真山仁です。今日は、一人の小説家として、少しだけ本音の「弱音」を書かせてください。『デフォルトピア』を執筆することは、正直に言えば、これまでの作家人生で最も孤独で、怖い仕事でした。「国家破綻」のリアルを描くと表明しても、過去の歴史に類を見ない事態を描くのは、小説家の想像力、いや妄想力を駆使しても、限界の壁にぶち当たります。専門家に取材をしても、可能性は聞けても、あまりにも不確定要素が多すぎ、さらに異常事態が同時多発的に起きる上に、必ずマイナスのシナジー効果が起きてしまう。その一方で、読者には、これは起きるかも知れない。こんな怖いことが起きて欲しくないと感じてもらう迫真性を提示しなければなりません。何より大きな不確定要素は、「その時」、国民は、どう動くか――ということでした。それが描けなければ、その作品をきっかけに読者に危機感を感じてもらうのは難しい。「そんなことは起きるわけがない」――その一言で拒絶され、思考停止のまま未来を迎えてしまうこと。それこそが、日本にとって最大の危機であり、私にとっての恐怖だったのです。ところが、このクラウドファンディングが始まった瞬間、私のその恐怖は、徐々に薄れていきました。私の予想を遥かに超える、多くの方々からの熱い共感が寄せられたからです。編集会議ではプロ顔負けの真剣な議論が交わされ、アンケートには数百字に及ぶ、熱意を帯びた言葉が並びました。「もし明日起きたら、自分はどう生き抜くのか」皆さんは、その残酷な問いから逃げていない。私はその姿に、小説家として、一人の人間として、何度も何度も勇気をもらい、背中を押されました。だから今、私の心にあるのは、怖さではなく「希望」です。 『デフォルトピア』は、私一人が机の上で書く小説ではありません。あなたと一緒に、今この瞬間も育てている物語です。 明日は、このプロジェクトを続ける本当の理由をお話しします。真山仁




