盲学校には幼稚部、小学部、中学部、高等部があります。高等部には、鍼灸あんまマッサージの国家資格取得を目指す、専攻科(保健理療科、理療科)があります。日々の活動を【公式】熊本県立盲学校Instagramで発信しています。幼児、児童、生徒の様子、盲学校の活動の様子をご覧ください。クラウドファンディング開始5日目にして、目標額に達成しましたが、その後も多くの方にご支援をいただいております。大変有り難く、心より感謝申し上げます。
今回は、卒業生Fさんが、令和元年度全国盲学校弁論大会で発表したスピーチをアップします。当時高等部2年生で、アンサンブル部長でした。Fさんは、卒業後もアンサンブル部の後輩たちに声をかけ、アドバイスをしてくれます。全国盲学校弁論大会では、アンサンブルを通じた経験や想いを語ってくれています。ぜひ皆さんに読んでいただきたいです。「マイナスから得たもの」 熊本県立盲学校 高等部普通科2年 Fみなさんには何か、欠点やコンプレックスに思っていることはありますか。私にとってそれは視覚障がいがあるということです。私は今、学校のアンサンブル部に入部していて、マリンバやシロフォン、ビブラフォンといった打楽器を演奏しています。何人かで演奏をするうえで目が見えない、見えづらいということは、一般的に不利だと思われがちです。合奏の要である指揮が見えなかったり、打楽器を演奏する場合は思いもよらないところを打ってしまったりと、確かに大変なことがたくさんあります。実際に私も、そういう経験を数えきれないほどしてきました。ですが、「不利だな」と思ったことは一度もありません。なぜなら、目が悪いからこそ得られたものがたくさんあるからです。 私がアンサンブル部に入部したのは、小学2年生のときでした。特別、音楽に興味があるわけでもなく、見学にいった流れでなんとなく入ったという曖昧な感じでした。また、幼かった私はアンサンブルに欠かせない、呼吸を合わせて演奏するということを知るはずもなく、ただただ太鼓を叩いていました。そしてそのまま、何度も大会に出場したり、依頼をうけてオープニングセレモニーで演奏したりしているうちに、小学校高学年になり自然と自分の中で音楽に対する思いに変化が現れてきました。先生から指導された曲の弾き方、感じ方を理解できるようになり、自分なりの演奏をしたいと思うようになりました。 私が中学二年生の冬、部にとっての大きな挑戦をしました。それは、全国高等学校総合文化祭熊本県予選で金賞をとり、なおかつ全国高等学校総文祭への推薦状をもらうということです。部員はたったの四名。この人数で挑むには、かなりの覚悟がいりました。それでも、全員一致で目指すことになったのです。それからの練習では、呼吸をあわせることはもちろん、一音一音の出し方、一瞬の間の間隔など、細かいところまで何度も何度も練習しました。ときには、この曲がどんな曲で何を伝えたいのかを考えて、意見をぶつけ合うこともありました。 そして、いよいよ本番当日。ステージにあがると今までにないくらいの緊張に手が冷たくなり、心臓の音がまわりに聞こえるのではないかと思うくらい早まりました。中学生で高等学校の大会に出場して演奏するということに対する緊張と、高校生ばかりの会場の雰囲気に飲まれそうになるのを必死にこらえていました。実際のところ曲が始まってからのことはよく覚えていません。ただ、一つ覚えているのは、それまでにないほどの楽しさと心地よさを味わったことだけです。そして、演奏も無事終わり、結果発表。全員祈るような思いで耳をすませ、発表のアナウンスに集中しました。「熊本県立盲学校 金賞」その言葉が会場に響いたとき、今までの緊張、不安がプツンと切れたように感じました。同時に、これまで感じたことのない達成感と嬉しいという言葉では足りないくらいの気持ちで満たされました。夢に見た全国総文への切符を勝ち取り、滋賀でおこなわれた大会に出場することができました。熊本県の代表として、自分たちらしい精いっぱいの演奏をつくりあげたそれまでの道のりは、私にとって忘れられない貴重な体験となったのです。 高校生になり、私は部長になりました。今まで部長をされていた先輩を何人も見てきて、苦労や責任の重さはある程度わかっているつもりでした。ですが、いざ自分がなってみると、想像をはるかに超えるほど大変でした。部全体を見て行動すること、メンバーへのアドバイス、部長としてのあり方など、頭を悩ませることが多くありました。部としての活動が多くある中、本番が近づく度、「部長としてちゃんとみんなをまとめられているだろうか」と自問自答していました。ときには「もっとまわりを見ていれば」「集中していれば」と悔やむこともありました。それでも部長という役割を任されている限り、人として、演奏者としてもっともっと成長していかなければならないと強く思っています。 私は、アンサンブル部の活動をとおして、音楽の楽しさ、素晴らしさを知ったことはもちろんのこと、人との関わり、リーダーシップの難しさを学ぶことができました。日々のくらしの中では、視覚障がいという他の人とは少し違うステージにたっていても、音楽の世界では、皆平等に同じ檀上で発表したり競い合ったりできるのだと感じます。一人一人が自分の中に欠点だと思うこと、不利だと感じること、コンプレックスなどあるかと思います。でも、みなさん、それを通した心温まる思い出はありませんでしたか。私は、障がいという、自分ではコンプレックスに思っていたことを通して盲学校に入り、アンサンブル部に入部し、障がいがあることを忘れるほど打ち込めるものに出会いました。「見えづらくてよかった」とまでは言えませんが、見えづらかったからこそ楽しめることを見つけられたと思います。 私は誰でも、視点を変えればマイナスから得るものがあると思います。自分が夢中になるものに出会う日が来るはずです。そんな素敵な出会いを大切にして一日一日を過ごしたいと思っています。これから社会に出ていく中で、小さなきっかけから自分自身が一生懸命になれる、楽しめることをもっと見つけていきます。「マイナス」を「プラス」に変えるために。
今日は、昨日の活動報告で、熱が下がり「出れます」と答えた生徒の令和3年に書いた作文を紹介します。この部員は現在本校の専攻科理療科の2年生。鍼灸あんまマッサージ師国家資格取得を目指し頑張っています。アンサンブル部の活動も継続し、後輩たちの良き先輩として、助言をくれる存在です。※写真は、今日の授業の様子です。【令和3年度の熊本県立盲学校創立110周年記念誌からの抜粋】学校生活の中で、私にとって最も大きな出来事は何といっても、小学部4年生の時に入部したアンサンブル部との出会いです。入部以来、たくさんの大きな大会に出場させていただきました。その中で、中学部2年の時に出場した「(2019年)全日本アンサンブルコンテスト全国大会」で金賞をとれたことは一番の思い出となっています。当時中学生だった私は、初の全国大会という大舞台で、しかも、「高校の部」で出場するという緊張感でいっぱいでした。しかし、演奏を終え、観客席からのたくさんの拍手を聞いた時、まずほっとし、次にこれまでに感じたことのない喜びが湧いてきたのです。今までの練習では、思うような音を出すことができない日々でしたが、大舞台で演奏できたこと、その上、金賞という栄冠を手に入れたことで、自分に自信を持つことができました。そして、たとえ少人数であったとしても、みんなが心を一つに頑張れば、素晴らしい結果がついてくるのだと学ぶことができたのでした。#熊本県立盲学校 #盲学校 #理療科 #アンサンブル
今回は、令和5年11月の九州地区盲学校音楽会長崎大会のことを回想します。長崎へ出発する日に1人、インフルエンザに罹患していることが判明。いざ9人で長崎へ。長崎に到着後の夕食時に1人発熱、しばらくしてまた1人発熱。そしてまたまた1人発熱。これで、主旋律を奏でる奏者が誰もいなくなるという事態に陥った。夜のミーティングでは、「熊盲アンサンブルの演奏はできない。明日は欠場とします」と山田顧問の、苦渋の決断が告げられた。中学生部員は「高等部を卒業する先輩たちと一緒に演奏したかった」と泣きながら訴えた。皆が涙に暮れた。その後もまた1人、発熱。5名の発熱者のうち、4名が夜のうちに家族の迎えで帰宅。残る1人は翌日帰る事が決まった。今まで練習を頑張ってきたのに、こんなこともあるのだと、気落ちした。明日は、他校の演奏を鑑賞することになった。これも大切な事。翌朝、昨晩の発熱者の中でまだ帰宅していなかった部員の熱が下がった。しかし、4人欠けた緊急事態には変わりない。貸切バスに沈む気持ちで乗り込み会場へ向かう。会場に到着し降りる時になって、山田顧問が、熱が下がった部員に聞いた。「出れるか?」「出れます」と、静かに返事が返ってきた。「出場しましょう!いないパートは、歌声で補いましょう!いける!できる!」と山田顧問が弾んだ声で呼びかけた。皆驚き、そしてできるのか!?という不安で動きが一瞬止まった。その時、「よし!気合い入れて行こう!」と他の職員から声が上がる。昨夜事務局に欠場を連絡していたのだが、朝の受付で「出ます!」と再度の変更を告げた。事務局もバタバタと動き出した。とにかく、やってみるしかない!すぐに練習。動画は、その時の様子。即興。本番のステージが始まった。会場には、6人が奏でるそれぞれの楽器の音と歌声が響き渡った。結果は、グランプリを受賞する事ができた。審査員からは、歌声と演奏のハーモニーがとても素晴らしかったと賞賛をいただいた。審査発表の後に、歌声は即興であった事を審査員に伝えた。「演出だと思った」と驚かれた。結果的に、最高にみんながひとつになり互いの息を、声を聴きながら作り上げた、その時にしかない素晴らしい演奏となった。ドラマよりドラマだと思える展開だった。「演奏できる」と言ってくれた部員は、全日本アンサンブルコンテストでの金賞経験者である。その部員の「できる」との決意が、山田先生の「歌声」最終判断に繋がったと思う。経験が次の経験につながると感じた瞬間だった。インフルエンザでステージに立てなかった経験、4人欠けた中で歌声で演奏を作り上げた経験を、部員たちはどう次に繋げてくれるのかと、ワクワクした気持ちになった。※当日のステージでの演奏を大会規約でSNS上にアップできないのが残念です。本当に、素晴らしい演奏でした。#熊本県立盲学校 #アンサンブル部 #グランプリ
クラウドファンディング開始後、これまで多くの応援メッセージをいただいてきました。本当にありがとうございます。その応援メッセージを励みに、県総文で、部員は心を込めて演奏をしました。県総文祭後も、とても嬉しいメッセージをいただきました。「本日、熊本県高校総文祭の演奏を聴かせていただきました。素晴らしい演奏でした。これからも頑張ってください!」「総文祭での演奏、感動しました! 全国大会でも頑張ってくださいね。応援しています!」「総文祭での演奏素晴らしかったです。全国大会などで、皆さんに感動を与えてください!」次のステージに向け、皆さんの応援を胸に刻み、部員は頑張ります!※写真は、県立劇場リハーサル室での様子です。