【前菜に“逃げ戻る”先輩を見て気づいた、厨房のリアル】僕が前菜担当に入ったことで、前菜をやっていた先輩は肉やソース等のメイン部門へ移りました。その間に僕はパテ・ド・カンパーニュ、フロマージュ・ド・テット、魚介、肉、あらゆる前菜を任せてもらい毎日が学びの連続でした。でも前菜に慣れてきた頃に事件が起きました。肉・ソース担当になった先輩が、ある日シェフにこう言ったんです「すみません…もう無理です。前菜担当に戻してください。」厨房が一瞬静まり返りました。理由はただひとつ。「シェフと最前線でやるのがキツすぎる。」メインラインは火入れ、盛り付け、時間との戦い。一皿の遅れが「店全体の遅れ」になる。そこにシェフのチェックが入る。ミスは許されない。精神的にも身体的にも、とにかく重い。そのプレッシャーに耐えきれず、先輩は前菜へ戻ったわけです。その後、厨房は大規模な配置替え。緊張感のある空気がザッと変わり、「この店で生き残るってただ料理が上手いだけじゃ無理なんだ」と、僕は強く感じました。この出来事は、ポジションは与えられるものじゃなく耐える覚悟があるかで決まる部分もあるということを、僕に教えてくれました。【メイン担当1日目。“逃げ戻る”理由が一瞬で分かった日】前菜からメインに上がった初日、厨房の空気はまるで別世界でした。メインは 僕・先輩・シェフの3人だけ。そしてそのシェフが“圧”そのもの。スキンヘッドにヒゲ。営業直前に店に現れるだけで、厨房が一気に緊張モードになる。怒ってないのに、全員が息を呑むような存在感。そのシェフと並んで火入れをし、皿を合わせ、1秒のずれも許されない世界で動く。包丁を握る手は汗ばみ、覚えていたはずの動線も飛ぶ。焦りが焦りを呼んでいく。正直、「前菜に戻りたい」と懇願した先輩の気持ちが痛いほど分かりました。でも同時に、こうも思ったんです。「ここで踏ん張れたら、確実に強くなれる。」メイン初日で味わったあの圧と恐怖が、僕の料理人人生を確実に変え始めていました。【“冷凍庫なしの厨房”が教えてくれた、料理人の覚悟】このビストロで働いていて、一番衝撃だったのは設備の違いでした。それは、冷凍庫がない。ホテル時代は巨大な冷凍庫があり、保存も仕込みもシステム化されていた。でもビストロには、それが一切なかった。肉も魚も野菜もすべて生のまま扱い切る。出汁は“毎週”ではなく、その日のために取る。もし切らしたら、朝5時に出勤して一から仕込む。正直大変でした。でもその分料理はいつも“いま”の味だった。冷凍に頼らないということは、素材の鮮度・香り・状態に真っ向勝負するということ。その瞬間の食材と向き合い、その瞬間の最善を出す世界。この経験は、いま僕が「一人ひとりに合わせたコース」を作るうえで確かな土台になっています。同じメニューを出さない=その人のためだけの料理を作ること。だからこそ、常に新鮮な食材と、今日だけの組み立てが必要になる。ビストロで学んだ“冷凍庫に頼らない”は、今も僕の厨房の中心に息づいています。続く…植田和宏シェフと一緒に働く仲間を募集します詳しくはこちらからレストランコムトゥヴ 採用ページhttps://commetuveux-recrutement.my.canva.siteutement.my.canva.site



