本日応援メッセージをいただいたのは、一般社団法人こもれびの水流添 綾(つるぞえあや)さんです。私たちは『子どもの権利と新型コロナ』発刊当初から、「夕刻を支える場」を運営する団体を応援したいと考えてきました。「夕刻を支える場」とは、「学校や放課後児童クラブが終わってから夜にかけての時間や学校が休みの期間に、子どもたちが安心・安全に過ごせるような取組をおこなっている場所の総称」です。子ども食堂よりももう少し子ども自身の生活全体を応援していくような、子どもと保護者を具体的に地域で応援している大切な活動です。でも、今の日本にはそうした場所は決して多くはありません。その地域にそうした場所があるかないか、それは子どもと家族の生きづらさを大きく左右すると感じています。水流添さんが運営されるこもれびは、そうした数少ない貴重な実践を行っておられる場です。子どもの居場所であることを大切にしつつ、人と出会い、継続的につながっていく場をつくり続けておられます。見えないところでSOSを出せずにいる人を見つけ、”アクションをおこす”また、ほしい資源やサービスがなければ、”ないものはつくる”をモットーに活動されています。厳しい状況にいる子どもがもちにくい、文化的な体験をさまざまに生み出しておられることも素晴らしいと思っています。「夕刻を支える場」とは?一般社団法人こもれび 水流添 綾 私が代表を務める一般社団法人こもれびは、子ども期を主軸に、社会生活を営むうえで必要となる基盤づくりなど、さまざまな福祉的支援を展開しています。すべての子どもたちが未来への可能性を秘めて今を生きていますが、活動を通じて出会ってきた子どもたちは、残念ながら本来もつ力が発揮できず、不登校や引きこもりになるなど、望まない方向へ進んでいることが少なくありません。また、子どもたちの中には、周囲の大人の無理解により、現状を子ども自身の責任にされてしまうなど、さらに苦しい思いをしている子どもたちもいます。 こうした現状を踏まえ、こもれびでは、子どもたちがそれぞれのもつ可能性の芽を育んでいくために、安心安全な場づくりに力を注いでいます。その一つが「夕刻を支える場」という活動です。“おなかとココロを満たす”活動として、ケアが必要な子どもたちを対象に月2回、手作りの夕食と対話やあそびを楽しむ場づくりを行っています。また、体験が不足している子どもたちを対象に、プロの音楽家の力添えもいただきながら、音楽活動も行っています。はじめは、自信がなく俯きがちで、コミュニケーションも十分とれなかった子どもたちが、安心安全な場の活動に参加するうちに、キラキラと変化していく姿を目の当たりにしています。 ひとりでも多くの子どもたちが、社会に出てイキイキとした生活をおくっていくためには、子どもたちの声にならない想いをキャッチする大人の存在が欠かせません。子どもへの理解を深めるということは、子どもの人権を考えることだと思っています。長瀬さんが制作されている絵本『子どもの権利と新型コロナ』は、子どもの育ちに大切な要素がわかりやすく盛り込まれています。たくさんの人に読んでいただき、子ども理解が広まることを心より願っています。こもれびhttps://www.kmrb.jp/【こどもたちの未来を描く】子どもの居場所事業/フリースクール/子ども食堂/一般社団法人こもれび【フクシのみらいデザイン研究所 vol59】 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=lCNGDYoB00gこもれびの風景や実際に大切にされていることがとってもよくわかる動画です。ぜひご覧ください。
こんにちは!編集とデザインの会議に参加しているmaiです。先日、書店さんにご協力いただいて表紙案の検討会をおこないましたので、今日はそのご報告をお届けいたします。検討会というのは、タイトルの色や字体、帯の色、装飾など、10種類以上の表紙のバリエーションをプリントして、同じ仕様の絵本にぐるっと巻きつけ、絵本コーナーに置いてみるという実験です。「この絵本が置かれるのは、たぶんこのあたりだから……」絵本コーナーの中にも、知育ものや翻訳ものなどさまざまなジャンルがあるので、今回の絵本と分野が似ている絵本の近くに置いてみて、いろんな角度から眺めてみます。パソコンの画面で見るのと実際に置いてみるとでは、印象がガラッと変わっておもしろい!画面ではバランスよくまとまっているなと思っていたけど、実際置いてみるとおとなしすぎたり、ちょっとタイトルが強いかなと思っていたものが、たくさんの中ではひときわ目をひいたり。だけど『きかせて あなたのきもち』と、そっと声をかけたい絵本だからこそ、タイトルだけ目立ちすぎるのも違うかなと思ったり……。表紙はまさに「本の顔」。たくさんの本が並ぶ中から、この1冊に目をとめてもらえるか、お手にとってもらえるか。そのハードルを飛び越えて、はじめて本は読んでもらうことができるのです。書店に並ぶどの本もそれぞれに、いろんな声で「私はここにいるよ!」と主張しています。この絵本らしい声って、どんなトーンなんだろう。どんな大きさなんだろう。そんなことを考える時間でした。どんな表紙に決定するかは、もうしばらくお楽しみに!以上、デザインの現場からのご報告をお読みくださりありがとうございました。
クラウドファンディング、30%達成しました。たまたま更新の担当が私(長瀬)なんですけど、とても嬉しくありがたいです。そして、活動報告への応答ありがとうございます。「読んでるよー」って言っていただけるだけで、テンションがあがります。さて、今日は、なぜ長瀬が子どもの権利にこだわって活動しているのかのお話。「『子どもの頃のわたし』ときくとどんな自分を思い出しますか?」ときかれたら、みなさんは、どんな子どもが浮かびますか?私は、二人の「子どもの頃のわたし」が出てきます。元気いっぱいに外で生き生きと遊び、生命力にあふれた小学生の頃のわたし。もう一人は、無表情で制服を着たエネルギーをなくした中学生の頃のわたしです。生き生きと元気にしていた私が、なぜ無表情になったのか。そのことと、子どもの権利を子どもに伝えたいと思って行動していることはつながっています。私は、愛知県の公立中学校に通っていました。そこでの日々は、すべて「管理される」ものでした。靴下の長さと色、鉛筆の形、筆箱の色、髪の長さ(肩より下にのばすことはできない)、前髪の長さ、学ぶべき内容、中学生らしさ…。何一つ決められないということ、学校の「フツウ」に私は心底うんざりし、耐えられない気持ちを抱えていました。両親は共働きで、私の登校より早く出勤するので、祖母に頼んで時折自主的な不登校をすることでなんとか生き延びていました。当時、学校では「学校に適応できない子どもは、社会でもやっていけない」というようなことが繰り返し言われていました。私は、学校の「フツウ」が耐えられなかったので、ずっと「ちゃんとした」大人になれないんじゃないか、と思っていました。そして、学校に適応できない自分を責め続けていました。そのころ、実家は小学生から読める子ども新聞を購読していました。その記事では、1989年に子どもの権利条約は採択されたが、日本では批准されていないということを伝えていました。日本は、1994年に権利条約を批准しています。批准されないでいた5年間と、私が中学生だった時期は重なっています。その記事を読んだ時、「今の私がこんなに苦しいのは私のせいだけじゃないかもしれない」と思ったのです。「日本社会のありようが、関係あるのかもしれない」と。そして、日本の国は批准していないけれども、子どもを人として尊重する国際条約があるということに勇気づけられました。ふりかえると、それは、心に光が灯るような経験でした。研究室に飾っているmomoさんの絵この記憶を思い出したのは、20代半ばのころです。大学3年生の時に、これまた新聞で「地球規模で考えよう、子どもの権利」という市民講座を見つけました。そこから私は、大学の外へと飛び出します。子どもや女性への暴力に関心をもっていたので、いろいろな参加型の学びの場に参加しました。繰り返し子どもの頃を思い出すワークをするなかで、子どもの権利条約にまつわる出来事も思い出しました。中学生の頃の辛かった気もちを泣きながら話し、たくさん話を聴いてもらいました。話すなかで、自分があたためられた経験も思い出したのです。社会を変えるために具体的に行動をする大人たちにも出会いました。子どもや若い人たちに「仕方ないよ」とか「それが社会だから」と言わず、あきらめずに必要なアクションを起こしていく。あの頃出会った大人のように私はなれているかな?って時々振り返ります。現在、私が多くの子どもや大人に子どもの権利を伝えるということを仕事にしているのは、この時の経験が根っこにあります。子どもの権利条約と出会ったことが、私にとっての光になったように、子どもにとっての光になれば、と思うのです。
本日応援メッセージをいただいたのは、梟文庫の西尾美里さんです。写真は、梟文庫とちいさなとびらで出店した京都の「遊ばな秋まへん」のイベントにて。2020年9月『子どもの権利と新型コロナ』が初お目見えした時のもの。西尾さんは、京都市北区の上賀茂あたりで梟文庫という家庭文庫をされています。はじめて地域ニュースのような媒体で梟文庫(https://www.fukuroubunko.com/)を知った私。大事に切り取ってノートに貼っていました。その後、会員となり、週末のたびに文庫で主催されるワークショップへ参加するようになりました。文庫を利用する、子どもさんが不登校状態にある保護者の方たちとも知り合い、さまざまなことを一緒に考えることができるようになりました。地域で子どもの育ちと教育をともに考え、具体的なアクションをともに起こせる、そんな仲間に出会えたことには感謝しかありません。私たち家族にとっては拡大家族のような、そんなありがたい存在です。コロナ禍が始まってすぐに子どもの権利を学ぶワークを企画したりもしました。(子どもの権利のワークショップ 1 ~休校対応へのささやかな抵抗 https://chisanatobira.exblog.jp/240176177/)旧版『子どもの権利と新型コロナ』の絵本から本クラウドファンディングも、ずっと応援してくださっています。子育てなんて、子どもの権利をめぐる修羅場の連続梟文庫 西尾 美里子どもに権利がある。とても当たり前のことなのに、その視点を持って子どもとの関係を考えるようになったのは、実のところ友人の長瀬さんと出会って以降であると思います。でも子どもとの日々を振り返ってみると、まさに「子どもの権利vs大人の事情」のバトルが延々と繰り返されてきたことに気付きますし、親(おとな)として権力を行使し、子どもの権利を奪ってしまう修羅場だって、残念ながら何度も経験しました。もしその時に「子どもの権利」という視点を持っていたら、強権的に振る舞うのではなく、子どもの権利を侵害せざるを得ない痛みを自ら引き受けながら、子どもに協力をお願いするという選択肢を選べていたかもしれません。しかしその一方で私が声を大にして言いたいのは、「修羅場化を防ぐのは、個人の努力だけではできない」ということです。自分の非道を棚に上げて言いますが、「子どもの権利を侵害せざるを得ない状況」を生み出しているのは、当事者の個人(とその家庭)だけではなく、それを含みこんだ大きな社会そのものだから。子どもの権利を大切にする社会、子育てにサポーティブな環境、経済的余裕、人的資源、知的リソース・・・そういったものが欠けたり十分にない場合、大人の側の余裕を奪い、子どもの声を聞きながら権利を保障する働きができず、強権的にならざるを得なくなります。そのような事態を社会全体で回避していく必要がありますから、子育ては社会全体で応援しなければなりませんし、様々な資源やゆとりが子育て世帯にめぐっていける、そんなシステムを考えていかなければなりません。長瀬さんと絵本制作チームのみなさんが出版される新しい絵本は、きっと子どもの権利をみんなで大事にしていける社会に向けて、たくさんの人たちがそれぞれに考え、他者と対話するきっかけを与えてくれると信じています。心より、応援しています!梟文庫https://www.fukuroubunko.com/Instagram :https://www.instagram.com/fukuroubunko/note長瀬おすすめ記事 → 権利という視点からhttps://note.com/misatowl/n/n2cc30959577c
本日応援メッセージをいただいたのは、金澤ますみさんです。ますみさんは、「スクールソーシャルワーク」という言葉が、まだほとんど知られていなかったころからその実践をされ、現在はスクールソーシャルワーカーのSVや養成にたずさわっておられます。そんなますみさんが世話人を務める学校学研究会。学校における「いじめ」「不登校」「学級崩壊」等の問題を、社会福祉学、教育学、心理学、法学、医学、経済学等の個別のアプローチを超えて、学際的に議論し、それを解決していくための方法を探求しようとする研究会です。学校にかかわる専門職や研究者にとどまらず、当事者である子ども本人や保護者、NPOや自治会の人なども含めた地域住民と共有するデザインを検討するという点がユニークです。長瀬も、その共同研究者のひとりです。本プロジェクトの寄贈先に、そして旧版の寄付先に「夕刻を支える場」があります。学校や放課後児童クラブが終わってから夜にかけての時間や学校が休みの期間に、子どもたちが安心・安全に過ごせるような取組をおこなっている場所の総称です。こうした場の必要性を、私はますみさんを通じて知りました。今の社会に少ししか存在していない、しかし絶対に必要でつくっていく必要のある場所だと考えています。(長瀬)子どもの権利条約を子ども自身にどう届けるか桃山学院大学学校学研究会世話人金澤 ますみ私は、スクールソーシャルワーワーカーとして学校に勤務するなかで、日本の学校構造の課題に悩んできました。それは、子どもたちが「困ったな、どうしようかな」という出来事があったときに、そのことを自ら相談する場所が学校の中に存在しないということです。私たち大人は子どもたちに、「困ったことがあれば、いつでも相談してね」という言葉をついついかけてしまいます。けれども、子どもの立場にたつと、「どこに行けば、誰に、いつ、どのくらいの時間、どのような内容の話を聞いてもらえるのか」ということがわかりません。また、学校に限らず「相談することそのものに価値がある」という教育が少ないため、相談することを恥ずかしいと思っている子どもたちが多いようにも感じていました。このような課題を共有した学校の先生たちの協力を得て、私は数年前から、子どもの権利条約を子ども自身に届ける方法の一つとして、スクールソーシャルワーカーが教職員と取り組むワークショップ「相談する力を育む授業」「尋ねあう関係を築く授業」をはじめました。授業では、絵本や音楽(「子どもの聴かれる権利」がテーマの『タズネウタ』https://youtu.be/zNMYQjSrRZY 「智の物語」後編挿入歌『虹への誓い』https://youtu.be/4470bhl87qM)などを通じて、「尋ねること」「相談すること」の価値を伝え、子どもたちに相談できる人や方法を伝えることと、相談しやすい学校環境づくりを目的としています。ワークショップ後には、子どもたちが疑問に思っていることや困っていることをストレートに伝えてくれることが増えました。ちょうどそのころに、長瀬正子さんが旧版『子どもの権利と新型コロナ』を制作されるということを聞いて心待ちにしていました。そして絵本が手元に届いたときは、「子どもの権利」という言葉をはっきりと用いて、子どもにも大人にも大切なことをストレートに伝えてくれる構成に、私自身がとても勇気をもらいました。そしてさっそく、学校学研究会のソーシャルデザイン検討会の企画『子どもたちに音楽の届け物を(演奏&子ども支援の現場からの報告:2020/11/8オンライン開催)』でも紹介してもらいました。写真はそのときの1枚です。その絵本がこのたび、新版絵本『きかせてあなたのきもち 子どもの権利ってしってる?』という新しい絵本として誕生するとのこと。私が取り組んでいる出前授業でも、子どもたちと一緒に読むことができるのではないかなと、今からわくわくしています。