鎌倉教場の「今」をお伝えします。今回は「道具と移動手段」についてです。流鏑馬を行うためには、自分で色々な道具を買い揃えなければいけません。まず最初に必要なのは、稽古着(上衣、袴、角帯)、作業靴、笠下、稽古笠、皮手袋、足袋です。次に行事で奉仕するために、射沓(いぐつ)、射篭手(いごて)が必要になります。さらに、自分の稽古が進むと、弓、神頭矢(じんどうや)、矢筒が必要になります。最後に行事に射手として出場するには、直垂(ひたたれ)、行縢(むかばき)、尻鞘(しりざや)、太刀、前差、綾檜笠、鬼面、本番用手袋、弦巻、本番用射篭手が必要になります。一度に全部揃えるのは大変なので、入門してから少しずつ買い揃えていくことになります。また、これ以外に、鞍、鐙、三懸(さんがい。鞍を馬に固定するための帯上のもの)、厚総(あつぶさ。本番用の三懸)、力革(鐙を鞍につける革の帯)、轡、鞍下などの馬具類が必要になりますが、これらは大日本弓馬会が購入し、門人たちはそれを使わせてもらっています。これら馬具類は自分で買うことが望ましいのですが、数十万円~数百万円もするものなので、良い物が見つかった際に懐具合が温かければ、「えいや!」と買うこととなります。かくいう筆者は、徐々に買い揃えている口で、いまだにこれら馬具類の一部しか所有しておりません。お恥ずかしい限りです。さて、このように様々な道具類が必要になるのですが、稽古のたびにこれらを運ぶのは、なかなか大変です。そのため、入門当初は電車で通っている者も、荷物が増えてくるにつれて、徐々に車で通うようになってくることが多いです。※稽古では馬に密着して触れ合うので、体中が馬臭くなるというのも理由の1つです。また、荷物の多さや移動の手間を考慮して、稽古場の近くに引っ越して来る者もおります。かくいう筆者は、最初は中央線、山手線、京急線、京急バスを使って片道2時間半かけて稽古場に通っていましたが、見習い門人として稽古を積んでいくうちに荷物が増えてきたものの、車を購入するだけの資金がなかったことから、引っ越して移動距離を短くするという選択をしました。とはいえ、職場から離れすぎるのも厳しいので、稽古場まで片道1時間45分くらいの場所です。このように荷物の量に応じて、住む場所や移動手段が変遷していくのですが、さすがの筆者も射手になる少し前くらいからは、あまりの荷物の量と、転職により職場の位置が変わったことなどもあり、更に稽古場に近い場所に引っ越すとともに、車で移動することにしました。車移動といっても、稽古や行事のたびにレンタカーを借りる手もあるのですが、熟慮の末、自家用車という選択をしました。流鏑馬を続けていくには、移動手段という金銭的な負担も考慮に入れなければならないのです。そして、車での移動となると、つきまとうのが駐車場の問題です。この点、我らが「鎌倉教場」では、入口から馬場に至る途中に十分なスペースを確保しており、毎週の稽古のたびに門人が20台程度の車を駐車しても、まだ余裕があります。また、「鎌倉教場」では流鏑馬の行事も行いますので、駐車できるスペースが広いに越したことはありません。最寄りの駅である湘南モノレール「湘南深沢駅」から徒歩7分程度ですが、足がお悪い方などお車での来場者は相当数いらっしゃいますので、駐車スペースは欠かすことができません。この駐車スペースがあることは、「鎌倉教場」にとっての強みであり、これもまた皆様の御支援の賜物です。ちなみに、駐車スペースとはいっても、実際には草っぱらであり、夏には車が隠れるほどの雑草が生い茂るなど、野趣あふれる仕様となっています。このたびクラウドファンディングで御支援を呼び掛けている更衣室や水道設備は、この駐車スペースに隣接して設置することとなります。草むらと砂利に囲まれた荒地ですが、流鏑馬の稽古を行うには十分です。むしろ、多少殺伐としていたり、野趣溢れていた方が、鎌倉武士や古武道の趣と合致するというものです。設置する更衣室や水道設備は、さすがに古民家風にしたり、自然素材を用いることはできず、「簡易で安い」仕様こそが肝心となりますが、馬場だけでなく、更衣室や水道設備、駐車スペースに至るまで、これら全てをひっくるめての流鏑馬の稽古場である「鎌倉教場」です。このたびの付帯設備(更衣室、水道設備、日除け)の設置により、稽古環境の更なる改善を図り、流鏑馬と日本弓馬術の維持継承により大きく貢献することが可能となります。そして、「鎌倉教場」が、皆様により愛される施設となれるよう、私たちも全力を尽くしてまいりますので、皆様の引き続きの御支援をよろしくお願いいたします。
鎌倉教場の「今」をお伝えします。今回は行事の準備についてです。大日本弓馬会は、これまで神社の例祭や地域のお祭りなど、年間10~13回程の行事(流鏑馬、笠懸)を行ってまいりました。もっとも、令和2年4月以降は、コロナ禍により中止が相次いでおり、年間4~5回程に減っております。しかし、このような中でも行事を行えること自体、大変ありがたいことであり、関係者の皆様には心より感謝申し上げます。さて、この流鏑馬ですが、実際に御覧になったことがある皆様ならば、騎射の迫力ある華々しい場面を想起することができるのではないかと思います。しかし、華々しい場面の裏には、地味な準備がつきものです。流鏑馬も例に漏れず、この人目に付くことのない「行事の準備」が非常に重要です。行事を行うには、馬場の設営、的の設置、櫓の設置、陣幕の設置といった会場設営が何よりも大切です。これは大工仕事や工事が伴いますので、さすがに大日本弓馬会が直接行うことはできないので、長年協力いただいている業者さんにお願いすることが多いです。また、流鏑馬を奉納する神社様が直接馬場を設営してくださることもあり、大変ありがたく思っております。このような設営関係の準備のほかに、諸道具の準備があります。この作業こそ、大日本弓馬会が直接行っているものです。大日本弓馬会が管理・所有している諸道具を点検し、必要ならば修繕を行い、行事に必要な数を揃え、適切に梱包し、確実に行事が行われる会場に届けるという一連の作業です。行事の準備の際に取り扱う道具の例を挙げますと、陣幕、的受幕、式の的、板的、小的、鞍、鐙、轡、厚総、三懸、鞍下、手綱、床几、旗、幣、扇、太鼓、撥、直垂、白衣、雪駄、太刀など多岐に渡っています。大日本弓馬会では、このような行事の準備を全て自前で行っていることから、道具の取扱いも学ばなければなりませんし、行事そのものに手作り感覚を持つことができるので、行事への愛着も湧くというものです。とはいえ、このような多くの道具類の準備ですから、人手と時間と場所が必要になります。そのため、行事の直前の日曜日の午後、門人たちが大日本弓馬会の事務局に集合して、一気に準備作業を行っています。行事準備の様子①。手持ちの物品リストは門外不出とされています。行事準備の様子②。この日は土砂降りの雨だったため、テントの中での作業です。諸道具を詰め込んだコンテナたち。かなりの物量になります。私たちは、流鏑馬を奉納するに当たり、神様とともに観覧される皆様に最高の騎射をお見せできるよう日々稽古に精進しております。そして、そのために、同程度の力を込めて行事の準備にも取り組んでいます。時間的にも体力的にも負担は軽くありません。せめて、水を引き、更衣室を設け、日除け・雨除けを設置し、もう少しだけ稽古環境を改善することによって、様々な活動をして流鏑馬の維持保存に努めている門人たちの負担を減らしてあげられれば、と願ってやみません。皆様、何卒お力添えをよろしくお願いいたします。
鎌倉教場の「今」をお伝えします。今回は「着替え」についてです。鎌倉教場では、「稽古着」を着て稽古を行っています。稽古着は、・弓道用上衣・馬乗り袴・角帯・白足袋・射沓・皮手袋で構成されます。慣れれば、ものの5分もあれば自分で着装できますが、帯を巻いたことがない者や袴をはいたことがない者にとっては、最初のハードルといえるかもしれません。当然、自分で着装できないと稽古に参加できません。稽古に参加している者の過半数は自家用車で通っているため、多くの者は稽古前に自宅で着替えてから稽古場にやって来ます。これに対して、電車で通っている者は、①稽古場に来てから着替える者、②自宅で着替えて来る者、に分かれます。このうち、②の自宅で着替えて来る者は、稽古着姿で電車に乗ることになるわけですから、誰しも最初は抵抗を感じるものの、稽古場に来てから着替える時間がもったいないので、いつの間にやら、この②が圧倒的な主流となり、①はほぼ絶滅することとなります。かくいう筆者は、入門当初はJR中央線沿いに住んでいたこともあり、当時の稽古場である三浦市まで、中央線、山手線、京急線、バスを乗り継いで通っていました。入門して1か月後には、稽古着姿のままでも何ら気にならずに中央線や山手線に乗れるようになりましたので、慣れとは怖いものです。ただ、薄汚れた稽古着では、周りの乗客に迷惑をかけてしまうので、小ざっぱりした格好となるように十分に気を付けていまいた。しかしです。稽古後はそうもいきません。馬の手入れをすれば当然馬の毛や泥汚れが稽古着に付着します。馬の臭いもそう簡単にはとれません。そうすると、帰り道に稽古着姿のまま電車に乗ることは、マナーとして問題となるのです。この点、自家用車で通っている者は、自分の車のシートに馬の毛がついたり、車内が馬臭くなるのを気にしなければ、着替えは不要ですが、筆者のように自家用車とはいえオーナーが自分ではなく家族であったりすると、車内を清潔に保つことが重く課せられているため、稽古着のまま車に乗って帰るわけにはいきません。そこで、着替えが必要となるのです。そのため、鎌倉教場では、更衣場所としてイベント用の大きな白テントを購入し、地面にブルーシートを敷いて使用していました。ところが、雨に日にはテントとブルーシートの隙間から雨が入り込んで荷物がずぶ濡れになりますし、強風の日にテントの骨組みが折れ、修理に時間とお金がかかるなど、使い勝手の悪さが問題となっていました。雨の日には物置の中で着替えるなどしていたので、感染症対策の面でも喫緊の課題でした。そこで、このたび更衣室が必要となった次第です。着替えなければならない場所であるにもかかわらず、更衣室がないまま1年間が経ちました。門人は皆忍耐強く稽古に打ち込んでいますが、稽古以外のこうした外縁部分については、せめて真っ当な環境を整備し、より一層稽古に専念できるようにしたいと考えています。また、伝統文化を後世まで維持継承していくことを目的としている大日本弓馬会ですから、稽古は厳しいけれども、稽古環境は整備されている、という状況を作ることが、将来を担っていく若者の参画につながるものとも考えています。稽古環境を改善することによる、現有戦力の底上げのため、将来の担い手の育成のために、皆様の力強い御支援をよろしくお願いいたします。
鎌倉教場の「今」をお伝えします。今回は草取りの様子です。緑鮮やかな草原の中の流鏑馬馬場鎌倉教場の建設地は、工事前は高さ2mを超えるススキが群生する草原でした。その草を刈り取って積み上げたところ、高さ5mを超える山になる程でした。ここに全長220mの流鏑馬専用馬場を建設した業者さんの苦労が偲ばれます。山のように積み上げられた刈り取った後の草(だいぶ撤去した後)2020年11月に完成した馬場馬場が完成したのは晩秋です。しばらくは草が生える心配がない季節なので、まずは馬場の安定稼働に努めました。そうこうしているうちに春になり、初夏を迎え、馬場は様変わりしました。2021年5月の馬場①2021年5月の馬場②2021年5月の馬場③緑あふれる美しい光景です。このような素晴らしい環境で稽古に励むことができるのも、この馬場の建設を支援してくださった皆様のおかげです。ところが、よく見ると草脚が長いことに気が付きませんか?そうなのです。実は、敷地の一角はこのようになっています。車が埋まりそうな程に育った草たち非常にマズイ状況です。このような生い茂り具合の敷地が約1haもあるのです。草刈り中 食事中草取り中の秋山射手①(武田流の高弟です)草取り中の秋山射手②(武田流の高弟です)無理です。如何に射手の人力でも流鏑馬で活躍している馬たちの馬力でも、もはや完遂不可能な程の生い茂り振りです。もはや根っこから草を抜いている余裕など皆目なく、ここまでくると「刈る」しかありません。草は育ち切る前に刈ってしまえば、そのまま放置しておくことで土にかえります。しかし、育ち過ぎてしまうと、刈った後に放置しておいても腐るだけで土にかえりにくくなってしまいます。そうなると、草を処分するための作業とお金が必要になり、大変苦しい状況に追い込まれてしまいます。この写真の状況は、そのギリギリのラインといえるでしょう。一刻の猶予もありません。そこで、稽古のない日に動員をかけ、盛大に草刈り作業を行うことになりました。その様子は別の機会に紹介することとしましょう。更衣室や水道を設置することは、最低限の環境整備に必要不可欠です。是非とも御支援をお願いいたします。しかし、今回紹介したように、流鏑馬専用馬場は完成したものの、稽古環境を維持するためには、日頃から馬場の手入れは欠かせません。それには、人手もお金もかかります。なけなしのお金を蓄えて付帯設備を…とは、なかなかいきません。皆様、どうか御理解いただき、何卒お力添えをよろしくお願いいたします。
通常、稽古場での流鏑馬の稽古は、稽古着を着て行われます。しかし、神事など本番では、射手は装束を着ての流鏑馬を行います。馬も馬装をまといます。装束を着ての流鏑馬は、普段の稽古とは違い難易度は非常に高くなります。時には本番を想定し、装束を着て稽古を行うときもあります。新型コロナウイルス感染症も収まりつつある中、ここ2年間行われなかった行事も再開するかもしれません。再開を願いつつ、ときには装束を着て練習を行い、天下泰平、五穀豊穣、万民息災を祈念して的を射る祭事を務めらえるように準備をしてまいります。