毎週金曜、緊急避妊薬を飲んだ経験がある方のお話を共有する“#わたしたちの緊急避妊薬”のシリーズをnoteで公開しています。緊急避妊薬を飲むに至った大切な体験談を通し、身近にある現状の課題を「自分ごと」として考えられたらと感じています。そして、大切な経験を語ってくださったみなさまへ、心から感謝を申し上げます。※クラウドファンディング《“緊急避妊薬と性知識”で、若者に人生の選択肢を届けたい!#わたしたちの緊急避妊薬》のページもあわせてご覧ください。りなさん(仮名)は、現在、IT関連の会社に勤める20代の女性です。今回は、知り合いの男性と食事をした後に緊急避妊薬を服用することになった経験をお伺いしました。※筆者自身、ショックを受ける箇所がありました。苦しいことを思い出してしまいそうな方はお気をつけください目次母にもなかなか相談できなかった、兄からの性的虐待。後悔と、相手男性との間に感じた温度差。女性一人ではなく、男性も一緒に考えていける未来がくるように。母にもなかなか相談できなかった、兄からの性的虐待。――生い立ちのなかで、性に関する話をできる環境にありましたか?りなさん:私は小学校2年生の時に兄から性的虐待を受けていました。ただ、その時はそれが悪いこととはわかっていなくて、犯罪だということも知りませんでした。当時通っていた学童保育で5年生ぐらいのお姉さんに話をしたら、「それはいけない」と、私の母にも伝えてくれました。そのおかげで、本当にいけないことなんだと分かったんです。その頃から、「性とは何だろう?」と考えるようになりました。母は兄を叱ってくれて寝室を別にしてくれたのですが、両親が離婚して兄と離れて住むようになってからも、父の家に行くと兄からの虐待は続きました。結局、母には、被害を受けているということを20歳を過ぎるまでは伝えることはできませんでした。――恋人や友達とは性の話はできましたか?りなさん:できませんでした。最初に付き合った彼氏は、10歳以上年上の方だったので、「すべて知ってるだろう」「相手には間違いはないだろう」と受け身な状態でした。性について話しあう関係性ではなかったと思います。二人目の彼からはデートDV(※1)を受け、逆らうこともできませんでした。もちろん話し合いなんてできず、堕胎の経験をしたこともありました。友人には、生理の話や女性の体の話は気軽にできます。ただ、やっぱり緊急避妊薬を飲んだとか、堕胎した話に関しては難しかったですね。※1デートDV:交際中に起こる暴力のこと。暴力には性的・身体的・経済的・精神的なものが含まれます。――安心して頼れる存在がいなかったのですね。りなさん:はい。その後、ちゃんと付き合ったのが今の夫です。彼は、非常にジェンダー分野に関心が高く、女性の体を気遣ってくれます。性の話もしますし、女性の体に対して非常に親身になってくれます。後悔と、相手男性との間に感じた温度差。――緊急避妊薬を飲んだ時のお話を教えていただけますか?りなさん:大学生の頃、知り合いと呑みにいった時のことです。呑んでいる途中から(お酒で)意識が飛び、気づいた時には何も着てない状態で一緒にいた相手の家にいました。コンドームを使った形跡がなかったので、「これはちょっとヤバいかもしれない」と。堕胎の経験があったので、「もうこれ以上はもう自分の体を痛めつけるのも良くない」「新しい命を生まれさせてもいけないし、絶ってもいけない」と感じたのを覚えています。帰宅後すぐに病院を探して、予約しました。ーー当時の気持ちを教えていただけますか?りなさん:とにかく「最悪」という感じで相手に対しても、自分に対しても嫌悪感を抱きました。「性行為をするつもりなんてなかったのに」と自己管理の甘さを責めましたし、すごく後悔しました。ーー彼には伝えられましたか?りなさん:病院に行った後、性行為をした相手に、お金を払ってほしいと連絡すると、「わかった」と返ってきました。喫茶店で待ち合わせをしたんですが、「お疲れ~、いくらだった?」と言われたんです。私が緊急避妊薬を飲んだことに関して、何にも思ってなさそうな態度を見て、相手のことは何も考えていないんだなあって感じたのを覚えています。女性はお金もかかるし、気持ち悪くもなる。なのに向こうは射精して、お金を出して終わり。責任感の重さの違いというか、温度差を感じました。女性一人ではなく、男性も一緒に考えていける未来がくるように。ーーその後、行動の変化はありましたか?りなさん:より一層気をつけようと思いましたね。わたしの場合、緊急避妊薬を飲んだ後は、胸焼けみたいな胃がムカムカするような感じがありました。気持ちの面でも、次の生理がくるまですごく不安でした。飲んだことによるものなのか、精神的なものなのかは区別はつかないのですが、とにかく気持ち悪かったです。緊急避妊薬は、身体面にも経済面にも負担が大きいです。本当にしょうがない時にしか使えないものだからこそ、もう起こさないようにしようって思います。ーーどのような思いでこの取材を受けてくださいましたか?メッセージがあれば、お願いします。りなさん:望まない状況では絶対に緊急避妊薬を飲んだ方がいいし、そうならないのが一番良いですよね。でも、そうは分かっていても、避妊できない環境であったり、境遇になってしまうことがあります。これは女性だけでどうにかできる問題ではありません。男性だけがどうにかしてくれるわけでもありません。妊娠は二人の間でおこること。自分一人ではなく、二人で解決できるようにしていけたらいいと思います。――ありがとうございました。インタビュー/小谷 真以花文/辻 奈由巳
毎週金曜、緊急避妊薬を飲んだ経験がある方のお話を共有する“#わたしたちの緊急避妊薬”のシリーズをnoteで公開しています。緊急避妊薬を飲むに至った大切な体験談を通し、身近にある現状の課題を「自分ごと」として考えられたらと感じています。そして、大切な経験を語ってくださったみなさまへ、心から感謝を申し上げます。※クラウドファンディング《“緊急避妊薬と性知識”で、若者に人生の選択肢を届けたい!#わたしたちの緊急避妊薬》のページもあわせてご覧ください。神田 沙織さん(以下、沙織さん)は、株式会社wipをパートナーと経営しながら、数々のソーシャルアクションを行う社会活動家としても活動されています。今回は、20代の時に緊急避妊薬を服用された経験をお伺いしました。目次生理用ナプキンはトイレットペーパーと同じぐらい、当たり前のものだった学生時代偶然でも知ることができた、自分の体のこと結婚をしていても、避妊という選択肢があっていい生理用ナプキンはトイレットペーパーと同じぐらい、当たり前のものだった学生時代ーー生い立ちのなかで、性に関する話をできる環境にありましたか?沙織さん:性に関してはオープンな家庭だったと思います。二つ年下の弟に「生理用ナプキンを買ってきて」と頼むのはトイレットペーパーをお願いするくらい当たり前のことでした。あと、父親から下着を買うためにお小遣いをもらうこともありました。中学生の時には、母から「もし使うならコンドームあげるよ」といわれたことも。断りましたけど(笑)。最初に生理について意識した小学生の時の出来事をはっきり覚えてます。ある日、一緒に下校していた6年生の女の子に「トイレを貸してほしい」と困ってる様子でいわれたことがあって。小学生向けの漫画雑誌の一番後ろに、少しだけ生理についても知識が書かれている生理用ナプキンのカラーページがいつもついていたんですね。それを指さしながら「お姉ちゃん、もしかしてこれなの?」と聞きました。「そうそう、そうだよ」と会話をした時に「そんな風になるのか」と意識したことを覚えています。偶然でも知ることができた、自分の体のことーー緊急避妊薬を飲んだきっかけを教えていただけますか?沙織さん:20代の頃、性行為時にコンドームが外れたことがきっかけです。パートナーとは性感染症などお互いの体を守ることについては話していましたが、妊娠については想定しておらず、二人とも「これはまずい」と焦りました。過去、友人から相談されて避妊に失敗した後について調べたことがあり緊急避妊薬の存在は知っていたので、すぐに近くの病院で処方してもらいました。彼から「いくらだった?」と聞かれて、かかった費用を割り勘したことを覚えています。それでも、「高いな!」と思いましたけど。ーー病院での様子はいかがでしたか?沙織さん:かなり事務的な感じでした。淡々としすぎてあんまり記憶に残ってないくらいです。ただ、避妊以外にも体にまつわる心配事があったので、その検査の方が印象に残っています。私、B型のRhマイナスと少し珍しい血液型なんです。この血液型だと、妊娠をした時に胎児との血液型の不適合が起こったり、初回の妊娠で抗体が出来た場合に2回目以降の妊娠に良くない影響があったりするらしく。もし妊娠が成立していたら、「将来子どもが欲しいときに影響があるかも」と心配で、合わせて検査をお願いしました。ーー血液型や妊娠への影響はどういった経緯で知りましたか?沙織さん:献血に行った時に知りました。それまでB型Rhプラスだと思っていたので、「妊娠にまつわること以外でも自分の体について全然知らないんだな」とすごく感じました。妊娠時のリスクについては、当時通っていた婦人科の先生から伺いました。どんな影響があるとか、将来妊娠する時は念のため大きい病院に行く必要があるかもね、と丁寧に教えてくれて。正直、低用量ピルをもらうためだけに診察に行くってめんどくさいな、と感じることもあったけど、今となっては信頼できる医師と話す時間や接点があってよかったなと思います。結婚をしていても、避妊という選択肢があっていいーーその後、行動の変化はありましたか?沙織さん:避妊するためのコンドームの付け方やいつでも使えるように置く場所を意識するようになりました。ただそれ以上に、パートナーと将来や健康について話すきっかけになりましたね。「今回は二人で向き合って乗り越えることが出来てよかったけど、私たちってどうしたいんだっけ?もし結婚してたらひやひやしなくてもよかったのかな?」って。話していく中で、二人とも結婚してから妊娠と考えていることに気づいたので、それから1年程で法律婚(※1)をしました。向き合って話せる人なんだと、お互いの信頼に繋がったことも大きいと思います。※1 法律婚とは…婚姻届を自治体に届け出て、法律上の婚姻関係になること。ーーご夫婦で起業されていますが、キャリアに与えた影響はありますか?沙織さん:今でこそ子育てに関するソーシャルアクションなどを行っていますが、夫婦で起業した会社はコンサルティング業でした。会社を立ち上げた半年後に妊娠が判明し、望んではいたけど思い描いていたマタニティライフとの違いに驚きました。でもそれって、ロールモデルが少なかったからかな、と考えていて。起業家女性の妊娠、出産に関する情報ってすごく少ないんですね。調べていくうちにそもそも経営者だと産休や育休がないことを知りました。自営業者やフリーランスと会社員を比べた時、出産や育児にかかるお金に大体250万円くらい差がある(※2)んですよ。「じゃあ被雇用者(正社員)の間に妊娠、出産した方が絶対お得だったじゃん!」と驚愕しました。この手痛い経験から、2017年に女性起業家6名と『非正規雇用や自営業者の女性の産休・育休がないことに対するソーシャルアクション(※3)』を行いました。厚生労働省の省内記者発表や署名集め、データを元にしたロビイングにもつながったんですが、この時に、実体験を持った人が声を上げないと争点にもならなければ、政策にもあがってこないし、調査すら行われないことを実感しましたね。※2 出産のために会社を休む場合、雇用形態などの条件を満たしている場合『出産手当金』や『出産育児一時金』など条件によって受けられる手当があります。また、万が一お子さんが重度脳性まひになった場合補償される『産科医療補償制度』などもあります。※3 非正規雇用や自営業者の女性の産休・育休がないことに対するソーシャルアクション…参考記事はこちらーー読者へのメッセージをお願いします。沙織さん:避妊って、未婚の女性に関する問題として捉えられがちだと思うんですね。でも、結婚をしていてもこれ以上子どもを持てないとか、本当は避妊をしたかったからと緊急避妊薬を使うことがあっていいと思ってます。結婚した途端に「せっかく授かったんだから」という風潮は女性を産む機械として扱うことにつながるし、女性が自分の体に対して自分でコントロールすることに社会が干渉する、それ自体にすごく違和感があるんですよね。子どもを持つことや結婚に対して、人それぞれに考え方があるし、それぞれの立場があると思います。ただ、性行為と妊娠や出産は切り離せないからこそ、世代の違う女性同士が立場を超えて、もっと大きく連帯出来ればな、と思っています。ーーありがとうございました。インタビュイープロフィール神田沙織(かんだ・さおり)株式会社wip取締役代表であり、一般社団法人母親アップデート理事。平本沙織として「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」の発起人や「子連れ100人カイギ」実行委員長を務めるなど、社会活動家として幅広く活動中。■Twitterインタビュー/中村 恵文/高山 秋帆
毎週金曜、緊急避妊薬を飲んだ経験がある方のお話を共有する“#わたしたちの緊急避妊薬”のシリーズをnoteで公開しています。緊急避妊薬を飲むに至るまでの体験談を通し、身近にある現状の課題を「自分ごと」として考えていけるといいと考えています。そして、大切な経験を語ってくださったみなさまへ、心から感謝を申し上げます。※クラウドファンディング《“緊急避妊薬と性知識”で、若者に人生の選択肢を届けたい!#わたしたちの緊急避妊薬》のページもあわせてご覧ください。友美さん(仮名)は、現在、養護教諭をされている20代の女性です。家庭内の雰囲気に影響を受け、「性は恥ずかしいもの、気軽ではないもの」と感じられていたそう。今回は、初めてお付き合いをしたパートナーとの関係から、緊急避妊薬を服用された経験をお伺いしました。目次恋愛や性の話は「恥ずかしい」ことなんだ。お互い大切にしあえる人との性行為を大事にしてほしい。恋愛や性の話は「恥ずかしい」ことなんだ。――生い立ちのなかで、性に関する話をできる環境にありましたか?友美さん:家庭内では恋愛の話すらも出来ませんでした。祖母が清廉潔白を重んじる人だったのでドラマのキスシーンが流れると嫌悪感を示す表情をしたり、歌番組で腰を回すダンスが披露されると「こういうのはいやらしい」といった発言をしていたので、“この家では性にまつわることは恥ずかしいことなんだな”と強く印象に残りました。中高生の時には経験もなく、イメージだけだったので性行為は友人とふざけて話すネタでした。高校生になると「初体験したよ」と周りから聞く機会が増えて、盛り上がることはあっても悩みを相談することはなかったです。ただ、中学生の時に受けた保健体育の授業で、女性の先生が「生理についてなにか不安なことはありますか?」とアンケート形式で聞いてくれたことがあったんです。その時は「生理不順な気がする」と素直に書けたことを覚えています。――緊急避妊薬を飲んだきっかけを教えていただけますか?友美さん:当時、お付き合いをしていたパートナーと、初めて性行為をする時に「コンドームをしなくてもいい?」と聞かれました。元々、緊急避妊薬の存在は知っていたんです。高校生の時に保健の教科書で見たり、養護教育の性に関する勉強会で手にした「日本家族計画(※1)」の冊子に載っていて、「こんな薬があるんだ、すごいな」と印象に残っていました。だけど、いざとなると断れなくて。“1回ぐらいなら大丈夫でしょ”と思って承諾しました。翌朝、目が覚めると頭の中に、日本家族計画の冊子で見た文字がリアルに浮かび我に返って、すぐに日本家族計画の相談窓口(※2)に電話をかけました。事情を説明すると「産婦人科に行ってね」と言われたので近くの病院を探して処方してもらいました。※1:日本家族計画…一般社団法人 日本家族計画協会(JFPA)は、家族計画・母子保健の普及啓発のための事業を推進している公益民間団体※2:日本家族計画の相談窓口…https://www.jfpa.or.jp/puberty/telephone/お互い大切にしあえる人との性行為を大事にしてほしい。ーー処方時のお気持ちはいかがでしたか?友美さん:とにかく、不安でいっぱいでした。今後の人生についてたくさん考えました。お付き合いを始めた時には、“これで処女が喪失できるぞ”と喜んでいたところもあって。それまでは、“もう二十歳だし、早く処女喪失しないとやばいんじゃないか”と焦っていました。そんな理由でお付き合いを始めた相手だから、結婚する気もないのにどうしよう、と考えるほどに不安が募りました。診察時にはお医者さんに「ちゃんと避妊したんですか?そんなんじゃダメですよ」と、厳しいことを言われて、“ダメなことをしたんだな”とまた落ち込みました。幸い、服用後の体調に大きな変化はなかったです。ただ、妊娠検査の結果が出るまでは精神的にかなりまいってました。何をしていても“もしも、陽性だったら……”という考えが頭に浮かび落ち着かず、食事・入浴・排泄以外は心配で力が入らず布団に横たわって過ごしました。ーー検査結果を聞いた時のお気持ちを教えてください。友美さん:妊娠検査の結果は陰性で、ほっとしました。その時はお医者さんも優しく、「陰性が分かってよかったね。低用量ピルもあるから、これからは避妊をしてね」と言われました。ただもうひとつ、最後に「もっと自分を大切にするんだよ」とも言われて困惑しました。「自分を大切にする」ってよく聞くけど、具体的にどういうこと?みんなどうやって自分を大切にしてるんだろう?と疑問が浮かびました。ーーその後、行動の変化はありましたか?友美さん:当時のパートナーに緊急避妊薬を飲んだことを伝えて、「次からちゃんとコンドームを使って」と伝えました。避妊はするようになったけど、すぐにお別れすることになりました。その後、お付き合いする人には必ず過去に緊急避妊薬を飲んだ経験と怖かった気持ち、不安な気持ちを伝えるようになりました。その時の反応を見て、この男性は安心できるかできないか、判断する基準が変わりました。ーーどのような思いでこの取材を受けてくださいましたか?メッセージがあれば、お願いします。友美さん:周りから「彼氏が避妊しないんだよね」「俺も周りもみんなコンドーム使わないから」などの話を良く聞く機会があって、自分の経験を活かして、避妊をしないとリスクがあるんだと伝えたいです。女性はもちろんですが、男性にも。また、処女喪失や童貞卒業にこだわらないでほしいな、と思っています。周りと同じじゃない自分に自信がないことは、私が緊急避妊薬を飲むに至った原因の一つでもあります。みんなと一緒じゃなくていいから、お互い大切にしあえる人との性行為を大事にしてほしい。年齢なんて関係ないから、周りと同じことよりも自分の安心安全を優先してほしいな、と思っています。――ありがとうございました。インタビュー/小谷 真以花文/高山 秋帆
毎週金曜、緊急避妊薬を飲んだ経験がある方のお話を共有する“#わたしたちの緊急避妊薬”のシリーズをnoteで公開しています。緊急避妊薬を飲むに至るまでの体験談を通し、身近にある現状の課題を「自分ごと」として考えていけるといいと考えています。そして、大切な経験を語ってくださったみなさまへ、心から感謝を申し上げます。※クラウドファンディング《“緊急避妊薬と性知識”で、若者に人生の選択肢を届けたい!#わたしたちの緊急避妊薬》のページもあわせてご覧ください。愛さん(仮名)は、現在フリーランスでふたりのお子さん(20代・10代)を持つ40代の女性。10代の頃は、ご自分の家族から逃げ外世界へ連れ出してくれる誰かを求めていたそうです。今回は、元パートナーとの関係の中で、緊急避妊薬を飲むのに至った経験をお話ししてくださいました。※筆者自身書いていて、自分の過去と重なり、トラウマを刺激されショックを受ける箇所がありました。苦しいことを思い出してしまいそうな方はお気をつけください目次 必死でつかんだ“外の世界”に出る手段。「我慢しなくては」と、誰にも相談できずにいた結婚生活。「必ず相談できる人はいる。今、不安の中にいる人も諦めないでほしい」という思い。必死でつかんだ“外の世界”に出る手段。――生い立ちのなかで、性に関する話をできる環境にありましたか?愛さん:前提として、わたしの親は、“わたしがいい子で自分の望む形の子どもに育ってほしい”っていう思いが強すぎるいわゆる「毒親」でした。高校生になるまでに暴力も受けたし、友だちと一緒にいるところを尾行されたこともあります。例えば「生理って何?」と聞くと怒られる。「痴漢に遭った」と泣いていると、「あなたがボーッとしているから」と怒られる。そういう親だったので何一つ性の知識がなくて。性行為については、コンドームを避妊に使うものだという認識はありました。ただ、どういう形状で、どう使うのかを知らなかった。知ってから衝撃を受けたのは、小学校2年のときあった性被害、あれはコンドームをつけさせられていたんだ…!というびっくりでした。それぐらい無知でした。だから、(コンドームを)つけないということがどういうことか、どういう行為をすれば、妊娠に至るのか、すっぽ抜けている状況だったんですよね。そんな親元で「誰かこの環境から連れ出してほしい」と思っていました。それで、18歳から付き合いはじめたのが、12個年上の男性。それが元夫なんですね。19歳で妊娠が判明するわけですが、これを期に家を出られると思ったら結婚もありだなと。――パートナーとは、いかがでしたか?愛さん:今思うと、最初から痛いとか怖いとかそういう思いを何度もするような、対等ではない関係性での性行為でした。それに当時のわたしは相手を喜ばせることを優先した方が、自由になれるって思っていたんです。結婚生活でも、思いやりに欠けた性行為が続きました。例えば、出産後まだ体が戻ってもいないのに、わたしは夜も寝ずに育児をしていても、性行為を強要されたり、避妊をしてもらえなかったりということもよくありました。「我慢しなくては」と、誰にも相談できずにいた結婚生活。――緊急避妊薬を飲んだきっかけを教えていただけますか?愛さん:正確に覚えていないけれど、20代の半ばぐらい。ある時、性行為の途中で(コンドームが)破れたということがあったんですね。その頃には「この行為は、妊娠に至るんだ」ということが身をもってわかっているし、危機感もあるわけですよね。すごく怖かったんですよ。でも、わたし自身が性の話題って汚いもの、話してはいけないものって親にいわれて育ってきたのもあって、誰にもいえない。「どうにかしないと」と、当時はまだ一般的ではなかったインターネットを使い対策を調べました。そこではじめて、緊急避妊薬というものがあるというのを知ったんです。婦人科に行って診察を受けると「何しちゃったの。次は気をつけなさいよ」みたいな感じでお説教を受けたことも覚えていますね。――飲んだ後に、体調に変化はありましたか?愛さん:わたしの場合は、副作用で生理痛のちょっと酷い版みたいな感じになって。もう本当に痛い。あと、わたしの場合は食欲がなくなり、吐き気も感じはしましたね。緊急避妊薬を飲んだ後って、ダラダラ血が続くのが結構長く続いたんですよ(※1)。次の生理まで結局答えがわからない(※2)ので、「これでいいのかな、この飲み方でよかったのかな」とメンタル面では不安もありました。(※1:症状には個人差があります。愛さんの症状は多くはありませんが、そういう症状がある方もいます)(※2:緊急避妊薬の種類や服薬した時間により避妊成功率は変化します。避妊が成功したかは、服用3週間後以降の妊娠検査薬での確認か次の月経がくるまでわかりません。)――パートナーと緊急避妊薬を飲んだことについて、お話はできましたか?愛さん:伝えても、他人事でした。「高額な薬を飲んで、こういう状況になったんだけど」といっても、「ふーん」という感じ。結局その後も、妊娠したかもって瞬間は何度かあって。当時、インターネットで見かけた「低用量ピルの何錠かを一気に飲めば緊急避妊薬と同じ効果があります(※3 医療的に認められていません)」みたいな不確かな情報を頼りにしたこともありました。本当につらかったけど、自分にとってはそこが緊急避難の場所だったから。また、実家に戻って子育てをやらなきゃいけないのかと思ったら、やっぱり我慢しなきゃと。その後も、なかなか離婚ができないと思っていたんですが、子どもが大学に進学をするよっていう時に、大学の費用も「俺払わないよ」といわれて。「もう、こいつはだめだ」と離婚を決意しました。そこから、わたしの人生はじまったなっていう感じがあるんですね。「必ず相談できる人はいる。今、不安の中にいる人も諦めないでほしい」という思い。――愛さんにとって緊急避妊薬は、どのようなものでしたか?愛さん:わたしにとっては、不安の中の一筋の光でした。手探りで、やっと見つけた自分をコントロールできる方法一つ。これがなかったら、もっとわたしの人生むちゃくちゃになっていた可能性があり、自分の体を自分で取り戻すことが少しでもできたきっかけにはなったかなって。――ありがとうございました。#教育#セックス#性教育#アフターピル#緊急避妊薬#わたしたちの緊急避妊薬
クラファンページを読んだ方から寄せられた質問とその回答を、プロジェクト参加されているみなさんにもお伝えさせていただきます。ー親に相談しなくても買えるようになってしまったら、親が子どもの状況を把握できないんじゃないかまず、大前提ですが、どんな価格設定にしても親に不安な性行為の経験について相談できない人はいます。現在も、親に相談することができないために避妊薬を購入することを諦めたり、友人からお金を集めたり、相談せずに親の財布からお金を抜き取ったりして、親に相談しないで薬を購入する選択をしている子たちが一定数います。そして、「その子が 誰にカミングアウトするかと そのタイミングは、自分で選択できる環境であるべき」だと私は考えています。確かに親の立場からしたら、「そういう不安な状況なら相談してほしい」と思うかもしれませんが、そのような気持ちを持っている方であれば、普段から子どもに「不安なことがあったら相談してね」と伝えることができると思います。その場合、さほどこの問題について心配する必要はないと思います。一方で、親と子が相談しやすい関係を築けていない場合、子どもが「怒られるかも…」と悩んでいたり、親から虐待を受けていて、そもそもそんな話をする選択肢がなかったり、性行為(性被害)の相手が親族や兄弟だった場合も親に「すぐに」相談することはかなり難しいことが考えられます。早ければ早いほど避妊効果が高いという特徴が緊急避妊薬にはあります。つまり、その子の体を守るためには、一刻も早く緊急避妊薬を飲むべきなのですが、「親」に話すことを必須にしていると服薬をそもそも諦めてしまう子がいるのです。繰り返しますが、「その子が 誰にカミングアウトするかと そのタイミングは、自分で選択できる環境であるべき」と、思っています。