菩薩群は皆さん装飾品として「宝冠」と「胸飾り」を身につけていらっしゃいます。如来は装飾品を纏わない事が多いですが、菩薩は「悟りを求める身」なので身を飾ります。インドの王族貴族の衣装から由来する事もあるそうです。銅ですが、とにかく汚れと数百年分のサビで綺麗な装飾品ではなくなっていました。まだ途中の段階ですが、時間をかけ洗浄してもらいすっかり綺麗になりました。細部までこだわった造りをしています。宝冠には白鵠(びゃっこう)か、孔雀(くじゃく)かと思われる鳥もついており、非常に丁寧な造りです。胸飾りも綺麗になりました。修理の完成した仏像がこの装飾品を纏うとより一層煌びやかな仏様に戻られます。楽しみです。
普賢菩薩は比較的軽度な傷みの方ですが、それでも写真のようなお姿でした。顔は爛れているようにも見え台座も生地が見えガタガタの状態。①洗浄をした後は剥落(はくらく)止めを行います。5%ほどの膠水(にかわすい)を庁舎機で含浸します。②膠水を塗布して浮いてくる汚れを和紙で貼りつけて含浸③その後に精製水で和紙を濡らして剥がします。写真ではほんの一瞬での修理工程ですが、一つ一つの作業にかなりの時間がかかっています。工房へはひんぱんに立ち入り見学していますが、正直どの工程も素人には同じにみえます。。 それだけ細かく、繊細な作業を繰り返し行なっていきます。
お堂解体前の写真です。中は暗く仏像がお立ちになる床も腐ってきてました。ミシミシ音どころか、床が抜けそうなところもありました。さらに仏像は少し前屈みで造立されている為さらに不安定になってました。トップの写真にも左下に寝ている方がいます。自力では立つ事ができなくなった方です。三列にお並びいただいてましたので、後ろの方はお顔も見れない方も。狭い空間にギュウギュウに立っておられました。申し訳ありません。新しくなったお堂では、仏像の専門家の先生にお教えを乞いながらお立ちいただくレイアウトも考えていくつもりです。大きく横側にも並んでいただき来迎の様子をお堂いっぱいにする予定です。
修復中の二十五菩薩像ですが、安置していた御堂も現在一度解体して立て直し工事中です。境内の西側に建ち東向きに建築予定で、まさに西方浄土からお出ましになる予定です。新しい御堂は納骨堂も合わせ持った新しいものになり、永代供養や年忌法要も執り行う事ができます。墓じまいという言葉が聞き慣れてしまったこの時代、寂しい気持ちもしますがお寺というものは時代に合わせて、その時代の最先端の技術を持って発展してきました。歴史を残して法灯を繋げる。大切で難しいものです。
1月25日 寒い日です。仏像の塗膜(とまく)の剥がれたところを接着するには糊が必要です!ですが、ただの糊ではありません。私たちが普段使う液体糊やスティック糊、はたまた米粒なんかも糊として活用はできますが、剥がれた塗膜には膠を使います。膠は、動物の皮革や骨髄から採られる強力な糊です。主成分は、コラーゲンという蛋白質の一種で、本来、接着剤としての用途が中心ですが、絵具や絵画下地のバインダー、また、膠をさらに純粋に生成した「ゼラチン」は食用や写真用にも使用されるそうです。膠はガチガチに固まっていて、犬がガリガリと咥えて遊ぶものと似ています。それを熱で精製水で溶かして使いますが、寒い冬には不向きなものです。従って、室内の温度をかなり上げて膠が固まらないように工夫をして作業をしています。