■『モノノメ』の誌面デザインの検討会をしました宇野です。いま、『モノノメ』は7割型原稿が集まってきていて、だんだんとデザインの方に作業の比重が移ってきています。ただ、今回はここが大変です。新創刊なので、デザインのコンセプトからやり直さないといけないからです。せっかくあたらしく定期刊行の雑誌をつくるのだから、デザインだけではなく、判型や使用する紙まで含めてゼロから考えてみたい。そう考えて、実は水面下で何ヶ月も話し合ってきたのでした。『PLANETS』 はvol.8からvol.10まで、基本的には同じデザインのフォーマットを使用していて、あのときもしばらく考えて、悩みに悩んであの判型とデザインのフォーマットをつくっていきました。あのとき僕が考えていたのは、インターネットのウェブサイトのような雑誌のデザインです。シンプルで、フラットで、読みやすくて、視線をジグザグさせたり、文字と画像を重ねたり絶対にしないということ。そして、対談や座談会を中心に目次を組むことにしていたので、それに特化したレイアウトのパターンをいくつかつくること、でした。(今回のデザインを担当する館森則之さんには、何度も、いろいろなパターンのものを出してもらっていて、本当に感謝しています。)今回の『モノノメ』は、いままでの『PLANETS』に比べて「書きもの」の比重が圧倒的に高くて、そこをどう見せるかが一番の鍵です。あと、写真をたっぷり見せたい記事も多いので、それをどう贅沢に見せるか。この二つが課題です。そして、僕と一緒に読者も少し年齢を重ねているので、ほんの少し、「大人」にしたい。これまでの『PLANETS』は僕の中では「28歳の雑誌」なのだけど、今回の『モノノメ』は「33歳の雑誌」です。その「33歳感」をうまくデザインや印刷、製本に落とし込めたらいいなと思っています。ほんの少しの差かもしれないですけれど、これが意外と難しい。そしてこの難しさを超えていかないと表現できないものがあるわけです。ちなみに、今回は「モノ」としていいものにしたいということも考えていて、一緒にベースから造っていけるところということで、藤原印刷さんにお願いすることにしました。(写真は館森則之さんと藤原印刷の藤原章次さんです)。もちろん、批評誌なので文字が主役なのですが、写真を始めとしてビジュアルにもこだわり抜いています。モノとしての見た目や質感もいろいろ挑戦することになりそうです。そして、これが重要なのだけど文字と違って、誌面のデザインや印刷、製本周りは僕はその道のプロフェッショナルからの提案をジャッジするだけで、なんというかテキストよりも無責任にどんどん意見が言える立場にいます。館森さんや藤原さんには本当に申し訳ないけれど、これが無限に楽しい。デザイナーから上がってきたレイアウトに、ああでもない、こうでもないと考えているときが、僕は雑誌づくりでいちばん楽しいです。ああ、無責任クリエイティブって本当に楽しいだけで最高だな、といつも思っていることをここに告白しておきます。クラウドファンディングは8月20日(金)まで実施中です。詳しくはこちら。
都内某所に○○の取材に行ってきました宇野です。昨日は「モノノメ」創刊号の最後から3番目の取材に都内某所に足を運んできました。創刊特集のテーマには「都市」を選びました。ただ、従来の都市論とはかなり毛色の違ったものになると思います。だからグローバルな都市間競争のなかで東京がどう生き残っていくかとか、都市開発計画を地域コミュニティがハックすることで「街づくり」が盛り上がる、とかそういう「儲かりそうな」話とか「ほっこりするいい話」を期待されているとちょっと肩透かしかもしれません。その代わり、僕が考えているのは一度「人間の目」を捨てて都市を読むというものです。コロナ・ショックの波が東京に押し寄せたとき、具体的には最初の緊急事態宣言のとき、僕は無人の都内を走るのが好きでした。そこには人間が人間のために造った都市から人間だけが排除されている奇妙な空間が広がっていました。空も川も、建物も道路も、木々も花も、鼠もゴキブリも何事もなかったかのようにそこにいた。僕はこのとき、考えました。一度人間「以外」の目から都市を見てみよう、と。人間間のコミュニケーションと都市を考えるとき、僕たちはいまサイバースペースにはまだ担えない実空間の機能とは、という視点からしか語ることができなくなっている。だからあえてここはそうではなくて、都市という空間そのものを、土地そのものを考えてみたい。人間が他の人間と交流するための場ではなく、他生物や事物に触れる場としての都市を考える。人や街の生物やモノや建造物がそこに存在し、変化する条件を考える。こうした視点から現代の都市を再照射することで、最終的には別の角度から人間にとっての都市を考えることに回帰する。そのような、特集を考えています。そして昨日はその最後の取材として、ある生物の姿を追いかけて都内某所に足を運びました。そこはトラックとコンテナとその生物の街で、東京の一部とは思えない街でした。人間が主役から退場したその街は、ある意味、僕が考えた今回の特集にピッタリの街だったと思います。僕たち人間の街をバックヤードとして支えているのは、このような人間外が主役を務める街です。そしてそこで、出会った彼/彼女たちは、1匹1匹性格が違っていて、梅雨明けの暑さに対しても日陰を縫うように移動する個体もいれば、茂みの中から出てこない個体もいて、中にはすべてのやる気を失ってぐでっと寝転んでいる個体もいました。この街で、彼ら彼女らがどのように過ごし、どのような問題に直面しているのか。そんな彼ら/彼女らの視点から、人間の街をもう一度考えなおしたとき、何が見えてくるのかといったことを記事にしていこうと思っています。写真、可愛く撮れたので楽しみにしておいてください。クラウドファンディングは8月20日(金)まで実施中です。詳しくはこちら。
高山都さんのランニングフォトエッセイを撮影しました!宇野です。一昨日から新雑誌『モノノメ』創刊のクラウドファンディングをはじめた……のですけれど、なんと昨日のお昼休み、開始から17時間ほどで「達成」してしまいました。その後もどんどん伸び続けて、いま166%(250万円強)にまで来ています。自分で言うのもなんだけれど、このような地味な雑誌がここまで注目を集めるとは思っていなかったので、とても驚いています。そして、もうこんなにたくさんの人の行為をもらったら決定的な一冊を作り上げるしかないし、そして何よりいい編集部を編成して、雑誌を試行錯誤しながら出し続けられる環境をじっくり仕上げないといけないな……と覚悟を決めています。と、意識が高いことを書いてしまいましたけど、素直に嬉しいです。クラウドファンディングの終了はあと1ヶ月先なので、気になる人はじっくりリターンを選んで支援をよろしくお願いします(事実上の特典付き先行販売でもあるので……!)。さて、クラウドファンディングがはじまった一昨日は、朝から創刊号に掲載の高山都さんのランニングエッセイのための撮影でした。これはランナーが走っているとき見ている世界を文と写真で読者と共有したいと考えてはじめた企画です。走るとき、それもなにかのために走るのではなく走るために走るとき、いつも暮らしている近所の風景もがらっと違って見えます。目に入らないものが目に入り、聞こえないものが聞こえ、気にならないものが気になる。そんな体験を、一度言葉と写真に、二次元に落とし込むことで整理して、抽象化してみたい。そうするとまた違った側面が現れてきて、意外なところに届くのではないか。そんなことを考えてつくっています。高山さんは彼女の本を読むとそれがよく出ているのだけれど、一見サバサバしているようで実はきめ細やかに、こだわりを持って細部に関心を持っているひとだと僕は思っていて、そして人間のそういった部分は確実にランに出るので、それを活かした誌面にするつもりです。これは僕がこれまで出していた雑誌『PLANETS』の前号に続いて、ランニング雑誌『走るひと』とのコラボレーションの第2弾でもあります。編集を担当してくれるのは同誌編集長の上田唯人さん。彼と、カメラマンの久富健太郎さん、そして僕と高山さんの4人で、月曜日の朝から汗だくになりながら、でも楽しく撮影していました。この「楽しい」というのも大事で、何か、僕たちがものをつくることを楽しんでいて、その興奮を読者と共有することも雑誌のような、そして定期刊行の者は特に大事なのだ……というか大事にしたいと思ってこのような活動報告を書いています。それでは、ちょくちょくここで進捗や、目次の内容を紹介したりしていこうと思います。発売まで、いや発売後も末永くよろしくお願いします!クラウドファンディングは8月20日(金)まで実施中です。詳しくはこちら。