下りてきたシカやサルが農作物を食べてしまい苗の成長や生存を阻害しています。研究林内や買い物の道中でもよく見かけるシカ樹木の実生も基本的に同じものが天敵となります。実際に、前回ご紹介したSeiwa(2008)の論文でもウワミズザクラの枯死因が調査されています。それが次の2つグラフです。上のグラフは季節ごとの枯死因の変化、下のグラフは母樹からの距離による枯死因の変化です。Physicalは物理的破損、Vertabratesはシカなどの脊椎動物による食害、Invertabratesは昆虫など無脊椎動物による食害、Leaf diseaseは主に空気感染性の葉の病害、Damping-offは立ち枯れ病など土壌感染性の病害です。ウワミズザクラの枯死因(Seiwa et al. 2008) このグラフを見てみると、東北の温帯林ではDamping-offやInvertebratesが主な枯死因となっており、特に梅雨時期にはDamping-offの影響力が大きいことが分かります。このSeiwa(2008)から、僕の研究では土壌感染性病原菌の天敵としての役割に注目することにしました。立ち枯れ病を起こし枯死した実生次回からはこの「土壌」に注目した実験についてご紹介したいと思います。参考文献・Seiwa Kenji et al. 2008. Pathogen attack and spatial patterns of juvenile mortality and growth in a temperate tree, Prunus grayana.  CANADIAN JOURNAL OF FOREST RESEARCH 38: 2445–2454 


5月も中旬になり、和歌山研究林の周辺ではツバメが忙しく飛ぶようになりました。トップの画像はふもとの商店の軒下にあったツバメの巣です。沢山の子どもが餌を待っています。黄色いクチバシが可愛らしいですね。コゲラの巣別の場所ではコゲラが巣を作っていました。こちらも小さい穴から顔をのぞかせる様子に愛嬌があります。車の音が少ない平井では鳥たちの声もよく聞こえるので、都会に住んでいた時よりもこうした変化に気付けるようになった気がします。トンボ夏に向かうにつれ見かける生き物の数も多くなってきました。川沿いや田んぼではトンボが飛び交っています。古座川町には日本最少のトンボであるハッチョウトンボが生息しています。先週生息地へ見に行ってみましたが、まだ出てきていなかったので見かけたら紹介したいと思います。勝手に引っ越してしまったミツバチ古座川町内ではゴーラという丸太をくり抜いた専用の容器での養蜂が盛んに行われています。ある日起きると家の前が何やら騒がしいので、様子を見に行ってみました。聞くに、飼っていたミツバチが勝手に引っ越してしまい連れ戻している最中だったようです。飼い主の方が女王蜂を箱の中へ入れると、それに連られるようにして群集も箱の中へ帰っていきました。ゴーラ折角なので少しお話を聞いたところ、ゴーラに入った蜂蜜は1個5万円以上の価格が付くこともあるとか。また、和歌山研究林のある辺りでは色々な花から密を集めてくるため、特別美味しくなるそうです。意外なことにミカン畑でとれる蜂蜜は、酸っぱすぎてあまり美味しくないということも仰っていました。参考(古座川町の観光協会の紹介ページ)。昨年度調査の報告②先週、昨年度の調査報告の前編をご紹介しました。その中で、天然林からの距離が長くなるにつれて、平均樹高が高くなる傾向をご紹介しました。少々分かりづらかったかもしれませんので、まず補足説明から入ります。天然林からの距離と平均樹高の傾向をより掴みやすくするため、まず2m以上の母樹となる個体を排除します。次に、各樹高の個体数が全体の個体数に占める割合を計算することで標準化したものが、下のグラフになります。これを見てみると、樹高の低いものは天然林に近いほど多く、樹高の高いものは天然林から離れるほど多いことがよく分かります。そしてこの傾向が、個体レベルでは認識されていることまで前回ご紹介しました。その事例がSeiwa(2008)で、東北地方の森林でウワズミザクラの個体に注目し、母樹周辺の実生の成長過程を追跡調査したものです。調査結果の一つに下の図が示されていました。ウワミズザクラの母樹からの距離と成長の経過観察の結果(Seiwa et al. 2008)このグラフを見てみると、母樹から遠いFar(三角印)では横軸(Age)が増加するにつれ、大きく高さ(Height)と直径(Diameter)が増加しているのに対し、母樹直下のUnder(黒丸)ではそれほど増加していません。年数経過後の個体群差はまさに僕の調査結果と類似しています。ではなぜ、このように母樹からの距離によって差が生じるのでしょうか?Janzen-Connell仮説それを理解するために、まずJanzen-Connell仮説という仮説をご紹介します。Janzen-Connell仮説 とは簡潔に言うと「なぜ森林が多様では多様な樹種が維持されているのか?」という問いに対する仮設です。言われてみると、ある種の樹木が供給する種子全てがしっかり成長できれば、森林は同じ木ばかりになってしまいます。しかし実際には少数の樹種で構成される森林というものは人工林以外には少なく(※高緯度では存在します)、国内の天然林を見てみても実に多様な種が存在していることが分かります。なぜなのでしょうか?その疑問に対しJanzenさんとConnellさんが同時期にある仮設を立てました。その模式図が下の図です。 Janzen-Connell仮説左の母樹は、種子を供給する親となる個体です。赤い線が母樹から供給される種子の数で、一般的に母樹から離れるほど供給量も少なくなります。一方、青い線は種子や発芽した実生の生存利率を示しており、母樹から離れるほど上昇していることが分かります。生存率が母樹から離れるほど高くなる理由は、母樹と同じ種を利用する天敵が減少するためです。例えばリンゴの木が草原に一本だけ立っている状態を想像してください。落ちているリンゴの数は母樹から離れるほど減りますよね。一方で、リンゴを食べたい昆虫や鳥は母樹に近い方が多くなることが想像できると思います。結果として、中程度の距離のところで誰にも食べられずに残ったリンゴが多く残り、新しい個体として成長できるようになります。ここで注目してほしいのは母樹直近では同種個体がほとんど生残出来ない空間が形成されていることです。同種が生存できないとどうなるでしょうか?よそから飛んできた他の種の種子なら定着できますよね。その結果、同じ種ばかりが密集するのを防ぎ、多様な森林が維持されていると説明したのがJanzen-Connell仮説 というわけです。 Seiwa(2008)もこのJanzen-Connell仮説が温帯林でも機能しているのか、検証することを目的としていました。実際、生存率も次の図のように示されています。ウワミズザクラ実生の生存率の推移(Seiwa et al. 2008)仮説どおり、母樹直近(Under)では時間が経過するにつれ、著しく生存率が下がっているのに対し、Farでは高い生存率が維持されていますね。その結果、遠くでは供給される種子数は少ないものの、生存率が高いため樹高や胸高直径が大きくなると考えることが出来ます。僕の調査地では、天然林に人工林が隣接している影響で、この現象が林分単位で起きているのではないかと考えました。つまり、天敵の影響を効率よく低減できれば、より広葉樹が更新しやすい環境づくりができます。では、和歌山研究林で広葉樹の実生にとって影響の大きい天敵とは何なのでしょうか?次回はそこから説明していきたいと思います。どうぞお楽しみに。ウッドショック最後に余談となりますが、最近木材の価格が高騰していることをご存じでしょうか?近所のホームセンターでも供給不足の影響を説明する張り紙が出されているので、お気づきの方も多いかもしれません。なぜ今、木材価格が急騰したのでしょうか?もともと世界の木材需要は2018年に2010年比で1.2倍と増加傾向にあります。一方、日本国内では2020年の新設住宅着工戸数は4年連続で減少しており、木材の輸入量を絞ってきました。ところが、アメリカではコロナ禍で郊外の住宅需要がリーマンショック以来の水準に増加、また中国でも需要回復を見込んだ木材輸入量の増加など、世界的には需要がさらに高まってしまいました。その上、コロナによる労働者不足やキクイムシによる森林虫害によって供給が不安定化してしまったのです。近所のホームセンターでも影響が出ていました2021年に入り、日本も需要回復を見込んで再び輸入量を増やそうとしましたが、混乱している木材市場に輸入量の少ない日本が入る余地は残されていませんでした。加えて、日本は規格や品質の基準が厳しいうえに複雑で、あえて日本に輸出してくれる供給先は多くありませんでした。結果、完全に日本が買い負けた形となってしまったのです。国産材の出番?では国産材で代用できないのでしょうか?品薄の影響が特に大きい建材について、部材ごとの輸入材の割合を見てみると、柱材では6割、梁材では9割が輸入材です。梁は強度や寸法の柔軟性が求められ、その点で国産材で主流となっているスギ・ヒノキよりもベイマツ製材やレッドウッド集成材の方が適していると言えます。もし、梁を国産材で代用しようとすると、その分寸法が大きくなり、設計や見積もりに支障をきたすのです。結果、住宅業界では工期の遅れや収益の圧迫が問題となっています。しかし、国産材の増産にも躊躇いの声が上がっているのが現状です。増産態勢を整えたくても、すぐに出来るものではないし、再度木材価格が急落する可能性も否定できません。また林業低迷期が長く続いた影響で、増産態勢を整える資金がないという根本的な理由もあります。脱炭素社会の実現には、いずれにせよ国産材の利用促進は不可欠です。今回のウッドショックを機に、国産材増産や加工技術の発展が加速することを願っています。参考文献・Seiwa Kenji et al. 2008. Pathogen attack and spatial patterns of juvenile mortality and growth in a temperate tree, Prunus grayana.  CANADIAN JOURNAL OF FOREST RESEARCH 38: 2445–2454 ・Bayandala, Yu Fukasawa, Kenji Seiwa 2016. Roles of pathogens on replacement of tree seedlings in heterogeneous light environments in a temperate forest: a reciprocal seed sowing experiment. Journal of Ecology 104 3:765-772・住宅業界に「ウッドショック」 突然始まった木材高騰 日本経済新聞 2021年5月9日 


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