【毎日更新】第13回『LOVE IS [NOT] DEAD.〜おやじパンクス、恋をする〜』 だけど、観察っつっても、情報は限られたものだった。何しろ、文字通りその窓枠の大きさ以上のことは分かんねえわけだろ。見えるのは、赤いカーテン、そして彼女、部屋の中の白い壁紙、そこに貼られたポスターかカレンダー、冷蔵庫らしき赤黒い四角いもの、シンク、すだれっぽい何か、そんなもんだ。 すだれの向こう側に玄関のドアがあって、その脇とかに、こっちからじゃ見えねえけど風呂とかトイレとかがあるんだろう。まあ、要するにワンルームだ。他に部屋があるようには見えない。 そのことは、そのマンションの他の部屋の様子からも想像できた。彼女の部屋は五階の一番左側だったが、そのすぐ右側には白髪の爺さんが住んでいたし、その右側には派手な茶髪の姉ちゃんがいた。 レストランにいる時間のほとんどを彼女の、そのビルの観察に費やしていた俺には、そういうことも分かってきた。 だが、それだけだった。 何度見返しても、それ以上のことは分からない。彼女は相変わらずつまらなそうに、窓の外を眺めているだけだ。 そこで俺は、彼女にこっちの存在を知らせたらどうかと考え始めたんだ。 いや、別にそれで何がどうなるのか考えてたわけじゃねえと思うんだよ。 ただなんつうか、その「秘密の遊び」みたいなもんを、もっと面白くさせたかっただけなんだ。もっと情報を得て、このいわゆる「膠着状態」に変化を与えたかったんだ。 引っ込み思案で臆病な真面目くんにしては強気な発想だ。 今思えば、やっぱり何十メートルかの距離は俺にとってのバリアーだったんだな。ま、彼女が自分に気づいたら、そのバリアーがなくなっちまうかもしれないないんだけど。ガキだからそこまで考えてなかったんだな多分。 とにかく俺は、どうすれば彼女に気づいてもらえるか、って考え始めた。 たださ、いざ方法を考えたら、何にもねえのな。 彼女の存在を俺の親に知られるのは絶対に嫌だった。だから、例えばその場で手を振ったりとか、そういうのはできないわけだろ。大声出して聞こえる距離でもねえし、まさかテレパシーで話せるわけでもねえ。 実際のところ、どうしようもなかったんだよ。〜第14回に続く〜--本日はここまでです。少しでも続きが気になった方は、ぜひこのプロジェクトの「お気に入り登録」をお願いします。(登録していただくと、更新タイミングで通知が届くようになります)また、今回のプロジェクトでは、限定青カバー版(100冊限定)やオリジナルステッカー及びバッジ、著者と小説の舞台となったBARで飲む交流枠など、様々なリターンを用意させていただいています。ぜひチェックいただき、ご支援いただけますと幸いです。それでは、また明日。児玉ロウ





