こんにちは、PLANETSの石堂実花です。本日ご紹介するのは、連載「おいしいものにはわけがある」です。こちらの連載では、毎回編集部がピックアップしたお店に、「おいしいもの」と「おいしいもの」の「わけ」に迫るべく、詳しくお話を伺いに行きます。今回お訪ねしたお店は、京都・等持院にあるお好み焼き店「ジャンボ」です。1974年の創業以来、地元の方に愛され続けている老舗の名店で、本誌編集長・宇野常寛も学生時代から足繁く通っているそうです。2018年7月からは持ち帰り専門店として営業されていますが、今でも近隣の方がひっきりなしに訪れる超人気店です。(撮影:蜷川新)こちらのお店の看板メニューはなんと言っても「ジャンボサイズのお好み焼き(ミックス)」、「ジャンボサイズの焼きそば」です。その名の通り、はじめて見る方はその大きさに驚くこと間違いなしです。※写真だとサイズ感が伝わりづらいかもしれませんが、成人の顔の1.5倍くらい(!)の大きさです。(撮影:蜷川新)筆者が初めて「ジャンボ」を訪れたのは2018年6月、PLANETSのオンラインコミュニティ「PLANETS CLUB」の京都オフ会のときでした。当時は今のように持ち帰り専門店ではなく、店内で鉄板を囲んで焼いて食べるイートインもやっていたのですが、まだ明るい夕方の時分にも関わらず、店の前にはかなり長い行列ができていたのに驚いたのを覚えています。▲2018年6月の様子。行列は店内にも続きます。PLANETS CLUBメンバーの皆さんと一緒に香ばしい匂いを嗅ぎながら並んだのも良い思い出です。▲2018年6月の様子。卓の鉄板からはみ出しそうな勢いのジャンボミックス×2とジャンボサイズの焼きそば。店員さんの見事な手さばきも、持ち帰り専門店となった今は見ることができません。筆者はそれまでお好み焼きを食べる習慣がなかったため、お恥ずかしながら「お好み焼きなんて、だいたい全部おいしいのでは……」という漠然としたイメージしか持っていませんでした。しかし、ジャンボのお好み焼きを食べてその概念があっさりと覆されました。ほのかに出汁の効いた優しい味の生地は、これまでに食べてきたどんなお好み焼きでも味わったことのないふわふわな食感でした。さらに甘いソースと生地が口の中で合わさったときの旨味ときたら! ……書いているだけでもあの味を想像してお腹が空いてきました。かくして「最高のお好み焼き」に出会った筆者は、それ以来どんなお好み焼きを食べても「ジャンボほどじゃないな……」と思ってしまう贅沢な体になってしまいました。店主の江島さんは普段なかなか取材を受けることがないそうで、今回は知られざるお店の歴史や、お好み焼き・焼きそばのおいしさの秘密に迫った、かなり貴重なインタビューとなっています。味の描写も本誌を読んでいただいた方がより鮮烈なイメージが湧くと思いますので、ぜひ読んでみてくださいね。(撮影:蜷川新)昨今はなかなか新しい味に出会いに行きづらい環境になっていますが、この連載が少しでも今後の参考になると嬉しいです!『モノノメ #2』のクラウドファンディングはこちらにて実施中です。
おはようございます。PLANETS編集部です。本日は皆さまへお届けするリターン追加&新設のお知らせです。『モノノメ 創刊号』の際にも反響の高かった本クラウドファンディング限定の対談集を今号でも作成することにしました。今回は、哲学者・鞍田崇さん、批評家・福嶋亮大さんそれぞれと宇野常寛との対談、そして、イェール大学助教授・成田悠輔さん&JX通信社 代表取締役・米重克洋さんとの鼎談の、合計3つの対話を収録した冊子『宇野常寛と四人の大賢者』をお届けします。▲創刊号のときに作った対談集。鞍田さん、福嶋さんは『モノノメ #2』でも登場していただきます。記事については、編集チームよりご紹介しています。ぜひご高覧ください!■福嶋亮大「世界文学の制作」第二章 指し示すこと、物語ること──「心の同調」から小説の機能を捉え直す■就労支援施設「ムジナの庭」を取材しました!また、創刊号の際に反響の高かった対談集(坂口恭平さん、松本紹圭さん、古川健介さんとの3つの対談+宇野による『PLANETS vol.10』解説集を収録)付きのコースも、数量限定でお選びいただけます。どちらも新書一冊分の大ボリュームです。すでにご支援いただいている方もたくさんいらっしゃるので、第2号の対談集だけがほしい!という方は、②がおすすめです。【New!】以下のリターンを新しく設けました。①第2号「対談集」つきコース(6,000円)②第2号「対談集」【のみ】コース(2,500円) ※モノノメ本誌は付いてきません。対談集の冊子のみ。③創刊号「対談集」+第2号「対談集」つきコース(9,000円) <限定20セット>※クレジット掲載 / 「雑誌と本屋の学校」 / イベント年パス / オンラインMTG / 講演会、それぞれのコースをご支援いただいた方にも、第2号「対談集」を本誌と一緒にお届けします。※スタンダード / 好きな本をもう1冊コースには、対談集は付属しません。本誌と合わせてお楽しみいただけますよう、制作に努めて参ります。『モノノメ #2』目次詳細、クラウドファンディングはこちら。次回の更新もお楽しみに!
副編集長・中川です。いまこの活動報告を、東京・浅草六区のひさご通り裏手にあるホステル「TIME SHARING STAY ASAKUSA」のラウンジで(コンビニで買ってきたウイスキーを割りながら)書いています。PLANETS編集部は2020年2月をもって原則リモートワークに以降してからこっち、書籍の出荷やインターネット番組の放送など、どうしても物理的なオペレーションが必要になるとき以外はスタッフが高田馬場の編集部に立ち入ることはなくなっているのですが、悪しき昭和・平成の出版文化を刷り込まれてしまっている身からすると、校了前の踏ん張りどころで編集部やファミレスなど自宅以外の環境で夜通しエンドレスの集中作業ができなくなっているのは、どうにもツライところがあります。なのでコロナ禍にあって、印刷所への入稿前のこの修羅場をどうやって乗り切るべきか。そのヒントは、『モノノメ 創刊号』の小特集「飲まない東京」プロジェクトにありました。このプロジェクトは、閉鎖的なコミュニティにおける内輪のメンバーシップの確認やパワハラの温床になりがちな昭和型の飲みニケーション文化の弊害から脱して、お酒を飲まない人でも肩身の狭い思いをしない飲食文化や夜の都市の楽しみ方を世の中に発信しようという趣旨で2021年春ごろから宇野常寛が提唱しているものなのですが、小特集内の記事の1本として磯辺陽介さん、田中元子さん、藤井明香さんのお三方による鼎談を所収しています。この中で、以前に蔵前に住んでいたという磯辺陽介さんが「Nui.」というホステルが好きでときどき行って、1階のラウンジスペースでジンジャーエールを飲みながら、外国人の宿泊客がおしゃべりしているのを横目に一人で本を読んだりしていた、という話をされているのですが、編集作業が佳境に入ってきた昨年末から現在まで、僕も東京各地のホステルやゲストハウスを点々としながら、そんなワーケーション的なナイトライフをバリバリ実践していたりします。僕は現在、池袋駅から徒歩15分くらいの上池袋に住んでいるのですが、自宅以外の集中環境がほしいときには、本活動報告でもおなじみの編集スタッフ・小池真幸くんが最近noteに書いていたのと同様、ルノアールとかジョナサンとかの電源・WiFi完備の遅くまで営業している飲食店を常用していました。しかしこの2年というもの、遅くとも21時とか22時に閉め出される世界になってしまっています。じゃあ漫喫やネカフェはどうかとなると、狭苦しい個室で快適度が低く、別にマンガを読みたいわけでもないのにナイトパックで2000円以上取られるのでコスパも悪い。そうなると、いま21時以降に食事もしながら居られる場所は、知り合いを中心に細々と営業している顔なじみのバーとかしかないわけです。僕は宇野と違ってお酒が大好きなので近所に行きつけのバーが何軒かあって、夕食がてらそのカウンターやテーブルでパソコンを広げて飲み食いしながら仕事もしたりするのですが、当然、顔なじみのマスターや知り合いの常連客たちがめちゃめちゃ気になる話とかをしていたりする。なので、日付が変わるくらいの時間帯になると集中力がもたず、自然と業務終了になってしまいます。当然、これは〆切間際や校了期には向いていない。そうなったときに、だいたい宿泊料金1500円前後でドミトリーのベッドとシャワーが利用できて(うっかりバーに行って何杯も飲んでしまったりするよりは圧倒的にコスパがよい)、そして居心地よく開放感のあるカフェバーを併設した共有ラウンジで24時間コワーキング可能な今時のホステルやゲストハウスの業態は、いまの自分にとっての最適解だったわけです。示唆を与えてくれた磯辺さんには大感謝です。僕が最初に見つけて最も頻繁に利用しているホステルが、墨田区向島にある実家から徒歩5分の距離にある「WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO」。2020年6月に開業した「東京ミズマチ」イーストゾーンの一角を占める施設で、あからさまな観光地である浅草と東京スカイツリー&東京ソラマチの間にある下町の住宅街の川辺に、「居住」と「観光」の中間的な存在としてシェアハウス的な長期滞在もできるこうしたホステルができたことは、古くからの近隣住民としてとにかく衝撃的でした。では、いま住んでいる上池袋から自転車で行けるエリアで同様の利用ができるスポットがないかということでBooking.comで見つけて泊まったのが、神楽坂にある「UNPLAN Kagurazaka」と王子にある「Tokyo Guest House Oji Music Lounge」。どちらも古くからの東京の景勝地で、外国人観光客が訪れやすいロケーションから、こうしたコスパのよい居住と観光の端境にある過ごし方のできる器が生まれていったことがわかります。先週の『モノノメ #2』のエディトリアルデザイン関係のディレクション作業はここから行っていました。ちなみにUNPLAN Kagurazakaの共用スペースのベランダからは、スカイツリーも見えます。そんな感じで、前号「飲まない東京」鼎談で触れられていたNui.などの蔵前界隈の状況が気になって、今週、墨田区での3回目のワクチン接種がてら泊まってみたのが「FOCUS KURAMAE」で、その流れで一晩置いて現在宿泊中の浅草TIME SHARING STAYに至ります。やはり浅草から隅田川エリアにかけてのこの手の施設の発展は目覚ましく、おそらく京都でのここ10年程度のゲストハウス系の発展に近いようなことが、東京ではこのエリアを中心に起きてきたのでしょう。これらを転々として感じたのは、コロナ禍の影響で本来の想定客層だったはずの外国人宿泊者の姿があまり見られなかったかわりに、それぞれの地域になじみのある若い世代にとっての活動拠点になっていくという流れが、すいぶん促進されたのだなということ。広々としたラウンジで、それぞれディスタンスを置きながらPCでリモート会議をしている若者たちの新しいワークライフスタイルの息吹を感じながら、この雑誌の制作は大詰めを迎えようとしています。『モノノメ #2』のクラウドファンディングはこちらにて実施中です。
こんにちは、PLANETS編集部の徳田要太です。『モノノメ#2』の制作も佳境に入りつつあり、誌面デザインや特典の準備など完成に向けて奮闘中です。紙の雑誌制作に関わるのは個人的には初めてのことで戸惑うことばかりですが、SNSの論調の外側にゆっくり考える場を作りたいという宇野編集長の理念に共感し、なんとか業務をこなしています。さて、そんな宇野編集長は時々トーク番組などで(文脈によりますが)「共感」という言葉が苦手だということを口にします。なぜこの言葉に苦手意識を持っているのかというのを僕なりに解釈すると、端的に言えば選択肢が狭まるからではないでしょうか。すでにわかってるものについてばかり語っていては、見落としているかもしれない選択肢の可能性を消し去ってしまう。そういう考えがあると思います。『モノノメ』が創刊されたのも、SNSでウケるものか、そうではないものか、そのどちらか以外の選択肢が当たり前に存在できる場を作りたいというコンセプトがあったからでしょう。だから前号で執筆いただいた方々も、いまウケるかどうかではなく、新しい問題設定ができるかどうかという基準で選ばれました。今回紹介する福嶋亮大さんもその一人です。福嶋さんには前号から「世界文学の制作」という連載を執筆していただいています。小説の表現がなぜ成立するのかを考えることで、「言葉」と「心」の関係を捉え直すという壮大な試みの連載ですが、「言葉」があふれかえっている現代だからこそ読む価値のある文章だと思います。そんな福嶋さんの連載第二章「指し示すこと、物語ること」が『モノノメ#2』に収録されるわけですが、最初にこれを読んだときは衝撃でした。というのも「人は共感の生き物である」ことを前提として論が展開するからです。共感こそがコミュニケーションの成立条件であって、そして人はコミュニケーションなしには生きられない(というより、コミュニケーションをする生き物=人間である)。小説──架空の(存在しないはずの)事物を語る文章の向こう側に実体としての事物や人物を想定できてしまうのは、その小説の文章に否応なく心が同調するからなんだというわけです。といっても、普段言葉を目にして、なんでもかんでも心が同調するわけではないということは誰しも実感するところかと思います。しかし、小説はそういう状況を意識的に作り出せるんだということが、僕がこの第二章を読んで特におもしろいと感じた部分です。共感を強いられるんだけれど、どうにもそうしきれない異物がある。そういうものを意識的に演出できるのが小説の力なんだというわけです。どのように演出されるのか。そのメカニズムが福嶋さんの理路整然な構成と、お子さんの身近な(共感しやすい)エピソードとともに語られています。ぜひ多くの方に読んでいただければと思います。『モノノメ #2』のクラウドファンディングはこちらにて実施中です。
こんにちは。PLANETS編集部の小池真幸です。「私淑する」という言葉もありますが、“憧れの先輩”という人の存在は人生を豊かにしてくれます。それまでほとんど興味を持たなかったようなことでも、かっこいい先輩──直接の知り合いではなく、メディア上で見かける人であっても──がのめり込んでいる姿を見て、自然とその世界に引き込まれてしまう経験は、大なり小なり多くの人にあるのではないでしょうか。僕は最近、まさにそんな先輩たちに出会いました。一人は、丸若裕俊さん。株式会社丸若屋/茶葉ブランド「EN TEA」の代表として、日本の伝統工芸のアップデートに取り組んでいます。(ちなみに僕はEN TEAのお茶のファンでもあります)もう一人は、沖本ゆかさん。日本国内の陶磁器の魅力を世界に発信するプロジェクト「CERANIS」を手がけています。この二人が、僕のような「超」がつくほどの工芸初心者でもその奥深さの一端に触れられるよう、さまざまな「モノ」の魅力を語り尽くす対談連載が「もののものがたり」です。「モノ」よりも「コト」のほうが人を惹きつける時代だと言われています。でもだからこそ、人と「モノ」の関係を考え直してみたい──そんな問題意識から立ち上がったこの連載。創刊号に掲載された第1回では、丸若さんが九谷焼の箸置き、沖本さんが朝日焼の湯呑を紹介してくれました。(ちなみに僕は第1回の記事の原稿作りをお手伝いしたのですが、気づけばEN TEAが出している九谷焼の湯呑が、僕の家の食器棚に加わっていました)そして、2021年末、『モノノメ #2』に掲載される第2回の収録が行われました。EN TEAが手がける、豊かな時間を過ごすための茶葉と道具を扱う店舗「GEN GEN AN幻」にて実施。渋谷は宇田川町、東急ハンズのすぐ横、元祖仲屋むげん堂の黄色い看板を横目に少し進んだところにある小さな店舗。丸若さんの言葉を借りれば「訪れるみなさんが日々の目の前のことから一時心が開放され、時の大切さを感じられる」、都会のオアシスのような空間です。今回お二人が持ち寄ってくれたのが、自在鉤(丸若さん)と唐津焼の器(沖本さん)です。その魅力の詳細な説明は、本誌でゆっくりとお楽しみいただけると嬉しいですが、地域との結びつきもふんだんに味わいながら、モノを自分なりにアレンジして愛で、生活の中に取り入れることの魅力を、余すことなく語っていただきました。その内容もさることながら、同席していた僕が強く感じたのは、モノを通じて世界と向き合うことの魅力です。「モノを通じてコトを見る」「モノだけが旅の記憶を持ち帰れる」──二人はモノと一緒に暮らしているのと同時に、その背景にある体験や人、地域と一緒に暮らしてもいるのです。そしてそんな日々を送る二人が、僕にはとても輝いて見えました。「工芸に詳しい人」と聞くと、もしかしたらウンチクは豊富だけれど権威主義的で、“一見さんお断り”的な怖さを感じてしまうかもしれません。しかし、この二人はまったくそんなことはありませんでした。やわらかい物腰で、ゆっくりと丁寧に、でも節々からほとばしる情熱が隠しきれない様子で、モノの魅力を語ってくれました。モノそのものの造形や意匠だけにとどまらず、それを生み出した人たちや土地の魅力まで、嬉しそうにたっぷり教えてくれる。そして何より、そうした魅力に僕のような素人にアクセスしてもらいたいという、優しくも情熱的な意志にもあふれていました。一見さんお断りの正反対、工芸の世界に一人でも多くの人を誘いたいと真摯に考えている人たちなのです。そんな話を聞いているうちに、もともと工芸にはそこまで強い関心を持っていなかった僕でさえ、二人がすっかり“憧れの先輩”になっていました。モノの知識にとどまらず、暮らし方、生き方について示唆をもらえる企画になっていると思うので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。『モノノメ #2』のクラウドファンディングはこちらにて実施中です。