高校生の時、生物学や医療界に根付く倫理問題に興味があった私は、文系理系の垣根を超えた学びがしたいと国際基督教大学(ICU)に入学しました。在学中に最もお世話になったのが、布柴先生でした。ICUや交換留学での学びを経て、研究職ではなく、コミュニケーションを主としながら医療に携わりたいと思うようになり、その中でも特に、遺伝(遺伝形式や遺伝性疾患など)に関する知識を伝え身近な事柄として捉える機会を提供する、遺伝教育に関心を持ち始めていました。 ※余談ですが、大学時代に興味をもっていたことは、以前インタビュー記事にまとめていただきました。今、かつて描いた将来の夢とはまったく異なる道にいますが、下の文章で布柴先生が書いてくださっているように、根にあるものはどこかつながっている気がします。複数の選択で迷ったり、選ばない後悔を考えて次の一歩に悩んだり、そんな葛藤を抱える誰かにとって、「いもこめの人みたいに、またどこかで、つながるかもしれないんだ」と今が少し生きやすくなる、気付きのひとつになったら嬉しいです。 当時私は生物学メジャーで、通常卒業研究が必須なのですが、遺伝教育をテーマに卒業論文を書きたいと相談しに行った時、私の関心のある事柄についてじっくり聞いてくださいました。決して否定せず、こんなことができるんじゃないか、面白いかもしれないよ、と前向きにアドバイスをくださったことを、今でも鮮明に覚えています。 京都大学大学院を受験したときも、晴れて合格した時も、ひとつひとつ背中を押してくださった教授。名のある大学院だったからこそ、退学した時、最後までやり遂げなかった情けなさや申し訳なさから、何も連絡できずにいましたが、この春にやっと、いもこめを営んでいること、そして実店舗を構える挑戦をすることを報告しに行きました。 布柴先生の奥様がベーグル好きとのことで、頻繁にベーグル便を注文してくださるようになり、今ではすっかりいもこめのリピーターさんに。何をしているか以上に、そこに注ぐ熱、本気度?を見てくださることは、大学時代も、今も、変わらない姿です。 以下、布柴先生からの応援メッセージです。熱い文章をいただきました! いもこめの池田百音さんは大学時代生物学を専攻し、私のゼミに所属していました。 生物学の授業では、遺伝学、微生物学、生化学、動物・植物の発生学などを講義から学び、また顕微鏡やPCRなどさまざまな実験機器を使った実験も学んできました。科学的な実験では、複数の要因の効果を確かめるため、要因を一つ一つの条件を変え、どのような影響が現れるかを確かめていくことがよくあります。池田さんも他の学生とともにそのような実験を経験してきました。コロナ禍のタイミングということでなかなか実験ができず、卒業研究では、遺伝子診断を取り上げた遺伝教育がテーマでした。 卒業後、久しぶりに池田さんに連絡をとったところ、「いもこめというお店をやっていて、米粉のベーグルをオンライン販売してるんですよ。学生時代に学んだこととは全然違うことなんですけど。」とのこと。しかしよくよく話を聞いてみると、米粉だけで作ったベーグルは固くなってしまうので、あらゆる粉を集めて、何を米粉と混ぜるともっちり感を残しつつも柔らかい食感が出るのか、米粉とどのくらいの分量で混ぜるのがいいのか、どのくらい生地を寝かすのがいいのかなど、一つずつ、条件を変えながら作ってみて、もっちり感を残しつつも柔らかい食感を求めて200通りもの条件を試してみたとか。それを聞いたとき、池田さんは「学生時代に学んだことと全然違うことをやっている」と話してくれたものの、このもっちり感を残しつつも柔らかい食感を求める過程はまさに科学実験の手法を用いたもので、十分に学んだことを今に生かしてくれているなと感じました。 早速注文して食べてみると、本当にもっちり感を残しつつも柔らかい食感を体験しました。それ以後も、プレーンだけではなく、本当にさまざまな食材を生地に混ぜ込んだり、生地に巻き込んだり、本当にたくさんのバリエーションを工夫しています。私も妻もすっかり大ファンになり、定期便を始めました。毎月届くのを楽しみにしています。 1ヶ月ほど前、今秋、オンラインに加え、逗子の近くの月見台に実店舗をオープンするという計画を話してくれました。「海が開け、やわらかい陽が差し込み、清々しい見晴らしの場所なんですよ。」と。かつて月見台の市営住宅だった場所が生まれ変わり、他にも色々なものづくりをしている人たちも集まるそうです。私も話を聞いてワクワクするような気持ちになりました。 是非とも皆さんもこの実店舗実現に向けて、そしてますます身体に優しいそして美味しい、そしてバラエティーに富んだいもこめのベーグルに出会えるように、ご協力をお願いします。






