星野道夫さんがどんな気持ちでアラスカで暮らしていたか、そしてなぜ亡くなってしまったか、少しだけ分かる気がした、この日の午後。フェアバンクスを旅しながら、星野道夫さんの家はどの辺りなんだろうかと、想像する。シラカバの黄色、アカリスの鳴き声、クランベリーの匂い、星野さんの本に出てくる情景がまさに目の前に広がっています。星野さんは、この森のどこかの土地を買うことになり、家を建てた。それまで、訪れる場所として足を運んでいたアラスカに根を下ろした。それは相当な決断だったろうと思う。たくさんの借金もした。結婚され、子どもも2歳。本にも書いていたけど「家族のために頑張らなきゃ」と思ったんだと思う。それまでストレンジャーとしてアラスカに関わり、自分のために写真を撮り続けてきた人が家族のために、仕事をたくさん引き受けたんだと思う。ひょっとしたら、星野さんが亡くなった、ロシアのカムチャッカ半島での日本のTVクルーとの撮影の仕事だって家族のために、大きな仕事を引き受け、自然の中で人間の仕事のしがらみをも、引き受けたのかもしれない。彼は少し無理をしたのかもしれないなと思いました。この撮影が星野さん一人で、自分のためのだったら、熊に襲われて亡くなることはなかった。でも僕も同じ立場だから分かる。僕も今、家と土地と家族を抱えて、何とか自分のやってきたことで仕事を増やそうと奮闘している。無理をしていると思う。でもこの無理は、喜んで引き受けたい無理であり、家族のために何かできる喜びに溢れてる。同じかどうか分からないけど、そんな星野さんの気持ちを、ほんの少し想像した、フェアバンクスでの道中です。




