みなさま、ご無沙汰しております。(株)おのざきの小野崎雄一です。本日は、このプロジェクトの今後の方向性をお伝えさせてください。結論から申し上げますと、開発ペースを大幅に落とし、1年後くらいから本格的に動いていこうと思います。2022年2月にクラウドファンディングを立ち上げ、ありがたいことに138人の支援者様から約160万の資金が集まりました。それからというもの、魚のアラを粉末出汁にしようと1年以上にわたり何度も実験を重ねてきました。設備投資も実施し、乾燥させた魚のアラを粉末状にする粉末機も購入しました。しかし、カツオなどの油分が少ない赤身魚のアラは、さらさらの粉末にすることは容易にできるものの、白身魚のアラに関しては、油分を多く含んでいるので、いくら乾燥をかけても、さらさらな粉末にすることがどうしてもできません。カツオのアラの粉末だけでは美味しい出汁になりません。どうしても、白身魚のアラの粉末がもつ豊かな風味が必要です。油分を多く含む白身魚のアラの粉末化を実現させるためには、もう少し化学的な実験が必要になってくると思います。そのためには、知見をもった大学との連携や、外部のフードテクノロジストと呼ばれる専門家と協業しなければいけません。当然お金がかかってきます。現在の(株)おのざきの事業ポートフォリオを加味すると、今、魚のアラの出汁開発事業にお金や時間などを大幅に割けず、優先順位は低いです。ただ、魚のアラのもつ可能性は大きく、商品化に成功した暁には、業界にも大きなインパクトをもたらすと私は確信しています。そこで、開発ペースを大幅に落とし(魚のアラを使った出汁開発に割く時間やお金を減らす)、腰を据えてこのプロジェクトと向き合っていきます。終わるわけではありません。諦めるわけでもありません。期待していただいている中で大変申し訳ないのですが、ペースを落とさせてください。 最後に、アラの開発を本格的に再開したタイミングで、こちらの活動報告内で改めて皆様にご報告差し上げます。引き続き、おのざきをよろしくお願いいたします。
みなさんこんにちは!アラ出汁プロジェクトも2022年1月に開始してはや8ヶ月が経過しました。次から次へと障壁があらわれては乗り越えていく、それの繰り返しでした。そして9月、ついアラ出汁が完成しました! まずはクラウドファンディングでご支援いただいた方々へ返礼品として発送し、フィードバックを集め、必要があれば更に改善させていこうと思います。今回の活動報告では、アラ出汁完成の直前までたちはだかった【乾燥】【調味】の2つの課題を乗り越えた軌跡をお伝えします。課題①「乾燥」我々おのざきのお店から排出される大量の魚のアラの乾燥を依頼するべく、日本中の乾燥メーカーをあたりましたが、衛生上の理由で全社に断られました。どうやら魚自体の加工を各社嫌がる雰囲気があります。それでも諦めずに、乾燥メーカーさんに他の乾燥会社さんを紹介いただけないか打診するなどして探し続けましたが、全滅でした。どの乾燥会社さんも、アラを自社の乾燥機にいれることで乾燥機が汚れることを嫌がるのです。私たちに残された選択肢は、「自社乾燥」しかありませんでした。新しく乾燥機を購入するために、様々なメーカーさんとやり取りしましたが、初期投資が大きくリスクがあります。どうしたものかと頭を抱えていた時に、お世話になっている冷凍機器の社長さんから「スチームコンベクションを活用したらどうか」との助言をいただきました。スチームコンベクションならば、おのざきで複数台持っています。試しにスチームコンベクションで乾燥をかけてみると...数十分で焼き上がりました。乾燥直後はまだ表面に水分があるように見えます。乾燥後、数分経つと表面の水分が抜けてこんな感じに。いい感じにカリッと水分が抜けている!!!しかし、どうも油が気になります。写真の通り、鉄板を傾けると魚の油が流れ出ています。特に白身の魚から滲み出る油分が多く、このまま強引に粉末化をしても、さらさらした粉末にならなそうです。またしても、魚の油が私たちの前にたちはばかります。困っていると、お世話になっている冷凍機器の社長さんが再び登場!「まずは低温でスチームコンベクションにかけ、その後高温で一気に水分を抜くと脂がより落ちると思うよ」なるほど。さらには、他の乾燥会社さんからも、「魚の骨の中に油が詰まっているので、5~10cm四方に細かくカットすればより油が外に逃げやすくなる」との助言もいただきました。早速やってみると....しっかり水分が抜けている!!!!明らかに違います。乾燥前の生のアラの重さと、乾燥後のアラの重さを比較すると、乾燥前の重さよりも約40%ほどにまで軽くなっていました。この状態でしっかり粉末化できるのかチェックするために、業務委託契約をしている岩手県の加工会社シャインさんに早速送りました。数日後、シャインさんからの連絡があり「粉末化は問題ない」との返答。うぉー--!なんと、あれほど障壁だった乾燥工程を、自社でコストをかけずに既存の設備で内製化することに成功したのです。灯台下暗しというか、既存の資源を有効活用するために創意工夫をこらすことは大切ですね...。課題②【調味】乾燥の課題を乗り越えた私たちに待ち受けていた次なる課題は、「調味」です。魚のアラから抽出した出汁は、上品な割烹料理のような香りが溢れ出るものの、口に含んだ時の旨味がやや弱いのです。旨味を出すために、どうするか悩んでいた時に、いつもお世話になっている栃木県の調味メーカーさんの社長に、「酵母パウダー」を使用したらどうかと助言いただきました。酵母エキスは、添加物ではなく食材扱いでして、たんぱく自己消化物、デキストリン、酵母エキス、昆布エキスなどから作られる魚介エキス調味料です。捨てられてしまう魚のアラを活用し、添加物は使わないで循環型の商品を作りたい、という我々の思想に外れない形での旨味の添加です。我々おのざきにぴったり!ということで、酵母パウダーを使用することにしました。さらには、岩手のシャインさんが普段製造している昆布パウダーをブレンドすることで、「グルタミン酸」を、おのざきで普段販売しているどんこ椎茸をパウダーにしてブレンドすることで「グアニル酸」を加え、旨味をパワーアップさせることにしました。早速調合してベストな配合を実験。趣味でスパイスからカレー作りを6年くらいやっているので、粉ものの調合はなんだか自分の性に合いますwこんな感じで様々な配合でブレンドしては、何度も何度も出汁を抽出してはテイスティングしての繰り返しで、胃がきつかったです...。そしてついに!!!ベストな配合にたどり着きました。数十種類の配合でテイスティングしましたが、一口飲んだ瞬間に、「これだ」と確信しました。たくさんの社長さんの知見をお借りして、乾燥と調味の課題を乗り越え、この度、ついにプロトタイプを完成させることに成功しました。こちらを、クラウドファンディングでご支援いただいた方々に返礼品として郵送し、反応や感想を集めてみます。そこで、更に改善する余地があれば、パートナーである岩手のシャインさんと協力してブラッシュアップをしていきます。次なる課題は、「量産化」ですかね。みなさま、お楽しみに!
こんにちは!前回の活動報告からおよそ3ヶ月経ってしまいました。今回の活動報告では、この3ヶ月の間に起こったことをレポートしていきたいと思います!【5月】魚のアラの粉末化に成功魚のアラから出る油に邪魔され、アラの乾燥にかなり苦戦するもなんとか粉末化に成功!シャイン桑野社長から第一弾のプロトタイプが届き、まずはヒスタミン検査へ。一週間で検査は終わり、品質に問題がないことが分かりました。緊張の中、いよいよ試食へ。香りは凄くよいのですが、若干の魚由来の臭みが感じられました。そこから我々の次の課題は「いかにアラの臭みを消すか」へと変わりました。【6月】魚のアラを塩素水で洗浄アラの粉末化には成功したものの、新たな課題として魚の臭みが浮上。悩んでいる中でおのざきのベテラン従業員Wさんから貴重な証言が!「アラを塩素水で洗うと臭みが取れっかもよ。おいら達は昔、煮魚にする魚を塩素水で洗ってたんだ。塩素水で洗った煮魚は臭みがなくてうめぇんだよ。」こちらが塩素水を生成する機械。なんとおのざきの鮮場やっちゃば平店にあったのです!早速電源を入れ、塩素水を生成し、シャバシャバとアラを洗浄してみました。※塩素水は食品にも問題なく使用できます。また、私たちは魚のアラの臭みの原因は、魚種にも関係があるのではないかという仮説のもと、赤身と白身で魚のアラをわけて乾燥し、どの魚種が臭みの原因になりうるのかを特定することにもしました。【7月】塩素水で洗浄し、赤身と白身で分けたアラを乾燥ベテラン従業員Wさんからポロッと出た貴重な証言を信じてアラを塩素水で洗った我々は、早速それを乾燥メーカーへ発送して乾燥を依頼。こんな感じで、塩素水で洗浄した赤身(写真の下段)と白身(写真の上段)を分けて乾燥させました。乾燥メーカーさん曰く、魚の油が多く乾燥に十数時間もかかってしまったとのこと。乾燥に時間をかければその分の電気代や灯油代などのコストもかさみます。やはり最後まで魚の油に悩まされる私たちです、、。刺身とかにおいては魚の油は大歓迎なのに、いざ乾燥加工しようとすると一転して邪魔者になるのです。そして7月中旬、ついに乾燥された魚のアラたちが届きました。高温で乾燥かけたアラは少し焦げて黒くなっているのが分かります。さて、次はこの乾燥させたアラ達を粉末化させます。シャイン桑野社長に乾燥させたアラを粉末状にしていただきました。まるでスパイスのよう!赤身より白身の方が油分は多く、若干白身の粉末はさらさらというよりかはネトネトしている印象です。いよいよ運命の試食。だしパックに手作業で粉末を詰め、水から丁寧に出汁の抽出を試みました。時間が経つとともにじっくりと柔らかな魚介の香りが立ち上ってきました。まるで割烹料理屋さんの厨房の香りです。赤身と白身でそれぞれ出汁を抽出し、いよいよ味見。スプーンの先に集中し、ゆっくりと舌ですすって風味を確認しました。率直な感想は「臭みが一切ない!!!」です。間違いなく塩素水が効いているのです!!!赤身はカツオ節のような王道の風味、白身は上品で深みのある魚介の風味。ブレンドすれば間違いなくおいしいはずです。ついに商品化に成功か!と思いきや、なにか引っかかるのです。出汁としての風味が弱いのです。粉末の粒度を更に細かくし、粉末量を多くすればよいのでしょうが、それでも何か物足りないのです。そこで、今回試作したアラ粉末と一緒に昆布と椎茸を鍋にいれて出汁を抽出してみました。めちゃくちゃ美味しいです。。魚のアラだけでももちろんいい香りは出せるのですが、出汁として幅広いお客様に手に取っていいただくには、「旨味」がもっと必要です。そこで次の課題は、いかに旨味を出すか、に切り替わりました。次から次へと課題がうまれる私たちの挑戦。決してあきらめません。この業界にイノベーションをおこし、多くのお客様に喜んでいただくべく、私たちの挑戦はまだまだ続きます。
みなさん、こんにちは!専門家の小泉武夫先生を訪問した私たちは、魚のアラを活用した人向け食用商品の開発は、実は想定以上にハードルが高いということに気づかされました。そんなこともあり、私たち3人は、今後の方向性について議論を重ねました。そして導き出した答えは...「多々ある課題を乗り越え、魚のアラを活用した新商品開発に挑み続ける」です。たくさんの方々が、手軽にアラの豊富な栄養素を手軽に摂取できる美味しい商品を期待してくださっているのです。たとえ、大きく流通させられないとしても、私たちは期待に応えるべく、食用のアラ商品の開発を続け、形にします。最悪、一般販売の実現ができなくとも、クラウドファンディングでご支援いただいた方々にはなんとしてもアラ商品を形にしてお届する覚悟です。岩手の桑野社長から先日、商品のプロトタイプが届きました。これから、社内での試食会や、食品検査、などの作業を重ねていきます。どうぞ引き続きよろしくお願い致します。
みなさんこんにちは!魚のアラを使った商品開発を進める中で、・魚の油分が多すぎる・旨味を最大限に引き出すことができないの課題に直面しておりました。そこで私たちは、専門家に意見を仰ぐために、福島県いわき市出身の大先輩で東京農業大学名誉教授である小泉武夫先生(https://koizumipress.com/)と、発酵文化推進機構の水野喜法理事(https://hakkou-bunka.jp/)を訪問しました。今回の訪問は、福島県いわき市の食文化創造を担う人材を育成する事業に取り組む福島県最大の新聞社・福島民報(https://www.minpo.jp/)の鞍田炎取締役に紹介いただき、実現にこぎつけました。様々なご実績や経験をお持ちのお二人の専門家から、以下のアドバイスをいただきました。■前提として魚のアラの加工において、鮮度と油はどこの企業でもぶつかる難易度の高い課題■大量のアラを使った大きなプロジェクトにしたいのか、R&D的な商品開発で小さいプロジェクトで進めるのかで方向性が異なる ●大きくやる場合:地元の企業を巻き込んだ安定した資源確保・設備投資が必要になる ●小さくやる場合: ・人向け商品 └衛生上のハードルが高い └粗の鮮度が重要 └旨味を落とさずに、油分を落とすのに有効なのは発酵技術 └販売するターゲットを絞って本気で研究開発することが必要 └アラの前処理が重要(魚種の選別、部位の仕分け、部位同士の汚染回避など) └商品によっては製造にかなりの研究・設備投資が必要でハードルが高い ・ペット飼料の場合 └ハードルは人より低い(食品衛生法上も) └製造過程で出る生臭さなどは許容される └乾燥→粉体化のプロセスが主流 つまりは、魚のアラを活用した人向け商品の開発は、たくさんの障壁があるということです。最初に直面した「魚の油」「魚の旨味」を軸にした相談ではありましたが、別の課題も浮き彫りになった形です。更なる課題に直面し、ややしょんぼりとした空気になる我々に対して、小泉武夫先生から”メディカル分野へのチャレンジ”のご提案をいただきました。魚から出るEPAやDHAが含まれた良質な油をサプリメントなどにして販売する新規事業です。我々おのざきから排出されるアラの月間排出量や、マーケットの需要などを考慮すると、メディカル分野への参入がベストだろうということです。 まとめると、我々の選択肢は以下です。選択肢A: 多々ある課題を乗り越え、魚のアラを活用した新商品開発に挑み続ける選択肢B: 食用の商品開発は断念し、メディカルにチャレンジする選択肢C: 魚のアラを活用した新商品開発に挑みつつ、別軸でメディカル分野への挑戦小野崎・神谷・石川の3人で夜遅くまで今後の方向性を議論し、答えを出しました。続く....